ベンチャーキャピタルとは何か
ファンドを立ち上げる

ベンチャーキャピタル(VC)とは、「まだ株式市場に上場していないスタートアップに資金を提供する投資会社」を指す。事業がある程度軌道に乗り、返済能力をみてはじめて融資する銀行と違い、VCはアイデア段階でしかないスタートアップにも積極的に投資するし、立ち上げ間もないアーリーステージの企業に数億円投資することもある。このリスクは、株式などの売却益であるキャピタルゲインというハイリターンでの回収を狙っている。企業がIPO(新規株式公開)やM&A(企業の合併・買収)となれば、相応の売却益が期待できる。そうして「投資資金を回収すること」をEXITと呼ぶ。
VCが数億円の投資を行なえるのは、LPS(投資事業有限責任組合)というファンドをつくって、LP(有限責任組合員)と呼ばれる複数の金融機関、事業会社などから資金を集めているからだ。ちなみに、「ファンドの運用者としての業務を遂行する人・会社」はGP(無限責任組合員)と呼び、VCやVCの代表がこれを担う。GPは組合契約にもとづいてキャピタルゲインをLPに分配する。VCの収入は、ファンド総額の2%程度であるファンドの運用手数料としての管理報酬と、リターンの20%ほどとなる成功報酬の2つであり、この「2-20(トゥー・トゥエンティ)」ルールは世界標準だ。
GPには、「ファンド総額の1%を自己資金から出資する」ことを義務づけた、GPコミットメントが必須となる。キャピタルゲインに対する法人税課税を避けられるため、個人がGPを務めるほうが得であるが、個人で自己資金を集めなくてはならない。いわば、身銭を切っているわけだ。
投資と立場
ファンドのコンセプト決めで重要となるのは、「どのステージの企業に投資をするのか」である。スタートアップの成長ステージはシード、アーリー、ミドル、レイターの4つに分類できる。多くのVCでは、これらのうち「どこかのステージに特化していることが一般的」だ。
シードステージは起業前もしくは起業直後であり、大きく成長するかの判断が難しいので、リスク分散のため、50社以上に対して、1社あたり1000万〜5000万程度の少額資金を出資する。当たった場合は何百倍ものリターンを得る可能性もある。
アーリーステージでは初期のユーザーがついて、「プロダクトの価値が証明されるPMF(Product-Market-Fit)が見えてくるタイミング」なので、ここに投資する日本のVCがもっとも多い。
本格的に事業が拡大期に入るミドルステージは、「投資対効果など事業成長のエンジンが確立しているタイミング」なので、数十億円の出資となることも少なくない。
そして、ガバナンスも強化されてIPO準備に突入しているレイターステージは、すでに株式価値が上がっており多くのリターンにはつながらないものの、キャピタルゲインを得られる確率が高く、VCとしてのリスクが低くなる。
「VCは事業に不可欠な資金を出資するので、起業家よりも圧倒的に強い立場にある」というイメージをもたれがちだ。投資する以上、VCはシビアな判断のために、起業家の経営者としての資質を確認する面談をくり返し、事業の価値やリスクの綿密な調査であるデューデリジェンスを実施する。しかし、そこに上下の立場があるわけではない。有望なスタートアップであれば複数のVCから出資したいとオファーされ、そのなかから1つだけが選ばれることもある。「投資家と起業家は、お互いに選び、選ばれるという関係にある」のだ。
それに、VCは投資先のスタートアップがIPOの先まで成長できるよう支援する。「自立・飛躍するための土台を整える」という意味では、「学校の先生に似ている面がある」ともいえる。厳しく向き合うため、衝突も少なくない。「もう一緒にできないから抜けてくれ」と投資先に言われることもある。その甘くない成長支援こそが、ベンチャーキャピタリストのやりがいにつながるし、葛藤と結びつくところでもある。
【必読ポイント!】 投資の意思決定
スタートアップと出会う

IPOの実力を備えた有望なスタートアップを見つけることが、VCの展開を左右する。中心的な役割を果たすリードVCとしてスタートアップ側から選ばれるためにも、努力を惜しむことはない。




















