本が生まれるいちばん側で
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本が生まれるいちばん側で
出版社
出版日
2025年09月23日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

あなたは本を読みますか? 最近、本屋さんに足を運んだのはいつですか? 本は、好きですか?

SNSやネットニュースも含めれば、誰かが書いたものを日常的に読んでいる人は少なくない。自分が発信者になることも、珍しくはなくなった。その時代に、あえて本のかたちに向き合うことを、どれだけの人がしているだろうか。

長野県松本市、創業1955年の老舗印刷会社である藤原印刷。本書は、そこで新たな本づくりのあり方に邁進する人たちの物語だ。「印刷会社は黒子業」だが、藤原印刷はとあるきっかけから、「自分のために本をつくる人」のコンシェルジュを始めた。出版社のビジネスとは無関係に、内容から配布方法まで「ぜんぶ自分で決められる」本であり、それらは「唯一無二の顔をしている自由な本」である。その制作を傍らで支援する、まさに「いちばん近くで本づくりを見つめる」うちに、新しい本づくりの引き出しも増えていったという。

「自分のために本をつくる」なんて、考えたことがない人は多いだろう。しかし、それがいかに魅惑的で取り組みがいのあるプロジェクトであるか、本書を読めば火を見るより明らかだ。気づけば、あなたも本をつくりたくてうずうずしているに違いない。

本をつくるという工程のすべてが、あなたを自由にする。なぜ紙の本はなくならないのか。その答えは、本書のなかにある。

著者

藤原印刷株式会社(ふじわらいんさつかぶしきがいしゃ)
戦後ひとりの女性タイピストがはじめた印刷会社。製造業である印刷業でホスピタリティと顧客満足を最も大切にしている。だれもやったことがない仕様に挑むことを得意とし、印刷の駆け込み寺として全国から問い合わせを集める。印刷屋の本屋(2018)、印刷工場のオープンフェクトリー「心刷祭」(2019)などのサービスを立ち上げ。2023年、個性を宿した本づくりを推進する「クラフトプレス」を宣言。今日もどこかで「つくるよろこび」をつくっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    「つくり手の『want』を詰め込んだ本」が「自分のためにつくる本」である。マーケットのことは考えず、自由な発想で、自分の「好き」を詰め込み、既存の出版流通に乗らない。
  • 要点
    2
    個人のつくり手のほとんどは、ベストセラーを目指してはいない。利益ではなく「自分が納得するか」が優先される。そんななかから、「思いがけず売れていく」本があらわれることもある。
  • 要点
    3
    これまで藤原印刷が関わってきた本のつくり手たちの動機は、「記録」「儀式」「表現」「偏愛」の4つに分けられる。

要約

【必読ポイント!】 本づくりは最高だ

楽しくて味わい深い
Mauricio Villarroel Valenzuela/gettyimages

「つくり手の『want』を詰め込んだ本」が「自分のためにつくる本」である。マーケットのことは考えず、自由な発想で、自分の「好き」を詰め込み、既存の出版流通に乗らない。

出版社は読者のために本をつくる。著者や編集者をはじめ、出版社は「社会的意義がある」という信念にもとづいて前へと進んでいく。一方「自分のためにつくる本」は読者も社会も見てはいない。「自分の哲学や思想、世界観をピュアに表現し尽くすのみ」である。だから、個性溢れる、誰にも忖度しなくていい、ユニークな本が生まれる。タイトルや内容だけでなく、大量生産には向かない仕立ての本でも、「自分に刺さればそれでいい」。

『ハトは否定形に飛ぶ』という詩集は、「本をつくりたいという夢をいつまでも夢のままにしておきたくない」との強い思いがかたちとなったものだ。出版社との仕事では「『わたし』が薄まる」と感じ、藤原印刷に足を運んだ。紙選びへのこだわりが強く、何度も打ち合わせを重ね、紙のギャラリーに足を運んでみても、なかなか決まらない。その過程で「わたしらしさ」を定めなおしてみたら、書店でピッタリの印象の紙に心奪われた。その本の印刷会社に問い合わせてみたところ、該当の紙はすでに廃番となっていたが、近い紙を教えてもらえた。コストのかかる特殊な製本も、見本を見ているうちに諦められなくなった。松本にある藤原印刷の工場まで足を運び、印刷の立ち会いも体験した。そうして作者という一個人がすべて詰め込まれた本は、まさに「本づくりの魅力が詰まった本」であった。

「自分のためにつくる本」は、利益も原価率も考えなくていい。「自分がお財布から出せる額」をそのまま制作費にかけられる。だから、理想とする仕様を心ゆくまで選んでも問題ない。予算内で納得できるかたちにおさめていくことも、自分らしさの表現のひとつだ。そこにも「本づくりのおもしろさ」がある。

人を惹きつける本

個人のつくり手のほとんどは、ベストセラーを目指してはいない。利益ではなく「自分が納得するか」が優先される。そんななかから、「思いがけず売れていく」本があらわれることもある。

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要約公開日 2025.11.23
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