なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのかの表紙

なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか

“ゆるい職場”時代の人材育成の科学


本書の要点

  • 「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないか」という「キャリア不安」を抱いた若者たちは、成長実感の得にくい「ゆるい職場」を去るという選択をすることもある。

  • 若手が成長し活躍できる職場をつくるためには、「心理的安全性」と「キャリア安全性」という2つの要素に注目するとよい。

  • 調査からは「社外活動をしている若手は、自分の会社が好き」という傾向が見られた。優秀な人材は、無理に囲い込むのではなく、積極的に社外活動をさせるべきだ。

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若者と職場環境の変化

若者を理解するために知っておきたい2つのこと

若手社員を取り巻く状況を理解するにあたり、「Z世代は……」「最近の若者は……」といった「若者論」はもはや意味をなさない。その理由は2つある。まず、若者が多様化・多極化しているからだ。管理職世代とほとんど変わらない感覚の若手もいれば、全く違う若手もいる。もう1つの理由は、近年、若者以上に職場が変わったからだ。2010年代中盤以降、若者雇用促進法や働き方改革関連法により、労働時間減少や若手の有給休暇取得率上昇といった変化が生じた。社会や法律の要請により、現代の若手を取り巻く職場環境は全体的に「ゆるい職場」になりつつある。

「ゆるい職場」を去る若者たち

Yue_/gettyimages

職場環境の改善に伴い、若手の自社に対する認識は好転している。例えば、「休みがとりやすい」に対して「あてはまる」と回答した大手企業新入社員の割合は38.0%(1999-2004年卒)から61.3%(2019-2021年卒)へと大きく向上した。また、初職の会社への評価点(10点満点)は入社年を追うごとに肯定的になっている。その一方で、若手の離職率は、労働環境改善が特に進んだ大手企業において、2009年卒の20.5%から2019年卒の25.3%へと上昇している。なぜ労働環境が改善したのに離職率が下がらないのか。その答えは「会社に不満はないけど不安があるから」だ。調査結果を見てみよう。「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」という質問に対して「強くそう思う」「そう思う」と回答した者(=キャリア不安を抱く者)の割合は、現在の新入社員の48.9%に及んでいる。結果として「職場がゆるいので辞めたい」という決断に至るのだ。

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若手が活躍できる職場の2つの要素

心理的安全性とキャリア安全性

若手が成長し活躍できる新しい時代の職場に必要な要素は何か。

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要約公開日 2024.03.07
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