映画という《物体X》

フィルム・アーカイブの眼で見た映画
未読
日本語
映画という《物体X》
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フィルム・アーカイブの眼で見た映画
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映画という《物体X》
ジャンル
出版社
定価
1,980円(税込)
出版日
2016年09月23日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
5.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

本書は「キネマ句報 映画本大賞2016」で第1位を受賞した作品だ。フィルム・アーカイブという仕事の思想や起源、映画のフィルムの素材そのものが映画史で果たした役割、映画を私有化できる時代に映画館が存在する意味など、本書が取り扱うのは広範囲に渡る。

東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員であり、長年にわたって映画フィルムや映画関連の資料を保存する「フィルム・アーカイブ」の仕事に携わってきた著者は、フィルム・アーカイブと批評の大きな違いについて、「すべての映画は平等である」という思想のもとに映画を取り扱っているかどうかだと語る。商業的に評価されなかったとしても、その映画の存在や、映画が制作されたコンテクストそのものに価値があると考えるのがフィルム・アーカイブなのだ。

だからこそ、著者の映画に対する視点には独特なものがある。そこにはフィルム・アーカイブという仕事へのプロフェッショナリズムが内在している。

従来の映画本にはない、映画に対する独特な見方を知ることは、知的な興奮を呼び覚ますだろう。さらに、「フィルム・アーカイブ」という仕事が持つ意義を、徹底的に突き詰めて考える著者の姿勢にも感化されるはずだ。

映画に関心がある人はもとより、プロフェッショナリズムについて深く考えたい人にもお薦めしたい一冊である。

著者

岡田 秀則 (おかだ ひでのり)
1968年愛知県生まれ。東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員として、映画のフィルム/関連マテリアルの収集・保存や、上映企画の運営、映画教育などに携わり、2007年からは映画展覧会のキュレーションを担当。また、学術書から一般書まで内外の映画史を踏まえたさまざまな論考、エッセイを発表している。共著に『映画と「大東亜共栄圏」』(森話社、2004年)、『ドキュメンタリー映画は語る』(未來社、2006年)、『甦る相米慎二』(インスクリプト、2011年)、『岩波映画の1億フレーム』(東京大学出版会、2012年)、『クリス・マルケル 遊動と闘争のシネアスト』(森話社、2014年)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    映画批評は「良い映画」と「悪い映画」を区別するが、映画を保存するフィルム・アーカイブで働くアーキビストたちにとって、「すべての映画は平等」である。
  • 要点
    2
    映画の多様性がもたらす未知の衝撃は、未知の映画を観続けることでしか味わえない。
  • 要点
    3
    「保存」という行為を「ノスタルジー」と混同してはならない。「保存」とは、ある時代の当然のことを眼前にそのまま差し出すためのスキルである。目の前にある「過去のこと」をそのまま「現在のこと」にしてしまう、そのことにこそ価値がある。

要約

【必読ポイント!】 なぜ映画を守るのか

すべての映画は平等である

著者は東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員であり、映画を保存する「フィルム・アーキビスト」として働いている。

フィルム・アーキビストに適性があるのは、「映画の中身を語らなくても、映画のことを延々と話し続けられる人」だ。そのためには、「世界のすべての映画」という概念を頭の中に思い描ける感性と、一生見ることのない映画についても頭の隅に置ける能力が求められる。

フィルム・アーカイブで働くアーキビストたちにとって、「すべての映画は平等である」。映画批評では「良い映画」と「悪い映画」を区別するが、フィルム・アーカイブでは、すべての映画を同じ条件で平等に扱う。アーキビストはひとつひとつの映画が面白いというより、「映画」と名付けられた体系全体に愛着を感じているのだ。

映画を守ろうといったのは誰?
Nolmedrano99/iStock/Thinkstock

1895年12月、パリの「グラン・カフェ」でリュミエール兄弟が映画の一般上映を初めて実施した。しかし、実際に映画の保存所がアメリカやヨーロッパで生まれたのは1920年代から1930年代にかけてであり、初期の映画の多くは残念ながら失われてしまっている。

フィルム・アーカイブのアイデア自体はかなり早くに生まれていたようだ。1898年3月、ポーランド生まれの写真家ボレスワフ・マトゥシェフスキが『歴史の新しい源』という冊子を出版し、映画を歴史文書としてシステマティックに管理する保存所としてのフィルム・アーカイブを提唱している。加えて、マトゥシェフスキは著書『動く写真』のなかで、医療、教育、芸術、家庭などさまざまな分野で映画を活用できる可能性、そして映画を蓄積する必要性を訴えている。

1909年になると、ユダヤ系フランス人の

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