華やかで偉く見える「社長」は、実際は誰よりも孤独である。日々、経験したことのない問題に直面し、乗り越えた先にはさらなる難題が待ち構える。社長が孤独なのは、構造的にはまりやすい「落とし穴」があるからだ。
多くの会社は創業後1〜2年目に苦境に陥る。リリースした事業がコケた、創業メンバーが仲間割れ、アテにしていた資金調達が受けられなくなった、信頼していたメンバーが横領した……。問題は次から次に生じ、順調に進むことはない。多かれ少なかれ、どんな社長も「悩み」を抱えているのである。
会社の創業時やその後に降りかかる問題には、構造的な原因がある。それらを避けることは難しくても、「心構え」を知っておけば冷静に対処することができる。問題や失敗に対する「羅針盤」を持っておくことで、荒波は越えられるのである。
社長は「孤独」を抱えながら日々戦っている。その一方で、社長だからこそ得られるやりがいや、見ることのできる素晴らしい景色もある。
次章からは、「カネ」「ヒト」「組織」「プロダクト」の4つに分けて、スタートアップ経営で起こりがちな問題とその対処法について伝えていく。
社長の大きな悩みの種は「カネ」である。儲かっていても赤字でも、「お金の呪縛」はずっとついてまわる。
そんな社長にとって、お金が出ていく給料日は「しんどい日」である。創業期は特に限られた資金のなかでやりくりしなければならないため、給料支払いの日が近づくとゆううつになり、「最後の審判」のような気持ちになる。
給料のほかにも、外注費用や光熱費、社会保険、税金など、さまざまな支払いが生じる。創業初期の企業は、入金されたお金でギリギリ支払う「自転車操業」に陥ったり、売上が入る前に支払いが生じたりすることも少なくない。
利益がほとんど出ていなくても、月々の支払いや事業成長のための先行投資をする必要がある。すると手持ちの資金が「溶けて」なくなってしまうことも起きる。そうなると社長は金策に奔走してやるべきことに手が回らなくなり、挙げ句、会社の成長が止まったり人の離反が起きたりする。
こうした事態を防ぐには、不要なコストを極限まで抑え、資金計画と調達のサイクルを前倒しで進めるしかない。
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