「語りかけ育児」とは、言語治療士である著者が開発した、子どもと1日30分しっかり向き合って、自分の言葉で子どもに語りかけるというやり方である。「語りかけ育児」によって育てられた子どもたちは、最初は言葉が遅れ気味であっても、言葉の発達において、みな目を見張るような進歩を遂げた。
著者は言葉の発達が遅れ気味の10か月児140人を選出し、「語りかけ育児」を行うグループと、何もしないグループに半数ずつ振り分けた。そして「語りかけ育児」グループの保護者には、1日30分語りかけを行うよう依頼した。すると4か月後には、こちらのグループはほかの正常発達の子どもたちに追いつく成長を見せたのだ。しかも、この差は年齢を重ねるごとに顕著になる。3歳では、何もしなかったグループの85%には遅れが見られたのに対し、「語りかけ育児」グループでは、ほぼ全員が正常水準もしくは年齢水準以上のレベルに達していた。
また7歳時点では、2つのグループ間の学力差も明確になった。7歳の全児童が受ける全国標準学力テストで、「語りかけ育児」グループは全員が到達水準目標かそれ以上に達していたのに対し、何もしなかったグループは3分の1が目標水準以下だった。何より、「語りかけ育児」を受けなかったグループは、テストを受けること自体が大きなストレスになっていたが、「語りかけ育児」グループは、テストを受けることを楽しんでいたのだ。このように、「語りかけ育児」は、すべての子どもの発達を促すだけでなく、学習するための基礎を作り、集中力や社会性を養うことにも役立つのである。さらには、子どもが温かい関係の中で大事にされていると感じ、自己肯定の感覚を育てられるのも、「語りかけ育児」の大事な目標である。
著者の提唱する「語りかけ」は、幼児の「聞く力」と「注意を向ける力」に着目し、親子の自然なかかわりの中で言葉の力を育むというものである。わざとらしい「教え込み」は一切行われない。正しい発音や言い回しを教え込もうとすることは、「自分が伝えようとした言葉は受け入れてもらえない」というメッセージを子どもに与えてしまうからだ。
発達初期の段階では、たとえ量は多くなくとも、子どもに適した質の刺激を与えることができれば、十分な効果が得られる。よって、仕事をもっていても、子どもと過ごす時間が短いことを負い目に感じる必要はない。1日30分で、子どもは大きく変わるはずだ。
本書では生まれたその日から4歳になるまで、月齢別に語りかけのポイントが紹介されている。ここでは、全月齢に共通するポイントを中心に紹介する。
全体を通して最も大切なのは、子どもと1対1で、
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