千葉ジェッツの奇跡

Bリーグ集客ナンバー1クラブの秘密
未読
千葉ジェッツの奇跡
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Bリーグ集客ナンバー1クラブの秘密
未読
千葉ジェッツの奇跡
出版社
出版日
2017年09月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

2016年、Bリーグがついに幕を開けた。日本における男子プロバスケットボール統一トップリーグの誕生である。

なかでも屈指の人気を誇るのが、千葉ジェッツふなばし(以下、ジェッツ)だ。1試合の平均観客動員数ならびに年間観客動員数で、最多の数字を叩き出したチームであり、その勢いは2017年の天皇杯優勝という成績にもあらわれている。

だがジェッツの歩んできた道のりは、けっして平坦なものではない。著者がジェッツの経営に関わりはじめた2011年頃、クラブは消滅の危機にひんしていた。その暗黒期を思えば、現在の好調は「奇跡」のように映る。

座して待つだけの者に、幸運の女神は微笑まないものだ。この「奇跡」を短い期間で実現するため、著者がじつにさまざまな施策を行なってきた。かつてフランスの細菌学者パスツールが語ったように、「チャンスは準備された心に降り立つ」。ジェッツ躍進の道のりからは、多くの教訓が学び取れるだろう。バスケットボールファンのみならず、組織運営に携わる人にも読んでほしい一冊だ。

なお2017-18シーズンから著者は、ジェッツ運営だけでなく、Bリーグのバイスチェアマンとしても活躍することになったという。ジェッツを躍進させたその手腕が、日本のトップリーグをいかに変えていくのか。今後の動向にも注目したい。

著者

島田 慎二 (しまだ しんじ)
1970年11月5日、新潟県生まれ。92年、日本大学法学部卒業後、マップインターナショナル(現・エイチ・アイ・エス)入社。95年、ウエストシップ設立。2001年、ハルインターナショナル設立。10年、全株式を売却。同年、リカオン設立。12年、ASPE(千葉ジェッツ運営会社)代表取締役就任。15年、ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ理事就任。2015‐16シーズンにおいて、1試合の観客動員数がNBL最多の6835人を記録、年間観客動員数も初めて10万人を突破する。Bリーグ初年度の16‐17シーズンでは、天皇杯で日本一を達成。1試合の再考観客動員数が7327人、年間観客動員数が13万5097人と日本一を更新し、人気・実力ともにトップチームに押し上げる。17年5月、Bリーグバイスチェアマン就任を発表。

本書の要点

  • 要点
    1
    困難を乗り越えていくためには、まず組織としてルールや役割分担を明確にしなければならない。
  • 要点
    2
    経営者が夢を語るのは、しっかりお金を稼げるようになってからにするべきである。
  • 要点
    3
    ビジネスは2年連続で順調にいけば波に乗る。そこでの成功体験がスタッフ育成のカギになる。
  • 要点
    4
    スタッフ個人の成長を後回しにしてしまったら、組織全体の成長はありえない。
  • 要点
    5
    ブレない理念があるからこそ、感情論を排して建設的に物事を進められるようになる。

要約

ジェッツの再建

「このままでは確実につぶれる」
09910190/iStock/Thinkstock

著者は20代から会社経営をしていたが、もともとバスケットボールとはまったくの無縁だった。そんな彼がバスケットボール、そして千葉ジェッツ(現・千葉ジェッツふなばし、以下ジェッツ)というチームと関わるようになったのは、クラブの道永幸治オーナー(現・取締役会長)から「クラブ経営のアドバイザーという立場で全体の動きを見てほしい」と言われたことがきっかけだ。

当初は気軽な立場で参加していた著者だが、若い経営者たちは経営のノウハウをもっておらず、夢を語るばかり。これではうまくいくはずもない。思わず道永氏に対して、「絶対に手を引くべきです。間違いなく成功しません」と言ったほどだ。事実、クラブ経営はうまくいっていなかった。2011年に行なわれた開幕戦では空席が目立ち、当然ながら売り上げも芳しくない。資金も枯渇しはじめた。

オーナー、経営陣、スタッフに共通していたのは、とにかくバスケットボールが好きということだった。だから彼らは今後、ファンの数さえ増えればクラブ経営も安定すると考えていた。しかし現実はそこまで簡単ではない。困った道永氏は著者に対し、それまでの傍観者的なアドバイザーではなく、もっとしっかりと経営に携わってほしいと頼んできた。

当時とくにこれといった仕事もしていなかった著者は、かつて世話になった人物からの依頼ということもあり、ジェッツ経営のコンサルタントを引き受けることにした。そしてワード約40枚分の再建計画書を作成し、このままでは確実につぶれると“警告”した。

これでコンサルタントとしての役割は果たしたはずだった。

なぜか再建にのめりこむ
Design Pics/Thinkstock

「戦える組織になっていない」――それが当時のジェッツであった。再建計画のなかで著者は、まず会社としての理念を作るべきだと説いた。数々の困難を乗り越えていくためには、ルールや役割分担を明確にしなければならないからだ。

この頃の著者の仕事は、週に一度オフィスに出向いて、再建計画にもとづいた組織運営が行なわれているかチェックすることだった。だがこつこつと改善していっても、すぐにクラブの状況が上向くわけではない。もどかしさを感じた著者は、身を引くタイミングを探りながらも、気づけば週に何度もオフィスに向かうようになっていた。そしてスタッフ一人ひとりの役割と責任を配分し、言い訳ができない体制づくりに取り組んだ。

また、ジェッツを再建するために、著者はあちこちに分散した株の買い戻しも行なった。当時ジェッツの株は法人を含めて40数カ所に分散しており、経営陣が理念にもとづいてビジネスをしようにも、主導権を発揮できない状況にあった。

本腰を入れて会社を立て直すのであれば、徹底的に仕組みを変えなければならない。無価値同然だったジェッツの株を、著者は売買当初の値段で買い取り、道永氏に譲渡した。株をなるべく一箇所に集約させることで、経営改革のスピードを上げることが目的だ。苦労の末、無事に道永氏が筆頭株主となり、著者とジェッツの関係も深まっていった。

夢を語る前に金を集めよ

経営陣たちに評価された著者は、当時のクラブ代表から「自分が社長を務めているよりも、島田さんが社長になったほうがいい」と告げられ、2012年2月1日、ジェッツの運営会社である株式会社ASPE(現・千葉ジェッツふなばし)の代表取締役に就任することにした。

ただこのとき、ジェッツには乗り越えなければならない壁が2つあった。ひとつは「財政難」、もうひとつは「ガバナンスの欠如」である。

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要約公開日 2018.01.25
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