世界標準のフィードバック
世界標準のフィードバック
部下の「本気」を引き出す外資流マネジメントの教科書
世界標準のフィードバック
出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2025年02月28日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

上司から部下へのフィードバックは難しい。「どう伝えれば相手のモチベーションを下げずに済むだろうか」「しっかり指摘したのに、なぜ行動を改善してくれないのだろう」と思い悩む人は多いはずだ。

本書の著者、安田雅彦氏は人事のプロフェッショナルだ。西友、グッチグループジャパン(現ケリングジャパン)、ジョンソン・エンド・ジョンソン、アストラゼネカ、ラッシュジャパンなどで人事全般の経験を積んだ後、現在は約30社の人事顧問を務める。

本書ではそんな安田氏が、数々の外資系企業での豊富な知見をもとに、部下を成長させるフィードバックのポイントをまとめている。

たとえば、効果的なフィードバックには「EEC」の3つの要素が必要であること、評価面接は7つのステップで進めると効果的であること、ネガティブなフィードバックは「事実に基づいて伝える」が鉄則であることなどだ。さらに、シーン別・部下のタイプ別の会話例や、個人の成長を促すだけでなく、チーム全体の成果を向上させるフィードバックのコツも惜しみなく紹介されている。あなたもきっと「こうすればよかったのか」と納得するだろう。

「部下の能力やモチベーションを引き出し、チームの成果を最大化したい」と願うすべてのリーダーにとって、本書は実践的な指南書となる。あなたのフィードバックが変われば、部下の表情が変わり、行動が変わり、成果も変わり始めるはずだ。

著者

安田雅彦(やすだ まさひこ)
株式会社 We Are The People 代表取締役/株式会社フライヤー社外取締役/ソーシャル経済メディア「NewsPicks」プロピッカー
1967年生まれ。1989年に南山大学を卒業後、西友にて人事採用・教育訓練を担当。子会社出向の後に同社を退職し、2001年よりグッチグループジャパン(現ケリングジャパン)にて人事企画・能力開発・事業部担当人事など人事部門全般を経験。2008年からはジョンソン・エンド・ジョンソンにてSenior HR Business Partnerを務め、組織人事や人事制度改定・導入、Talent Managementのフレーム運用、M&Aなどをリードした。2013年にアストラゼネカへ転じた後に、2015年5月よりラッシュジャパンにてHead of People(人事統括責任者・人事部長)を務める。2021年7月末日をもって同社を退職し、以後は自ら起業した株式会社 We Are The Peopleでの事業に専念。 現在、約30社のHRアドバイザー(人事顧問)を務める。著書に『自分の価値のつくりかた』(フォレスト出版)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    外資系企業では、フィードバックを「成長機会につながるギフト」と捉える。言いづらいことでも、相手の成長と改善を期待して、誠意と敬意をもって率直に伝えるべきだ。
  • 要点
    2
    評価面接で初めてネガティブ・フィードバックをすると、部下に大きな不安やストレスを与えるだけでなく、日々の業務改善や成長の機会を逸する可能性がある。日常的にフィードバックの時間を取り、改善のチャンスを与えよう。
  • 要点
    3
    低業績者に対する向き合い方は、マネジャーの信頼度を左右する。一般的な外資系企業では、期待と現実のギャップを伝えるフィードバックを2~3年と繰り返したうえで、社外での活躍を提案することになる。

要約

「世界標準のフィードバック」とは?

フィードバックの定義

ビジネスシーンにおける「フィードバック」とは、相手の行動やその結果に対する評価を伝え、成長や改善を後押しすることを指す。

フィードバック(feedback)は、英語のfeed(与える、供給する)とback(後ろ、戻る)の2つから成り立つ単語だ。このうちfeedには「食べ物を与える」という意味もある。フィードバックを伝える側は、相手の成長にとって栄養となる情報を意識的に提供し、受け取る側はそれを自らの成長の糧にするという関係になっているのだ。

フィードバックをする際は、たとえ言いづらい内容であっても、相手の成長と改善を願い、誠意と敬意をもって率直に伝える必要がある。実際、外資系企業では「このフィードバックは、あなたの成長機会につながるギフトである」と表現することがある。ギフトを受け取った側は、自らが思う自分の姿と他者から見た自分の姿のギャップに気付き、そのギャップを埋めることにより、さらに成長できるのだ。

フィードバックは「EEC」で
maroke/gettyimages

効果的なフィードバックには、事実(Example)、及ぼす効果・影響(Effect)、褒める・変更の提案(Congrats・Change)という3つの要素が含まれている。この構造は、3つの頭文字をとってEECと呼ばれる。

たとえば、職場改善レポートについて部下にフィードバックしたいときには、次のように3つの要素を意識して伝えると効果的だ。

ポジティブなフィードバックなら「先日のレポートは、伝えたい内容がうまくまとまっていて(Example)、スタッフのみんなも課題がクリアに理解できていた(Effect)ようです。素晴らしいですね。次回もあのスタイルでお願いします(Congrats)」といった伝え方。

一方、ネガティブなフィードバックなら「先日のレポートは、スライドだけの説明だったために(Example)、スタッフのみんなが正確に理解できていなくて、少し混乱していた(Effect)ようです。次回からは、資料を準備してはどうでしょうか(Change)」といった表現だ。

3つの要素が揃っているフィードバックは意外と少ないものだ。「スライドだけだったから、みんなわかってないみたいだぞ」と「変更の提案」が抜けたフィードバックだと、相手は改善の方向性がわからない。「次からは資料配って」とだけ伝えた場合には、「事実」と「及ぼす効果・影響」が抜けているため、相手をモヤモヤさせるだけだろう。

このように、EECが揃っていないフィードバックでは、相手は「はい・すみません」と返すだけになり、行動変容や成長につながりにくい。

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要約公開日 2025.04.28
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