とりあえずやってみる技術
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出版社
総合法令出版

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出版日
2025年07月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

やらなければいけないことがあるけど、最初の一歩が踏み出せない。

こんな気持ちには誰でも覚えがあるはずだが、実際にこんな悩みを口にしたら「やる気が足りない」「意志を強く持て」などとお叱りを受けてしまいそうだ。ところが、本書によると「行動に移せない」のは意志が弱いからではない。むしろ自然の状態だというのだ。根本的な原因は、脳にある。

著者は、社会心理学、脳科学のほか、言語学や法学など、幅広い分野の知見を融合した分析を展開している堀田秀吾氏だ。メディアで活躍しているほか、多数の著書を持っており、累計部数は85万部を超えている。

行動できない要因の一つになっているのが、「失敗する不安」である。行動による失敗は、動かずに現状維持をしていれば回避できる。その一方で、行動しなかったことに対する後悔は長く後を引くことになるのだ。「もしかしたら、うまくいったかもしれない」という未練が心に残ってしまうのだ。さらに動かないことには、目には見えない大きなリスクが秘められている。

事前に自分に対する言い訳を用意して、失敗した自分を守ろうとする心理戦略「セルフハンディキャップ」など、耳に痛いことも多い。だが、安心してほしい。それを乗り越えるための仕組みも、本書にはきちんと用意されている。行動したくない脳の仕組みや一歩を踏み出す自分の動かし方など、心理学や行動経済学、神経科学をはじめとするさまざまな分野の研究をベースに解説しているので、説得力は抜群だ。まさに最初の一歩を踏み出す背中を押してくれる一冊だといえるだろう。

ライター画像
中山寒稀

著者

堀田秀吾(ほった しゅうご)
明治大学法学部教授。言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学修士課程修了・博士課程単位取得満期退学。専門は、司法におけるコミュニケーション分析。言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を横断した研究を展開している。NHKのラジオ番組のパーソナリティやテレビのコメンテーターのほか、雑誌、WEBなどでも連載を行う。おもな著書には、『科学的に元気になる方法集めました』(文響社)、『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)、『科学的に自分を思い通りに動かすセルフコントロール大全』(木島豪氏との共著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『科学的に証明された「すごい習慣」大百科』(SBクリエイティブ) などがある。科学的な知見をもとに問題解決のヒントとなる書籍を執筆し、これまでの累計部数は85万部を突破している。

本書の要点

  • 要点
    1
    新しいことを始めるときに不安を感じるのは、脳がリスクを懸念していることが原因である。変化をせずに今のままでいれば、行動によるリスクを負わずにすむと脳が判断しているのだ。
  • 要点
    2
    小さな失敗を繰り返すことで、行動力や判断力を鍛えることができる。失敗は減らすよりも、失敗しても立ち直る仕組みを持つことが重要である。
  • 要点
    3
    「やる気が出ない」のであれば、まずは体を動かしてみることが有効だ。体を動かすことで、後から意識がついてくる。

要約

なぜ行動できないのか

脳はリスクに備えている
akinbostanci/gettyimages

最近の社会変化のスピードは、人間の脳がついていけるレベルを超えている。

フロリダ州立大学のボーマイスターの研究によると、人は急な社会変化に直面すると「決断疲れ」に陥りやすくなる。選択をしなければいけない場面が頻繁に起こることで、判断能力が鈍り、大事な行動を避けるようになるのだ。

それに加え、人は未来を予測できないと、動くことを本能的に避け、様子を見ようとする傾向がある。進化心理学的な観点から考えると、人間の脳は旧石器時代からほとんど変わっておらず、当時の危険に満ちた環境に適応したまま生きている。つまり、人間の脳は常に最悪のケースに備えて行動するように設計されているのだ。

新しいことを始めるときに不安を感じるのは、脳がリスクに反応していることが原因である。変化をせずに今のままでいれば、リスクを負うことはないと脳が判断しているのだ。

「ネガティビティ・バイアス」といって、人間は危険を避けるために、ネガティブな情報に注目する傾向がある。もちろんリスクを避けるために慎重になることは大切だ。しかし、過剰なほど慎重になるとチャンスを逃してしまう。

行動して失敗するリスクに対し、行動しなかったことで得られなかったものは、認識しづらい。提案していたら通ったかもしれない企画や新たなスキルを得られたかもしれない誘いなど、行動しなかったことで何かを失っているかもしれない。そう考えると、行動しないことにもリスクがあるといえる。

そんな心理的なリスクと致命的なリスクを区別し、見極めることが重要だ。

「やらない後悔」は後を引く

やったほうがいいとは思うものの、先延ばしにしてしまった経験がある人は多いだろう。

変化はエネルギーや不確実性を伴う。その懸念から、人間の脳には現状維持しようとする「現状維持バイアス」がある。人には本能的にできるだけ少ない負荷とエネルギーで行動をしようとする「最小努力の原理」と呼ばれる傾向もある。人がいつも通りの行動をしようとするのは、こうした働きによるものだ。

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要約公開日 2025.10.15
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