不条理な世の中を、僕はこうして生きてきた。
不条理な世の中を、僕はこうして生きてきた。
知っているようで知らない「古典教養の知恵」
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不条理な世の中を、僕はこうして生きてきた。
出版社
出版日
2025年07月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「古典を読んだほうがいいと頭ではわかっているけど、つい後回しになってしまう」。「古典は難しそうだし、だいたい何に役立つのかわからない」。そんな人に読んでもらいたいのが、本書である。

本書では、西洋の文学・哲学・宗教書を紹介しながら、それらが著者の人生にどのような影響を与えてきたかが記されている。著者の宮下友彰氏は、大学までは順風満帆で「世界は自分のためにできている」くらいに思っていた。しかし卒業して会社に勤めはじめてから社会の不条理さを目の当たりにし、ついには心が折れてしまう。人間性を押し殺して会社に残るべきか、いや、辞めるべきか――。

そんな人生の岐路に立ったとき脳裏に浮かんだのは、フランスの文豪・バルザックの名作『ゴリオ爺さん』である。詳しい内容は本文に委ねるが、著者は主人公の青年と自分を重ね合わせて、彼の勇気ある決断に倣うことにした。それからも迷いが生じるたびに、古典文学の一節や哲学者たちの言葉が「行くべき道」を指し示してくれたという。

本書は古典の解説と著者の半生をワンセットとし、それぞれがリンクしながら話が進んでいく。全部で10の古典文学や哲学、宗教書が紹介されるが、要約ではそこから4つをピックアップした。どれも著者の言葉でわかりやすく書かれているため、古典に慣れていない人でも楽しめるだろう。

古典教養は、あとからじわじわ効いてくる。長い人生を豊かに過ごすためにも、読んでみる価値はあるはずだ。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

宮下友彰(みやした ともあき)
1987年、埼玉県出身。学生時代より、哲学・文学・思想の本が好きで、数百冊を読み漁る。早稲田大学政治経済学部を卒業後、博報堂グループの広告代理店に入社。仕事で壁にぶつかるたび、かつて読んでいた哲学・文学・思想の言葉を思い出し、自分を奮い立たせてきた。のちに退職し、2019年、採算度外視で、教養を学ぶサービス「古典教養大学」を大阪天満橋にオープン。
2020年、コロナにより、全面オンラインに移行、2022年YouTubeチャンネル開設(登録者数3500名)。日本政策金融公庫、佛教大学、京都先端科学大学などで講演実績あり。
本書は、哲学・文学・思想をどのように人生に役立ててきたかを、たくさんの事例とともに紹介しているものである。
「古典教養アカデミー」
https://koten-kyoyo.com/

本書の要点

  • 要点
    1
    古典教養は、人生の決断に大きな影響を与える。
  • 要点
    2
    世界は自分用にはできていないが、そこから逃げるのではなく、自分を保ちながら生きる道を探すことができる。
  • 要点
    3
    世界は不条理で、善人にも理由なく困難が降りかかる。あらゆる物事に意味を見出すのではなく、「不条理な出来事」としてそのまま受けとめることも必要だ。
  • 要点
    4
    自由は自分を律することで享受できる。欲望に振り回されず、自分が決めたルールを守ることが大切だ。

要約

【必読ポイント!】この世は自分用にはできていない――『ゴリオ爺さん』

非情な都会で生きていくこと
pawel.gaul/gettyimages

『ゴリオ爺さん』は、19世紀フランスの作家・バルザックによる文学作品だ。主人公は、田舎からパリに出てきた青年・ラスティニャック。当時、若者が都会で成功するには、金持ちのマダムの愛人になるのが近道であった。しかし彼にそんなコネはなく、まして権謀術数にまみれた都会のセレブ社会に、田舎者の彼が入り込む隙はなかった。

あるときラスティニャックは、「ゴリオ爺さん」という老人に出会った。ゴリオ爺さんは見た目こそ地味だが、実は製麺で富を蓄えた金持ちであった。

ゴリオ爺さんにはかわいい2人の娘がいた。2人とも結婚していたが、どうやら下の娘は夫に不満があるらしい。ラスティニャックは下の娘に取り入ろうと、ゴリオ爺さんに近づいた。そして見事に爺さんの信頼を得て、結婚が許された。

娘たちは、父であるゴリオ爺さんのことを金づるとしか見ていなかった。2人はお金をせびり続け、ゴリオ爺さんはついに一文無しになり病気になってしまった。ゴリオ爺さんに恩義を感じているラスティニャックは懸命に看病するが、爺さんは失意のうちに亡くなってしまう。葬式には娘はおろか、誰一人として参列しなかった。

「これが都会の冷酷さというものか。私は田舎に帰るべきだろうか」。

ラストシーン、パリを見下ろせる墓地でラスティニャックは、ある決意を胸に大声で叫んだ。「今度はおれが相手だ!」。

世界は自分のためにできていなかった!

著者の人生は、大学までは順風満帆そのものであった。「世界は僕のためにできている」とすら思うほどだったが、卒業して社会に出たとき、それがとんでもない誤解であることに気がついた。

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要約公開日 2025.09.19
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