「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか
「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか
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「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか
出版社
出版日
2025年09月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書『「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか』は、文芸批評家の三宅香帆さんがある講座で受けた質問から生まれた。若いビジネスパーソンと思しき質問者から聞かれたのは、「話が面白い人になる方法」だった。じっくりと考えて準備する時間があるときにはうまく言語化できても、反射的な面白さが必要な場では言葉が出てこない。そんな切実な語り口に応えようと、三宅さんが考えたのがまずは本や漫画やドラマや映画を「鑑賞」として取り入れること。そして、鑑賞した作品を、話すネタにまで昇華させることだ。

今では本についてさまざまな媒体で話をしている著者でも、昔は「とっさに素早く言葉が出てこない」と悩んでいたのだという。話が面白くなければ、本を手に取ってもらえない。そうして試行錯誤して気づいたのが、本書で紹介する「鑑賞」の技術だ。読んだものや観たものを「ネタ」にする技術を身につければ、鑑賞はすべて「話が面白い人」になるための準備になる。新しい作品を鑑賞していれば、いつも違う面白い話ができるようになるし、インプットで人としても成長することができる。

本書の前半の技術解説編では、どんな話を仕込み、どう解釈すべきかを具体的に紹介している。そのうえで、後半の応用実践編では、著者自身が本書の技術を使って最近の作品を解説している。作品解説を読むだけでも面白いが、技術解説編を読んでからだと、「話が面白い人」の思考の道筋が見えてなお楽しめる。作品批評としても、話す技術の指南書としても楽しめる、二度美味しい一冊だ。

ライター画像
池田友美

著者

三宅香帆(みやけ かほ)
1994(平成6)年高知県生まれ。京都大学大学院博士後期課程中退。文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。著書に『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』『「好き」を言語化する技術』等。

本書の要点

  • 要点
    1
    「話が面白い人」になるためには、「①話を仕込む」「②話を解釈する」「③話すときに②を使う」という3つのプロセスをたくさん踏む必要がある。
  • 要点
    2
    「比較」「抽象」「発見」「流行」「不易」のいずれかの5つの技術を使って作品を鑑賞することで、作品鑑賞を人に話すことができるネタにすることができる。
  • 要点
    3
    何かを鑑賞した後は、感想と解釈を記録する「鑑賞ノート」をつけるのがおすすめだ。

要約

【必読ポイント!】 技術解説編

話が面白いという最強のスキルについて

著者の好きな物語に『千夜一夜物語』がある。妻に浮気されて以来女性不信になったペルシャの王は、若い娘を毎夜寝床に呼んでは首を刎ねるという残虐の限りを尽くしていた。ある晩に呼ばれたシェヘラザードは、自分の知る物語を王に語る。そのあまりの面白さに、王は続きをせがみ、シェヘラザードは毎夜寝床で話をし続けた。千夜が明けたころ、王は彼女を正妻に迎え、暴虐は止められていた。

この話を大学生のころに読んだ著者は、財産も地位も力もない、弱い立場の人であっても話の面白さで自分の身を助けることができるということに感動した。「話が面白い」とは、最強の技術だ。それを実現するのは、インプットした内容を、面白く語ることができるようになることだ。

「①話を仕込む」「②話を解釈する」「③話すときに②を使う」という3つのプロセスをたくさん踏んだ人は、話が面白くなっている。これが無意識にできる人もいるが、意識的にやったほうがその効果は高くなるはずだ。

味わった作品を上手く「料理」してネタにする
tada/gettyimages

何かを読んだとき、それを「ネタ」にするためには、具体的には①〈比較〉ほかの作品と比べる、②〈抽象〉テーマを言葉にする、③〈発見〉書かれていないものを見つける、というプロセスが必要となる。この3つができるようになると、応用として④〈流行〉時代の共通点として語る、⑤〈不易〉普遍的なテーマとして語る、ということも可能になる。

観たものや読んだものに対して、この5つのどれかの鑑賞・解釈ができるようになると、人に話すことができる状態になる。

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要約公開日 2025.11.25
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