暴力のないコミュニケーション
NVCとは
NVC(非暴力コミュニケーション)の第1の目的は、思いやりの通った他者とのつながりである。ここでいう思いやりとは、「与えるという行為を自らの意思で心から行う」ことを指す。我々が従うのは義務、懲罰、報酬、罪悪感、羞恥心などではなく、「人間本来の性質として、与え合うことに喜びを見出す」ことである。NVCはそうした他者に与えるという行為を通じて、人間本来のこの性質が表出されるようなつながりをつくるために役立つ。
しかし、「与えることへの喜びが人間の本来の姿だ」などと言われると、疑問に思う人も多いかもしれないし、世界には暴力が蔓延しているのに世間知らずだと感じる人もいる。ルワンダ、イスラエル、パレスチナといった、過酷な対立のある地域で仕事をしている著者は、それを承知のうえでなお、「暴力が人間本来の性質ではない」と説くのだ。
ワークショップの参加者に、過去24時間であなたの行為が誰かの人生に役立ったか、そしてその貢献に気づいた時、どんな気持ちになるかと問いかけると、誰もが笑顔になる。ほとんどの人間にとって、「他者に与えることは喜び」なのだ。
ではなぜ、世の中には暴力が蔓延しているのか。その原因は、我々の本質ではなく、「受けた教育にある」のだ。
英雄という教育

文明の開闢以降、人は「暴力を楽しむように教育されてきた」と言ったのは、神学者のウォルター・ウィンクである。理由は単純ではないが、それは神話とともに始まった。「人間を基本的に邪悪で身勝手な存在」とみなし、悪の勢力を制する「英雄的な勢力のあり方が善い生き方である」という価値観を持っていた。この物語に必要となるのが、「人間から人間性を奪い、モノとして扱ってしまう言語」なのである。
我々は他者について、「正しい」「悪い」「利他的」などと道徳的な判断や決めつけで捉えるような教育を受けている。こうした決めつけは「自分が何に『値するか』という正義の概念」に接続されている。悪い人は罰せられるべき、善い人は報酬を受けるのに値する、といった価値観に、我々はあまりにも長い間、支配されてきた。これが現在に至る暴力の核心だと考える。
こうした暴力と対照的に、「人間本来の姿に近づけるための思考、言語、コミュニケーションを1つに統合したもの」がNVCである。NVCは互いの幸福のために貢献する、楽しい生き方へと回帰するための手助けになるのだ。
何が対立を解きほぐすのか
評価をしない難しさ
NVCの問いは2つに集約される。「今この瞬間に、わたしたちの内面で何が息づいている・生き生きしているか」「人生をよりすばらしいものにするために、わたしたちに何ができるのか」。




















