

京都セラミック(現・京セラ)を創業し、KDDIの立ち上げにも携わった稲盛和夫さんは、日本を代表する名経営者のひとりです。経営者としてだけでなく、一人の人間として真摯に、誠実に、そして情熱的に生きる姿勢に多くの人が共感し、影響を受けてきました。
その著書の数々には、稲盛さんの生き方や働き方、経営のエッセンスが詰まっており、幅広い学びを与えてくれます。特に「利他の心」や「動機善なりや、私心なかりしか」といった言葉は、ビジネスパーソンだけでなく、広く現代人の生き方に深い示唆を与えてくれるものです。
本記事では、そんな稲盛和夫さんの関連書の中から、特におすすめしたい15冊を厳選してご紹介します。大谷翔平選手の愛読書として話題になった作品も取り上げています。
どれも何度も繰り返し読みたくなる名著ばかり。気になる一冊があれば、ぜひチェックしてみてください。
記事更新日:2025年7月14日


稲盛和夫さんの著書といえば、真っ先に大ベストセラーの『生き方』を挙げる人は多いでしょう。2024年6月、大谷翔平選手の愛読書として紹介されたことでも注目を集めた一冊です。
本書は、「人間として一番大切なこと」という副題の通り、仕事や人生において守るべき原則が、だれでも受け入れやすいかたちでまとめられています。
苦境に立たされたときに思い出したいのは、“結果を焦るな、因果の帳尻はきちんと合う”というメッセージ。
稲盛さんは、人生にはそれを制御する2つの「見えざる手」があるといいます。
「見えざる手」のひとつは、運命です。人はそれぞれの運命をもって生まれ、運命によって導かれたり促されたりして生きていきます。
もうひとつは、よいことをすればよい結果が生じ、悪いことをすれば悪い結果が生じるという因果応報の法則。原因と結果はシンプルにつながっているのです。
良いことをすれば、良い結果が生まれる。それによって、運命に抗うことができる。因果が応報するには時間がかかるが、結果を焦らず、地道に良いことをしよう――。
このメッセージを受け取ったあなたは、これからどのような「生き方」を選びますか? 私たちの心に一生残り続ける大切な問いを与えてくれる、不朽の名著です。


続いて紹介したいのは、ビジネスの成功につながる心の持ち方を説いた『心。』。
稲盛和夫さんは本書で、人生には波乱万丈のドラマがあるが、そうした出来事はすべて自分自身の心が引き寄せ、つくり出したものだと書いています。そして、人生は目の前の出来事にどのような心持ちで対応するかによって大きく変わっていくといいます。
実際、稲盛さんは、自分の置かれた状況に不平不満を漏らしていたときには何もうまくいかなかった一方、自分の運命を受け入れて仕事に没頭し始めてから、人生に追い風が吹くようになったそう。あなたにも似たような経験があるのではないでしょうか?
つらいときは、どうしても環境やまわりの人を恨んでしまうもの。そんなときは本書のメッセージを思い出しましょう。現状を恨んだり、卑屈になったりせず、つねに前向きな気持ちで物事に向き合うよう努める――。このメッセージを心にとどめて行動すれば、自然と人生が好転し始めることでしょう。


稲盛和夫さんの人生哲学に触れたいなら『考え方』を手に取ってみてください。
稲盛さんは本書で、どのような「考え方」を選択するかによって人生は変わるとしたうえで、以下の「人生の方程式」を紹介しています。
人生・仕事の結果=考え方✕熱意✕能力
方程式の右辺の要素について、簡単に紹介しましょう。
まず「能力」。能力の多くは生まれつきのものです。
そして「能力」に掛かる要素が「熱意」(=努力)。これは「能力」とは違い、自分の意志で変えられるものです。生まれ持った能力に乏しいのなら、誰よりも熱意をもって努力すれば、能力不足をカバーできるということです。
残る要素は「考え方」。ここで稲盛さんが言う「考え方」とは、その人の思想、哲学、理念、信念、人生観、人間性などのことです。
稲盛さんによると、3つのうち最も重要なのは「考え方」です。「能力」と「熱意」が0点から100点まであるのに対して、「考え方」にはマイナス100点からプラス100点までの大きな振れ幅があるからです。
稲盛さんは、どんなに「能力」と「熱意」があっても、「考え方」が間違っていると結果は決してよいものにはならないと書いています。むしろ「能力」と「熱意」が大きいほど、「考え方」が間違っているとき、いっそう大きな負の結果を残すことになるとも指摘しています。
あなたはこの方程式をどのように解釈しますか? あなたの「考え方」はどのようなものでしょう? 人生・仕事の結果をよりよいものにしたいなら、ぜひ本書を手に取り、自分の「考え方」と本気で向き合ってみてください。


