できるリーダーが意思決定の前に考えること
できるリーダーが意思決定の前に考えること
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できるリーダーが意思決定の前に考えること
出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2025年08月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

経営者の最も重要な仕事は「意思決定」である。経営判断という言葉があるように、会社の進むべき道を定め、事業を継続・発展させていくことが求められる。

しかし、刻々と変化する環境の中で重要な判断を下すことには、常にリスクが伴う。不確定要素ばかりの中で、いかに質の高い意思決定を行うかは、経営者に課された命題であると言っていい。

本書の著者・内田和成氏は、ボストンコンサルティンググループの日本代表を務めた経営コンサルタントだ。その後は早稲田大学ビジネススクールなどで教鞭を取り、“ビジネスリーダーの卵”たちに意思決定論、競争戦略論、リーダーシップ論を教えてきた。『仮説思考』『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』などの著作でも知られている。

本書は、そんな内田氏がビジネスの意思決定に欠かせない手法や考え方を、やさしく解説した一冊である。経済性分析、ゲーム理論、行動経済学など、ビジネスパーソンとして押さえておくべき基礎知識が網羅されている。そのため、たとえ「意思決定」に直接関わらない立場であっても、ビジネス基礎力を高めるために有用だ。

また、本書は著者が実際に行っていたビジネススクールでの講義をもとに構成されており、ケーススタディやクイズが豊富に盛り込まれている。読者はまるで、“内田先生”の授業を受けているかのような臨場感で読み進めることができるだろう。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

内田和成(うちだ かずなり)
東京大学工学部卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。
日本航空を経て、ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表。2006年には「世界の有力コンサルタント25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出された。2006年から2022年3月まで早稲田大学教授。ビジネススクールで意思決定論、競争戦略論、リーダーシップ論を教えた。主な著書に『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』(以上、東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』『リーダーの戦い方』(以上、日本経済新聞出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ビジネスにおける意思決定では「利益の最大化」という視点が欠かせない。
  • 要点
    2
    不確実性のマネジメントにおいて有効なのが「シナリオプランニング」である。社会の変化を引き起こす要因から「不確実なもの」を洗い出し、「万が一」を想定する手法である。
  • 要点
    3
    人間は感情の生き物で、合理的にできていない。合理的な判断が裏目に出ることもある。
  • 要点
    4
    人は「99%」というような数字に惑わされやすい。経営判断の際は、提示されたデータの数字を一旦疑って見てみる姿勢が必要だ。

要約

数値化の基礎

経済性分析:利益の最大化を目指す
Shutter2U/gettyimages

ビジネスにおける意思決定で欠かせないのは、「利益をどのくらい上げられるか」という視点だ。利益を最大化するためには、どのような選択をすればいいのだろうか。次の事例を見てみよう。

スタートアップ企業の経営者である3人(根来君、山田君、谷口さん)が、あなたの元に「運転資金を貸してほしい」とやってきた。彼らは一律に「200万円を貸してほしい」とのことだったが、金利はそれぞれ違っていた。根来さんは年10%、山田君は年15%、そして谷口さんは年20%であった。

一方で、あなたは400万円しか持っていないため、貸せるのは2人までである。そこに金融業を営む内田君が「お金が足りないなら貸してもいいよ。ただし、金利は年17%ね」と言ってきた。さて、どうすればいいだろうか?

まず考えつくのは、内田君から200万円を借りて、3人全員に200万円ずつ貸してあげることだ。しかし「利益の最大化」という視点から言うと、それは正しいとは言えない。

この問題の正解を得るためには、次の順番で考える必要がある。

(1)手元の400万円で最大利益を上げる選択は何か

この答えは、「利率の高い人から順に貸していくこと」。つまり、年利の大きい谷口さんと山田君に200万円ずつ貸し、根来君には諦めてもらう。

(2)内田君にお金を借りてまで資金提供すべきか否か

谷口さん・山田君からのリターンは合計70万円だ。さらに内田君から200万円借りて根来君に貸すと、プラスで20万円のリターンが見込める。しかし、内田君への返済金が34万円あるため、根来君に貸した場合の最終利益は56万円となる。

谷口さん・山田君だけに貸していた場合のリターンが70万円だと考えると、内田君からお金を借りてまで根来君に貸すと損してしまうため、「利益の最大化」を目指すなら資金提供すべきではない。

【必読ポイント!】不確実性のマネジメント

ゲーム理論:ライバルの出方を想像する

意思決定の際には、競争相手の動向もチェックしなければならない。「これは売れる!」と商品を大々的に売り出したとしても、相手の商品のほうが魅力的であれば、お客さんはそちらを購入するからだ。

では、次の事例を考えてみよう。

牛丼チェーン業界でライバル関係にある、吉野家、松屋、すき家。3社にはそれぞれ特徴があり、老舗の吉野家に対し、松屋はカレーや定食などバラエティに富んだメニューを展開。そしてすき家は、牛丼の具を工夫するなどで差別化をしてきた。

さて、ここで問題だ。すき家と松屋が相次いで牛丼の値下げをした。吉野家は、この2社に合わせて値下げをすべきだろうか? 経営者になったつもりで考えてみよう。

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要約公開日 2025.11.06
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