政治の本質を考える
政治の意義

現実の政治は、混迷している。だから、政治に絶望したり、政治とできるだけ距離を取ろうとしたりする人も多いだろう。しかし、こういう時代だからこそ、「政治とは何か」を考えなければならない。
異なる価値観を持つ多様な人々のあいだで、「どうしてもわかり合えないと絶望することもある」だろう。それでも、わかり合えない人たちと共存するために、完全に考えが一致しなくても、最低限の折り合いをつけることはできるかもしれない。多様性は呪いの言葉ではなく、むしろ、「対立を協働へと転換する、可能性の言葉」だ。
政治とは、多様な思い、利害、感情を抱えた人びとが、言葉を交わして、相手を否定せずに話を聞くことを通じて、「ともに社会をつくっていく」ための技術(アート)である。それを通して、「人は他者とともにいる自分を肯定的に捉えられる」ようになるだろう。政治の意義とは、他者に従属したり、逆に他者を支配したりすることなく、「自分自身の存在や意味を確認するために、あえて多様な人々と協働すること」にある。政治はけっして万能ではなく、限界がある。しかし「最善の社会」を実現できなくても、「『よりよい社会』に向かって一歩ずつにじり寄っていく」ことはできる。
著者は、『民主主義とは何か』という前著において、政治の本質を次のように定義した。「透明性を確保された公共の場において、暴力ではなく言葉によって、共同の意思決定を行うこと」。政治の議論において大切なのは、正しい答えを選択することではない。少しでも納得感があり、不本意な部分が残ったとしても腹落ち感のある決定をすることだ。
共存するための政治
ハンナ・アレントとカール・シュミットは、同じ20世紀のドイツを生きた理論家である。二人は、対極的な政治の捉え方をしているが、問題意識としてはつながっている部分もある。



















