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血肉となる読書の表紙

血肉となる読書

なぜ読むことだけが人生を変えるのか

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本書の要点

  • 本書は、「それぞれの立場から本を人生に役立てる読み方」を教えてくれるものである。

  • 名著は「無意識下にある怪物と向き合うためのガイドブック」になるのかもしれない。

  • 読書は、「自分とは異なる他者の思考パターン、深層心理、喜びや苦しみを少し分けてもらう行為」である。

  • 古典を読むべき理由は2つある。「次のシンギュラリティ」を考えるため、そして温故知新のためだ。

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【必読ポイント!】 悪夢の読書術

社会の呪縛と言葉

shelma1/gettyimages

本書は、NHKの番組「100分de名著」の指南役を務めたことのある人たちが、「それぞれの立場から本を人生に役立てる読み方」を教えてくれるものである。「ケア」の視点を取り入れた文学研究に取り組む英文学者、小川公代さんにとって、読書は悪夢とつながっているという。本を読めば夢に怪物が現れ、うなされる。その怪物、悪夢と対話することが読書論とつながっている。

小川さんが研究対象としてきたのは、女性や障がい者、同性愛者といった、日常的に声が埋もれたままになりがちな人の叫びを読み取れる、ゴシック小説である。その代表格は、メアリ・シェリーが書いた『フランケンシュタイン』だ。彼女の母親は最初期のフェミニズム本である『女性の権利の擁護』を著したメアリ・ウルストンクラフトであり、2人とも、厳格な家父長制のもと、女性としての生きづらさを抱え、それをゴシック小説というかたちに結実させていた。

男性教員や顧問から暴力や厳しい指導を受けた経験がトラウマとなっていた小川さんも、若いときから女性としての葛藤や生きづらさを感じ、広い世界を希求してイギリスに留学した。そこで、「自分の頭で考える」ことの大切さを学び、大学では大いに知的刺激を受けた。しかし、「女性である限り日の目をみるなんてできない」という不安が、胸の奥にこびりついて離れなかった。「私も外で働けるなら働きたかった」とつぶやきつづけた専業主婦の母親のようにはなりたくないと思っていたけれど、どれだけ自己実現に邁進しても、「母と同じような人生を歩んでしまうんじゃないか」という悲観から逃れられない。性別役割分業が当然視される家父長制の色が濃い日本社会で、その価値観が女性、ひいては自身にも内面化されてしまう。それは「恐怖に近い感覚」であった。

そうして、悪夢に襲われるようになる。ウルストンクラフトとその夫ウィリアム・ゴドウィン、娘のメアリ・シェリーについての博士論文にとりかかっていたときで、『フランケンシュタイン』に出てくるクリーチャーのような怪物が無言で迫ってくる。博士論文に自分の言葉で向き合う覚悟を決めたら、怪物も出現しなくなったが、就職氷河期のさなか、研究者として就職できないかもしれないと悩みだした途端、また悪夢を見るようになった。

すでに社会人となって十分な収入を得ていた夫から、「必死にやらなくても生活はできるんじゃない」などと何度も言われ、そうかもしれないなと流されそうになっても、夢のなかで背筋の凍る体験をすると、「やっぱりそれじゃ駄目だ」と思いなおす。怪物はいつしか、自身の甘えや迷いを叱咤する「バディ的存在」となっていた。「おまえには、書き手になって女性の声を社会に届けるという夢があるはずだろう」。そうした無意識的な願いへと激励してくれているかのようだった。

本を人生のガイドとすること

Oksana Horiun/gettyimages

悪夢は自身の無意識から届けられた「手紙」なのである。「博士論文を書くこと」「研究者になること」、すなわち「抑え切れないほどの探究心が向かう先にこそ、自分の将来を照らし出す思想がある」ということだったのだ。名著は「無意識下にある怪物と向き合うためのガイドブック」になるのかもしれない。

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要約公開日 2026.06.18
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