ちょっと死について考えてみたら怖くなかった
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ちょっと死について考えてみたら怖くなかった
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ブックダム

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出版日
2025年02月27日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「カラオケないけどカンオケあります」。

そんな印象的すぎるキャッチコピーとともに、東京の下町にオープンした「終活スナックめめんともり」。ラテン語で「死を忘れるな」を意味するこの店名のバーでは、カラオケはできない代わりに、棺桶に入る「入棺体験」ができる。ここに訪れる人たちは、お酒を飲みながら、リラックスした雰囲気で死について語り合っている。

死について語ることは、「縁起でもない」と避けられがちだ。しかし、自分がどう死にたいかを考えないまま、本当に納得した人生が送れるだろうか? 大切な人が亡くなったとき、その人の望む形で見送ることができるだろうか?

本書は、死について語り合うめめんともりの日常を多くの人に共有したいという、同店の店主であり、海洋散骨のパイオニアでもある村田ますみ氏の初のライトエッセイだ。最初から最後まで死について語っているのに、本書の語り口は不思議と明るい。まるで今日の晩ご飯に何を食べるかと聞くような気軽さで、「あなたはどんなふうに死にたい?」と問いかけてくるのだ。

そんなふうに誘われて考えていくと、死について考えることはけっして後ろ向きなことではないと実感できる。人生の終わりを意識するからこそ、「いつかやりたい」と思っていることは先延ばしにしてはいけない、会いたい人には今会わなければいけない、自分の死後のことも考えておかなければいけないと、生きているうちの行動を変えることができる。あなたも自分の死について考える時間を持ってみてはいかがだろうか。

ライター画像
池田友美

著者

村田ますみ(むらた ますみ)
1973年東京生まれ。
同志社大学法学部政治学科卒業。
終活スナックめめんともり ママ
YOMI International 株式会社 代表取締役CEO
株式会社ハウスボートクラブ 取締役会長
株式会社鎌倉新書 終活アンバサダー
日本葬送文化学会 副会長
上智大学グリーフケア研究所に4年在籍。
グリーフサポート研究所認定グリーフサポートバディ・フューネラルセレブラント
IT業界、生花流通業界を経たのち、亡き母を散骨したことをきっかけに2007年株式会社ハウスボートクラブを起業。
2011年 一般社団法人日本海洋散骨協会設立。理事長に就任。
2015年 国内初の終活コミュニティカフェ「Blue Ocean Cafe」をオープン。
2023年 株式会社鎌倉新書 終活アンバサダーに就任。
そして2024年2月、死についてオープンに語り合えるサードプレイス「終活スナックめめんともり」を、東京都江東区森下にオープン。

本書の要点

  • 要点
    1
    終活スナックめめんともりは、お酒を飲みながら自分の死について気軽に語ることのできるバーだ。店内には棺桶が置かれていて、来店客は入棺体験を行うこともできる。
  • 要点
    2
    人は自分の死について語ることなく死んでしまうことが多い。自分らしい最期を迎えるために、そして自分らしく生きるために、死について考え、語っておくことが重要だ。
  • 要点
    3
    現在では葬儀社が取り仕切る葬儀が一般的だが、自分の意志さえ伝えておけば自宅葬は難しいことではない。自分の死にはさまざまな選択肢があることを知っておこう。

要約

メメント・モリ——死を忘れるな

死について考えると、もっと生きたくなる

「終活スナックめめんともり」は、東京下町の一風変わったバーだ。スナックには定番のカラオケがないかわりに、棺桶が置いてあって、来店客は入棺体験ができる。店内ではお墓の話で盛り上がるグループ、理想の死に方を付箋に書き記すグループなど、それぞれが死について語り合っている。

不思議なことに、自分の死について考えると「もっと生きたくなった」「やりたいことをすぐにやっておこうと思った」「周りの人への感謝の気持ちが湧いてきた」と、生きることに前向きな発言をする人が多い。それはきっと、自分のゴール地点をイメージすることで、限られた時間をどう過ごしたいかが自然と見えてくるからなのだろう。

自分や大切な人の死について考えるのは確かに怖い。だが、死は等しく誰にでもやってくる。だからこそもっと気軽に、死について考えてみよう。そうすれば、普段当たり前のように見えている景色がまた違ったものに感じられることだろう。

なぜ終活スナック?

20代で迎えた母の死
JohnnyGreig/gettyimages

20代後半、著者は当時55歳だった母を見送った。元気だった母が突然「急性リンパ性白血病」に罹患し、治らない病気ではないと言われたものの、治療は想像以上に苦痛を伴うものであった。骨髄バンクでドナーが見つかり、これで助かると安堵したが、骨髄移植にまつわる治療も過酷を極めた。毎日続く痛みとの戦いで、母は「もう生きていたくない」と言うほどだった。

その苦しみから解放されぬまま、病気が再発したことと、余命が1ヶ月であることが告げられた。残された時間が少しでも充実したものになるよう、著者はできる限り一緒に過ごすことにした。外泊許可を得て家族で最後の旅行へ行き、一度だけ自宅へ帰ることもできた。思い出の料理を食べ、椅子に座って猫を撫でているときの母は、穏やかな顔をしていた。

余命宣告からちょうど1ヶ月で、母は静かに息を引き取った。

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要約公開日 2025.08.03
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