稲盛和夫さんの著書のうち、仕事や働き方、働くことそのものについて考えたい人におすすめなのは『働き方』です。稲盛さん自身の経験を紹介しながら、「なぜ働くのか」「いかに働くのか」について考えていく一冊です。
注目したいのは、もともと一生懸命に働くことが苦手だった稲盛さんが、50年間仕事に没頭することができた理由を語っているパート。長きにわたって仕事に取り組めたのは、仕事を好きになるように努めたからだと書かれています。
いきなり仕事を好きになるのは難しかったそうですが、「この仕事が嫌いだ」というネガティブな感情を追い払い、とにかく目の前の仕事に全力を注ぐように努力すると、本当に仕事が好きになっていったそうです。そして、結果として仕事に積極的に取り組めるようになり、最後には「これが天職だ」と思えるほどになったのだと書いています。稲盛さんさえ最初は仕事を好きになれなかったのだと知ると、少し親近感が湧いてきませんか?
なお、稲盛さんによると、一生懸命働くためのコツは、恋をするように仕事を好きになること。恋をするときのようなエネルギーを仕事に注げれば、どんな苦労も苦にならなくなるはずだとしています。
高い目標を掲げ続ける、完璧主義者になる、素人だからこそ自由な発想ができる……など、成果を出して気持ちよく働くための仕事の向き合い方が詰まった本書。年齢や世代を問わず、すべての働く人におすすめしたい一冊です。


稲盛和夫さんの経営論をまとめた有名な本といえば、『アメーバ経営』が挙げられます。
アメーバ経営とは、「市場に直結した部門別採算制度の確立」「経営者意識を持つ人材の育成」「全員参加経営の実現」の3つを目的とした経営手法のこと。京セラに加え、稲盛和夫さんが再建を手掛けた日本航空においても取り入れられたことで知られています。
もともと経営の素養がなかった稲盛さんは、経営をシンプルにとらえようとする中で、「売上を最大にし、経費を最小にすれば、結果としてその差分である利益が最大になる」という原則を見出します。そしてその原則をもとに、各アメーバ(組織)リーダーに対し、事業活動の成果を「付加価値」の尺度でとらえる「時間当り採算制度」を実践してもらうことにしました。「時間当り」という指標を用いることで、よりシンプルに各アメーバの収支をとらえられるとともに、従業員一人ひとりの生産性を底上げできたのです。
経営者はもちろん、部署のリーダーやマネジャークラスの人にとっても学ぶところの多い本書。稲盛和夫さんの経営論に触れたいなら、必ず読んでおきたい一冊です。


『経営12カ条』は、その名の通り、稲盛和夫さんが経営において大事にしているポイントを以下の「12カ条」にまとめ、それぞれについて解説した一冊。
第1条:事業の目的、意義を明確にする
第2条:具体的な目標を立てる
第3条:強烈な願望を心に抱く
第4条:誰にも負けない努力をする
第5条:売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える
第6条:値決めは経営
第7条:経営は強い意志で決まる
第8条:燃える闘魂
第9条:勇気をもって事に当たる
第10条:常に創造的な仕事をする
第11条:思いやりの心で誠実に
第12条:常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で
意外に思われるかもしれませんが、「経営12カ条」といっても、経営者にのみ実践できるものではありません。メンバークラスであっても、少し視座を上げて、心にとどめておきたい内容が詰まっています。


稲盛和夫さんの哲学に気軽に触れたいなら、『稲盛和夫一日一言』がおすすめです。
本書は、稲盛和夫さんの名言集。1日1項目ずつ、366日かけて読み切れるような形で、シンプルにまとめられています。
ビジネスパーソンが特に注目したいのは、仕事を愛することについて語られた項。稲盛さんは、自分の製品を抱きしめたいというほどの想いで製品開発にあたっていたそうです。それくらい仕事に愛情を注がない限り、いい仕事はできないのです。
また稲盛さんは、人は好きな仕事なら厭わず努力できる、努力し続けられればたいていの仕事は成功するとも語っています。
あなたは仕事を愛していますか? ドキッとしたら、ぜひ読んでみてください。


『活きる力』は、稲盛和夫氏の母校、鹿児島大学にある「稲盛アカデミー」での講演を再現してまとめた一冊。
「今、君たちに伝えたいこと」「人は何のために生きるのか」「自分の道を切り開くための六つの精進」「仕事には哲学を持ち込め」「20代で知っておくべき経営の12か条」「稲盛フィロソフィの力(鹿児島大学稲盛アカデミーより)」の6章から構成されており、章立てからも、若者たちへのメッセージが詰まった本であることがわかるでしょう。
特に注目したいのは、“心の中に抱く「思い」は、人の運命を作る”というメッセージ。稲盛さんは、自分の人生も、人間関係も、地域社会とのかかわりも、すべてが「思い」によって作られるとし、人が生きていく上で「思い」は何よりも大切だと書いています。
あなたの心の中にはどんな「思い」がありますか? 自分の心のうちをじっくり振り返りながら読みたい一冊です。


