本書の要点

  • 組織の成果と個人のスキルアップを両立するには、全力で業務に挑まず、20%ほど学ぶための時間と力を残しておくことだ。

  • マネージャーになっても新しい技術を追いかけていい。

  • マネジメントには正解がない。技術的な探求をするように、マネジメントの正解も「自分で探していい」のである。

  • 技術者の部下のキャリアパスを考えるのもマネージャーの仕事だ。著者は優秀な部下の評価と報酬を上げるため、「問題解決する姿を役員レベルの人たちに見せる」ことを試みた。

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マネージャーになってしまった!

自分自身の心の持ち方

マネージャーとして組織を率いるときに大事になるのは「自分自身の心の持ち方」だ。「こうあってほしい」という理想を当てはめるのではなく、まず目の前の現実を受け入れ、今後どうしていくかを考える必要がある。著者は「うまくいくかどうかは半々の確率」「仕事は頼んだほうにも責任がある」「ないものを作るのだから、失敗しても今より悪くはならない」「自分がマネージャーを任されたのは実績があるからではない」と考えるようにした。こう考えることで、「自分自身」と「マネージャーという役割」を切り離せるからだ。

成果とスキルアップの両立問題

gilaxia/gettyimages

マネージャーになった著者が最初に取り組んだのは、技術者個人のスキルアップと、業務のアウトプットの両立である。著者の組織の業務は「技術サポート」であったため、アウトプットは「他部門の問題を解決すること」となる。しかし当然ながら、技術者の能力は均一ではない。こういった場合に組織がやりがちなのは、能力の高いメンバーにフル回転で働いてもらい、成果を上げることだ。だがこれには問題がある。まず、仕事が能力の高い人たちに集中してしまうこと。そして担当者個人の技術力によって、組織として請け負うサービスの質にバラツキが出ることだ。すると、仕事が人に固定される「属人化」が起き、チーム内に非協力的なムードが漂ってしまう。著者はそれを避けるべく、次の3つを組織の核に置くことにした。・アウトプットは組織の時間で換算する・目指すのは「アウトプットの最大化」ではなく「安定的なアウトプット」・「技術者を養成すること」を仕事の中に組み込む次項ではこれらを実現するためにおこなったことを紹介する。

学びの余力を残しておく

通常、アウトプットには最大限の力で取り組むことが期待される。しかし、それでは個人も組織も消耗してしまい、学びや成長にリソースを割くことができない。

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要約公開日 2025.02.21
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