ビジネスモデル全史

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ビジネスモデル全史
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版日
2014年09月15日
評点
総合
4.7
明瞭性
5.0
革新性
4.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

前評判も高く待ちに待った読者も多いだろう本書『ビジネスモデル全史』は、発売直後から圧倒的な支持を集め、各書店でビジネス書ランキング1位を獲得している。その著者は、2013年に出版されビジネス書アワード2冠に輝いた『経営戦略全史』を著わした、三谷宏治氏だ。

私だけでなく読者の方の多くは「ビジネスモデル」というテーマに興味をもっているのではないだろうか。ビジネスモデルの奥深さというものは、それを観察して理解を深めることで実感できるものだ。すなわち、そのサービスが誰にどのような価値を与え、そのために何を調達・提供し、お金をどこからどのようなタイミングで取るのか、ということを感じ取ることで、創業者や経営者の思想が垣間見れる点に興味を引かれることだろう。特に近年のWebサービスには、一見無料に見えるが巧妙なカラクリで収益を上げるしたたかなサービスが多く、興味深いものが多い。

そのような壮大なテーマを、イタリア・メディチ家や三井越後屋などの歴史的なビジネスモデル革新まで含めて一冊で概観できる本書は、『経営戦略全史』と同等かそれ以上の価値がある。『経営戦略全史』は経営に携わる方に最もフィットする印象を持ったが、本書は起業検討中の方、ベンチャー経営者、新規事業を企画する方にとって「必読」と言えるものだ。その他にも著名な革新的企業のビジネスモデルや創業ストーリーに興味を持つ方であれば、すべからく楽しめる書であり、あらゆるビジネスパーソンに豊かな時間を提供してくれることに違いない。

ライター画像
大賀康史

著者

三谷 宏治
K.I.T.虎ノ門大学院 教授。早稲田大学ビジネススクール・グロービス経営大学院 客員教授。1964年大阪生まれ、福井育ち。東京大学理学部物理学科卒業。INSEAD MBA修了。ボストン コンサルティング グループ勤務ののち、アクセンチュア勤務。03~06年にはアクセンチュア 戦略グループの統括を務める。現在、社会人教育の他、大学・高校・中学・小学校での子ども・保護者・教員向け教育を中心に活動中。
永平寺ふるさと大使、放課後NPO アフタースクール、NPO法人3Keys理事。
『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)『ハカる考動学』『超図解 全思考法カタログ』(ディスカヴァー・トゥエンティ―ワン)など著書多数。『経営戦略全史』は「ビジネス書大賞2014経営書部門」で大賞を、「ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2013」では第1位を受賞した。

本書の要点

  • 要点
    1
    ビジネスモデル革新の歴史は、はるか昔から1990年頃までの第1期、1991年頃から2001年までの第2期、2002年以降の第3期に分けられる。
  • 要点
    2
    ビジネスモデルという言葉が多く語られなかった第1期においても、三井越後屋、ジレット、ゼロックスなどの革新的なビジネスモデル革新は多くなされていた。
  • 要点
    3
    ヒト・モノ・カネのクラウド化と、メイカーズの4種の神器により、近年起業のハードルは大幅に下がっており、第三次産業革命が起こりつつあると言える。

要約

序章

IvelinRadkov/iStock/Thinkstock
はじめに

ビジネスモデル全史という書名には2つの意味が込められている。ひとつ目は「ビジネスモデル」の「ビジネス用語・経営戦略用語」としての歴史であり、およそ3期に分けて語られる。

1期目は、はるか昔から1990年頃までの、言葉としてあまり注目は浴びてこなかった時期だ。実はその時期に「ビジネスモデル」で多くのイノベーションが起きていた。

2期目は1991年頃から2001年までである。インターネットの急激な普及に伴い勃興した、ネットビジネスの説明のために、多くの起業家や投資家、メディアなどが「ビジネスモデル」という言葉を使っていた。2001年のネットバブル崩壊でその言葉は陳腐化するように思われたが、見事に復活を遂げる。

その復活は、3期目の2002年以降になされたもので、「競争優位の持続性」や「イノベーションの起こし方」への回答として、語られるようになったのである。

書名のもうひとつの意味は、ビジネスモデル革新の歴史である。ビジネスモデルは『誰かに対してある価値を、どこからか何かを調達・創造し、提供して、対価を得るもの』を表す。実際にすべての強い企業は、独自のビジネスモデルを持っているものだ。以降ではビジネスモデル革新の歴史について、象徴的な出来事を概観していきたい。

【必読ポイント!】近代ビジネスモデルの創生期

三井越後屋 ~革新的呉服店と公金両替商~

日本におけるビジネスモデル史上最大級のイノベーションは、江戸時代前期の1673年に始まる。その舞台となる越後屋(現在の三越)は、三井家の4男4女の末子、高利(たかとし)が51歳のときに創業される。越後屋は老舗呉服店に対抗するため、「現金掛け値なし」と謳う。つまり、つけ払いを止めるとともに、顧客によって変えていた価格を統一する定価販売を始めたのだ。

他にも越後屋は訪問販売中心の呉服店の商売を店頭販売だけにした。さらに、呉服店では1反(通常幅36cm長さ12m)ごとの販売単位だったものを、切り売りすることにした。それだけではない。加えて、イージーメイドである「仕立て売り」も始めたのである。

1683年に両替商を始め、金貨中心の江戸と銀貨中心の大阪との間の両替コストを抑制し、幕府にも「公金為替」の仕組みが受け容れられる。

三井家はその後、今でいう持ち株会社をつくり、強固なグループを確立して三井財閥を形成するに至るのである。

ジレット ~替え刃モデル~
Thomas Northcut/Digital Vision/Thinkstock

キング・ジレットは発明一家の子どもとして育ち、行商人をしながら特許を取っていくような人物だった。彼は飲料の王冠メーカーで営業をしていた経験から、一度使ったら捨てられてしまうものこそがリピーターを生むという考えに至り、その発明をするべく思案をしていた。1895年に、ホテルで剃刀を研いでいた際に、刃を薄い鋼鉄にして安くすれば、使い捨てにできるとひらめくのである。

アイデアに興奮するジレットだったが、鋼鉄を薄く延ばす技術に苦戦し、その実現には6年を要することになる。苦難の末に実現した「替え刃式T型剃刀」は初年度の1903年に51個、替え刃168枚しか売れなかったが、

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要約公開日 2014.11.14
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