【必読ポイント!】 「宇宙の常識」を疑い、アップデートする
居酒屋の問いかけ
本書は著者が居酒屋でかけられた次のような言葉に端を発している。
「宇宙に〝始まりがあった〟なんて、どうして考えるんですか?」
この質問は単に、どうやって宇宙が始まったのか、「ビッグバンが正しい理由」を聞いているのではない。そもそも宇宙に「始まり」があると考えたのはなぜなのか。なぜその考えが必要になったのか。その「結論」に至るまでの「道筋」を聞いているのだ。
情報があふれる現代では、結論だけを知ることは簡単だ。しかし、その過程にあったさまざまな科学者たちの試行錯誤や議論を知ることで、平面的だった世界と知識に奥行きが増す。暗記するだけだった宇宙の事象が、「夜空を見上げてしまうほどワクワクする」対象へと変貌する。
本書は東京大学宇宙線研究所に勤務する研究者である著者が、宇宙をめぐるさまざまな「素朴な疑問」を切り口に、科学の進展が現在の宇宙像にたどり着くまでの「道筋」を捉え直すことで、単なる暗記事項ではない「自分でそこに辿りついた」実感のともなった宇宙への理解を促す試みである。
宇宙に「始まり」はあるのか

「宇宙には始まりがあり、今も膨張している」という宇宙観が広く受け入れられるようになったのは、実はそれほど昔のことではない。20世紀半ば頃まで、多くの物理学者は宇宙を「静的で変化しないもの」と考えていた。しかしそのモデルでは、私たちを形づくる元素がどこから生まれたのかを説明できなかった。
宇宙の物質の約75%は水素、約25%はヘリウムで、他の元素はごくわずかである。物理学者ジョージ・ガモフは、宇宙はかつて超高温・高密度の「火の玉」のような状態にあり、その中で水素とヘリウムが生まれたと考えた。実際に物理法則にもとづいて火の玉からできる元素の割合を計算すると、観測値と一致していることがわかった。




















