お金の不安という幻想
お金の不安という幻想
一生働く時代で希望をつかむ8つの視点
著者
NEW
お金の不安という幻想
出版社
朝日新聞出版

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出版日
2025年10月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

お金は絶対的な基準なのだろうか――。本書を読むと、そう問い直さざるを得ない。

お金は大切だ。あればあるほどいいというのも疑いようがない。だからこそ誰もがお金を稼ごうとするし、私たちは「お金を稼ぐ人が偉い」「老後に備えて貯めなければ」と信じてきた。

しかし著者の田内学氏は、この価値観にこそ大きな落とし穴があると指摘する。といっても、お金を稼ぐ行為を批判しているわけでも、清貧を礼賛しているわけでもない。では、本書はどういった切り口で、お金という絶対的指標を疑問視するのだろうか。

本書が明らかにするのは、貨幣の本質である。お金は、それを支える「誰かの労働」が存在してこそ価値を持つ。私たちは、自分でできないことを、お金を払って誰かにしてもらっているのだ。つまりお金で買うという行為の向こう側には、必ず誰かの労働が隠れている。

そこから浮かび上がるのは、「お金が何より大切」という価値観が日本社会に招く暗い未来だ。老後に備えて2000万円を貯めたとしても、少子高齢化が進み、仕事を担ってくれる人がいなくなれば意味はない。老後2000万円問題や投資ブームといったトピックスは、こうした問題の本質を覆い隠してしまっている。

老後不安を抱え、資産を増やそうと努力している人は多いはずだ。だが、正しく現実を直視しないと、ただ心をすり減らすばかりである。本書を通して現実を見つめ、「お金の不安という幻想」を振り払ってこそ、適切に問題と向き合うことができるだろう。老後を見据えて貯蓄や投資に励んでいる人に、ぜひ読んでほしい。

著者

田内学(たうち まなぶ)
社会的金融教育家。お金の向こう研究所代表。2003年東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。2019年に退職し、執筆・講演活動を通じて「お金と社会の関係」を伝える活動を始める。主な著者に『お金のむこうに人がいる』(ダイヤモンド社)があるほか、『きみのお金は誰のため』(東洋経済新報社)は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」で総合グランプリを獲得した。

本書の要点

  • 要点
    1
    自分のモノサシを持てば、不安を煽る情報に動じなくなる。
  • 要点
    2
    社会を支える仕事であっても必ずしも高収入とは限らないため、老後不安が強まるほど人々は稼げる職種へと流れていき、人手不足が深刻化する。「お金を稼ぐ人が偉い」という空気が、さらにその流れを加速させている。
  • 要点
    3
    お金があっても、サービスを提供する人がいなければ何も得られない。私たちが今取り組むべきなのは、お金を増やすことではなく、人手不足を解消することだ。

要約

焦りを生む空気からどう抜け出すのか?

「みんな、やっているよ」になぜ焦る?

「みんな、やっているよ」

この言葉に人は動揺する。私たちはいつも「自分も始めなければ」「乗り遅れたらどうしよう」という焦りに背中を押されている。

近年はとりわけ、投資の領域でその圧力が強い。スマホを見れば「みんながやっている投資信託ランキング」「始めないと手遅れになる」といった広告が途切れなく表示され、気づけば焦りが膨らんでいく。

焦りを生む空気から抜け出す鍵の一つは、「自分だけのモノサシ」を持つことだ。

たとえば、いつも1000円のメロンジュースがあるとしよう。高くて手が出なかったが、セールで500円になっていたので買った。ところが翌日には300円に下がっていたとする。

このとき、自分は得をしたのか損をしたのか。判断は人それぞれだが、もしそのジュースがおいしくなければ、どんな価格であれ「損した」と感じるだろう。結局のところ、お金の損得より自分の満足感のほうが大事なのだ。

モノを買わせようとする企業
frantic00/gettyimages

私たちにとっての価値とは「自分が満足感を得られるかどうか」であるはずだ。だが現実には、値段や損得にばかり気を取られてしまう。その背景には社会構造の変化がある。

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要約公開日 2025.12.10
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