【必読ポイント!】 ファンダムの力を活用する
推される企業になるために

膨大な情報に翻弄され、アルゴリズムのパーソナライズ化によって分断化した現代では、ブランドや商品のプロモーションがまったく届かないということがよくある。消費者の認知や購買意欲を高めることは容易ではない。そんな時代でも有効と考えられているマーケティングの方法に、タイアップがある。しかし、フォロワー数などの数値化された影響力だけでタイアップ先を決めたり、短期的なプロモーションだけで終わったりすると、あまり強い効果を出せない。
「正しいタイアップとは、認知から興味、購買、ファン化までをデザインすることができるマーケティング手法である」。この考えに基づいて、「従来のタイアップやインフルエンサーマーケティングの概念をアップデートする」のが、「ファンダムマーケティング」である。本書で扱われるのは、エンターテインメント業界で自分たちの熱狂的なファンを作るためのマーケティングではなく、エンターテインメントと関連のないブランドや商品が「『推し』を熱狂的に応援、支援、推奨する『ファンダム』の力を活用するマーケティング」だ。
「推し」は、好きなものとイコールで表現されることも多い。しかし元来、アイドルやアニメ、キャラクター、スポーツ選手、お笑い芸人など、自分の人生になくてはならないような、「人に勧めたいほどの熱狂的な愛や憧れを抱くモノやコト、ヒト」を指すものだ。
Appleのように「推される」企業やブランドもあるが、世の中の大半の企業、ブランドは「推されない」側に入るだろう。ファンダムマーケティングは、企業が「推される」存在になるための一つの方法だ。それは、大企業だけが可能なタイアップではなく、多くの企業、ブランド、商品で実現できるマーケティング手法なのである。
売れて、愛される
ファンダムマーケティングを実施することには、「売れる」と「愛される」という2つの価値がある。IP(知的財産)のファンダムを新規顧客として獲得できるうえに、認知から購買、愛着の形成までを一気に進められて、ブランドや商品に機能的価値だけでなく情緒的価値を付与できる。そうして、コモディティ化した市場における差別化を実現するのが、「売れる」側面だ。また、ファンダムは推しの情報を享受するだけでなく積極的に拡散させる力を持つ。それによって、ブランド認知、ブランド連想、ブランドロイヤリティを高め、「ブランド資産の集合」であるブランドエクイティを強化できる。これが「愛される」側面だ。




