稲盛和夫さんの人生哲学の真髄に触れられる名著といえば『京セラフィロソフィ』が挙げられるでしょう。それまで京セラ内部と稲盛和夫さん主宰の経営塾でしか公開されていなかった門外不出のエッセンスを600ページほどにまとめた一冊です。
特に熟読をおすすめしたいのは、仕事との向き合い方を説いたパート。稲盛さんは、仕事においては、常に90%ではなく100%を目指すべきだと書いています。稲盛さんによると、「間違えたら消しゴムで消せばよい」というような安易な考えがあるかぎり、自分も周囲も満足させることはできません。そして、常に仕事に対して誠実に向き合っていれば、人間性が向上し、心も美しくなっていくとも書いています。
背筋がピンと伸びる本書。新人からベテランまで何度も読み返したい、まさに珠玉の一冊です。


『成功の要諦』は、稲盛和夫さんが55歳から81歳までの間に行った、経営者向けの6回の講演を採録した一冊。貴重な講演内容に何度でも繰り返し触れられる、経営者必読の一冊です。
一冊を通して重要なメッセージがちりばめられていますが、特に経営者必読なのは“経営の極意は利他にある”というメッセージの込められたパート。
稲盛さんは、“成功した人はその理由が自分の才能にあると勘違いしがちだ”とし、その才能は社会のために使うべく与えられたものだと説いています。そして、他人をよくしてあげようという利他の心をベースに経営をすれば、会社はよくなっていくとしています。
頭ではわかっていても、人はつい「自分さえよければいい」と考えてしまうもの。利己的になりがちな自分を戒めたいときに手に取りたい一冊です。


いまの日本人に必要なのは強い闘争心「燃える闘魂」を持つことだ――。稲盛和夫さんのそんな熱いメッセージが込められているのは、『燃える闘魂』です。
タイトルにある「燃える闘魂」とは、「経営12カ条」の第8条にあたるもので、「なにくそ、負けるものか」という強い思いのこと。いまの日本人にとっては、「燃える闘魂」を呼び覚ますことが何より重要だと、稲盛さんは書いています。
また稲盛さんは、経営者だけが「燃える闘魂」を備えているだけでは不十分であり、企業全体が「燃える闘魂」をもった集団でなければならないと主張します。あなたの所属する組織は「燃える闘魂」に満ちているでしょうか? 読み進めるうちに元気が湧いてくる、熱く力強い一冊です。
![[新装版]成功への情熱](https://static.flierinc.com/summary/3459_cover_300.jpg)
![[新装版]成功への情熱](https://static.flierinc.com/summary/3459_cover_300.jpg)
『[新装版]成功への情熱』は、1996年に発刊されたロングセラー『成功への情熱』を文庫サイズの新装版として出版した一冊。人生とビジネスにおける稲盛哲学をまとめています。
稲盛さんは本書で「人生とは自分自身が主役を演じるドラマだ」「どのようなドラマを描くかは自分次第」という名言を残しています。つまり、運命は生まれながらに決まっているものではなく、自分次第で、いかようにも変えていけるものなのです。
そのほか、成功する人としない人の違い、読書の大切さ、成功への7箇条など、稲盛さんらしい項目が満載の本書は、ずっと手元に置いておきたい一冊となっています。
![[新装版]心を高める、経営を伸ばす](https://static.flierinc.com/summary/3643_cover_300.jpg)
![[新装版]心を高める、経営を伸ばす](https://static.flierinc.com/summary/3643_cover_300.jpg)
『[新装版]心を高める、経営を伸ばす』は、『[新装版]成功への情熱』と同様、長く愛され続けてきたベストセラーを文庫版にリニューアルした一冊。若いリーダーに向けて、マネジメントの要諦を詰め込んだ名著です。
稲盛さんは本書で、大工さんやお坊さん、作家、芸術家の例を出しながら、ひとつのことに打ち込み、究めることの重要性を説いています。
ひとつのことに打ち込む、究めるとはどういうことか。本書によるとそれは、ひたむきに努力を続け、常に自分の取り組みをモニタリングしながら、工夫を重ねることです。日々、反省と改良を繰り返すことにより、やがて今よりもずっと遠いところへ到達できるでしょう。
「素晴らしい人生をおくるために」というサブタイトルも印象的な本書。若いうちに出会い、年齢を重ねても何度も読み返したい、滋味深い一冊です。


『稲盛和夫伝』は、作家として数々の偉人の人生に光を当ててきた北康利さんが、稲盛和夫さんの一生を描き出した評伝。1932年に鹿児島市薬師町に生まれたところから、大学受験での失敗、松風工業への就職と同社での活躍、京都セラミック(京セラ)の設立と繁栄、JAL再建など、稲盛和夫さんの人生における主な出来事を追える一冊となっています。
稲盛和夫さんという伝説の経営者がいかに生まれ、育っていったかを、第三者目線で知りたい人にぴったりの本です。
また、もっと稲盛和夫さんの一生に触れたい人には、同じく北康利さんの著書で、日・中・台にて同時発刊されて話題になった『思い邪なし』もおすすめです。


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