
「みんな違って、みんないい」を実現するには?
「多様性」「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」という言葉は広く浸透し、私たちの暮らしや職場でも身近な存在となりました。とはいえ、「多様性」と一口に言っても人によってとらえ方は異なり、見る角度によってその意味も変わってきます。 本記事では、「異なる立場にいる人への理解を深める」という視点から、「多様性」への解像度を上げる本をピックアップしました。 多様さを受け入れ、誰もが生きやすい社会をつくるにはどうすればよいのか――あらためて一緒に考えてみませんか。
ライター・矢羽野晶子


SDGsの基本理念である「誰一人取り残さない」。「そんな社会をつくろうよ」と言われても、漠然としたイメージしか持てない人も多いかもしれません。
本書の著者がそれを「自分事」としてとらえるようになったのは、目の見えない子どもを持ったことがきっかけでした。生まれてきた我が子に視力がないことを知り、一時は絶望の淵をさまよったといいます。
自らの希望を見出すために、障害のある人やその家族、障害者雇用をしている経営者などに話を聞きに行くことにしました。その数のべ200人以上。彼らとの交流は著者に多くの発見をもたらし、物事の見方が変わる契機になりました。
人は皆、大なり小なり「弱さ(マイノリティ性)」を抱えて生きています。それを克服して「マジョリティ」に合わせようとするのではなく、弱さを持ったまま幸せに暮らせること。それこそが、誰にとっても生きやすい社会ではないかと投げかけます。
弱さを認めながら、本当の意味で生きやすい社会をどうつくっていくのか。そのヒントが、この本の中に詰まっています。


人は情報の8~9割を視覚から得ているそうですが、では、視覚障害者の人たちはどうやって情報を得ているのでしょうか。
本書によると、「目の見えない人の見ている世界」とは、視覚が失われた(引かれた)世界ではなく「視覚抜きで成立している世界」なのだといいます。例えば、4本脚の椅子から1本脚を引くとバランスを崩してしまいますが、3本の脚の位置を調節すれば、椅子は立つことができます。これと同じように、目の見えない人は聴覚や手足の使い方などを工夫しながら、独自のバランスで世界を「見て」いるのです。
「障害者」という言葉からは「手を差し伸べなければならない弱者」のような響きが感じられますが、本書を読むとそのイメージが覆されるはずです。まるでパラレルワールドを覗いたような、新鮮な驚きと発見があるでしょう。
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「この丸い円をケーキとします。3人で平等に食べられるように切って(線を引いて)ください」
犯罪を起こして少年院に送られる子どもたちは、この問いかけに固まったり、「等分」にならないいびつな線を引いたりする子が多いのだそうです。医療少年院で児童精神科医として勤務していた著者は、この事実に非常に驚きます。
彼らの多くは知的ハンディを抱えており、学力や認知力が低い。ゆえに「犯した罪を反省しなさい」と言っても、そもそも反省する力がなく、自分と向き合ったり被害者の気持ちを想像したりすることができないのです。
軽度の知的障害、境界知能(グレーゾーン)と呼ばれる子どもたちは、本来なら支援が必要な存在ですが、そこから漏れてしまっているのが現実です。
彼らがどのように学校や社会からドロップアウトして、犯罪に手を染めていくのか。彼らから世界はどう見えているのか。本書では著者が出会った少年たちのエピソードを散りばめながら、彼らの実情や必要な支援について訴えていきます。
本書を、彼らの境遇に目を向けるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
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ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害については、だいぶ社会でも認知されるようになってきました。とはいえ、悪気なく失礼なことを言う、ささいなことで怒り出す、仕事で単純ミスを連発する、約束をすっぽかす……といったことが頻繁にあるため、周りの人は「付き合うのが大変な人」という印象を持っているかもしれません。
彼らのそのような態度は、すべて脳の「特性」によって引き起こされています。例えば「悪気なく失礼なことを言う」のはASDの「コミュニケーション障害」という特性の影響。相手の言葉や表情を読み取る力が弱いため、そのような行動を取ってしまうのです。
本書ではASDとADHDの人が抱える「困りごと」に注目し、彼らから見えている世界と、それにどう接すればいいかを解説します。特性を知っておけば不用意にイライラすることが減るほか、お互いがより過ごしやすくなるのではないでしょうか。
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日本社会は多様化に向かっていますが、多くの移民を受け入れマイノリティとの共生が進む英国は、あらゆる面でその先を行っています。
本書は英国在住の作家・ブレイディみかこさんが綴る人気シリーズの2作目。アイルランド出身の配偶者と13歳になる息子さんとの日常を描いたエッセイ集ですが、何気ないエピソードからも多様な社会が抱える豊かさや複雑さが感じられます。
たとえば著者の配偶者は、家の前を通りかかった貧しい移民に、自分の不用品を譲ると約束します。ですが、息子さんは「それって、ごみをあげているのと同じでは」と悩みます。「リサイクル」という循環システムも、個人レベルでは「施す側」と「施しを受ける側」という構図ができてしまう。一律の「正解」が存在しないのも、多様な社会の難しさかもしれません。
その他のエピソードでは、LGBTQ、ポリティカルコレクトネス、貧困・移民問題などにも触れられています。ユーモアを交えながら軽いタッチで描かれているため、重いテーマも気負わず読み進められる本書。ぜひ多くの人に読んでほしい一冊です。
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性的マイノリティである著者が、「レズビアン」としての半生と、職場におけるLGBTQ施策についてまとめた一冊です。
LGBTQという言葉が定着し、性的マイノリティへの社会的認知も進みつつありますが、本書を読むと、当事者の生きづらさ、孤立感は想像以上に深いことがわかります。
そもそも性的指向や性自認は、多くの場合生まれつきであり、本人の意向とは関係ありません。生まれつきの特性であるにもかかわらず、そのせいでいじめに遭ったり精神疾患を発症したりと困難に見舞われることが多く、著者自身も過去にうつ病を患ったことがあるそうです。
本書を読むと、「自分の性的指向・性自認を隠さなければならない」という強迫観念や周囲のLGBTQに対する無理解が、生きづらさの大きな原因になっていると感じます。彼らが日常でどのような困難に直面して、どのような社会を望んでいるのか。そして、職場ではどのような施策を実践したらいいか。本書を通じてそのヒントを見つけてみませんか。
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認知症とは「認知機能が働きにくくなったために、生活上の問題が生じ、暮らしづらくなっている状態」。長く生きれば誰もがなる可能性があり、その意味では最も身近な“障害”だと言えるでしょう。
とはいえ、認知症の症状や出方には個人差があり、背景にあるトラブルも一人ひとり異なるといいます。また、家族や知人・友人に当事者がいないと、具体的な様子もわかりません。
本書では、認知症のある人の心身にどんな問題が起き、生活でどんな「困りごと」を抱えているかを、当事者の視点から伝えていく一冊です。「認知症世界」を旅するガイドブックのごとく、「旅のスケッチ」「旅行記」の形でユーモラスに紹介していきます。
そのひとつが、乗ると記憶がなくなってしまう「ミステリーバス」。認知症の代表的な障害に「記憶障害」がありますが、“ど忘れ”と違い、記憶障害は自分の行動そのものを忘れてしまうため、バスの停留所はおろか、行き先まで忘れてしまうのだそうです。
超高齢化社会において、誰もがいつかは認知症になる可能性があります。認知症のある人が生きている世界を知ることは、家族や知人、そして将来の自分のためにも重要なことだと言えるでしょう。
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