世にもあいまいなことばの秘密

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世にもあいまいなことばの秘密
著者
出版社
出版日
2023年12月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

毎日何気なく使っている「言葉」。考えれば考えるほど、言葉というのは不思議なものだ。同じ単語を使っていても、相手が考える意味と自分が考える意味は違うかもしれない。同じ文を見たときに、相手と自分では別の解釈をしているかもしれない。同じ「日本語」という言語を使っているはずなのに、毎日そこかしこで誤解やすれ違いが生じ、言葉の解釈をめぐって争いが起きることさえある。

言語学者であり作家でもある川添愛氏は、言語学的な立場からこう言う。言葉のほとんどは曖昧で、複数の解釈を持ちうる、と。しかし、多くの人は、自分の解釈が、唯一の正解だと思い込む。他の解釈の可能性を指摘されたときに、「そんな解釈もあるのか」と思えれば争わなくてすむものを、「普通はそうは考えない」と自分の正しさを主張したくなってしまう。

本書には、言葉のすれ違いの事例が多数登場する。その度に自分の解釈が頭をよぎるが、「言語学的には」というフィルターを通して考えると、他の解釈があることも受け入れやすい。本書の言葉を借りれば、自分と相手の「頭の中の辞書」は違って当然なのだ。言葉の解釈で争うよりも、曖昧さが生まれやすい状況を知っておこうとしたほうが、効果的なコミュニケーションを取れるようになるはずだ。

曖昧さを通して考える言葉の世界は、不思議な魅力に溢れている。複雑な世界を、限られた音や文字で表現しようとするのだから、曖昧さが生まれるのは当然なのかもしれない。そんなふうに考えていくと、曖昧さにロマンすら感じられるようになってしまう。

ライター画像
池田友美

著者

川添愛(かわぞえ あい)
1973年生まれ。言語学者、作家。九州大学文学部卒業、同大大学院にて博士(文学)取得。2008年、津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、12年から16年まで国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理。著書に『白と黒のとびら——オートマトンと形式言語をめぐる冒険』『自動人形の城——人工知能の意図理解をめぐる物語』『言語学バーリ・トゥード:Round 1——AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか』(東京大学出版会)『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット——人工知能から考える「人と言葉」』(朝日出版社)『ふだん使いの言語学——「ことばの基礎力」を鍛えるヒント』(新潮選書)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    言葉の解釈の違いから対立が起こる場面が少なくない。しかし、言語学の立場から眺めれば、言葉のほとんどは曖昧で、複数の解釈を持ちうる。言葉を多面的に見る視点を養い、言葉のすれ違いを察知し、対処できるようにしよう。
  • 要点
    2
    言葉にどのようなイメージを持つかは、世代差や個人差がある。自分と他人の「頭の中の辞書」は異なるということは意識しておきたい。
  • 要点
    3
    言語の曖昧さを示す有名な例文に「頭が赤い魚を食べる猫」というものがある。これには5つの解釈が可能だ。

要約

世にも曖昧な言葉たち

自分の解釈が唯一無二の正解か?
treety/gettyimages

言語学者であり作家でもある著者であっても、言葉に関する失敗は後を絶たない。以前著者は、猛暑が続いていた夏の日、「明日はだいぶいいよ。マイナス6度だって」と言って知人を驚かせてしまったことがある。著者は今日と比べて6度低いというつもりで言ったのだが、知人は氷点下6度だと思ったそうだ。

こうした誤解は笑って済ませることができるが、世の中にはそうもいかない事例がある。SNSでは、言葉の解釈の違いから、対立が起こる場面が少なくない。

たとえば、ニュース記事の見出しに「勉強しない大学生 その実態を探る」という表現があったら、人々の間で解釈が分かれる。「大学生がみな勉強しないなんて、勝手に決めつけないでほしい」と言う人もいれば、「大学生がみな勉強しないなんて書かれてないし、一部の大学生に限った話でしょ」と反論する人もいる。そこでお互いに相手のような解釈もあるかもしれないと認められればいいのだが、どちらも「自分が正しい」と言って譲らないケースが多いようだ。

「勉強しない大学生」という表現は、言語学的に考えれば、修飾の関係をどう捉えるかによって、2通りの解釈が可能な表現である。「勉強をしない、大学生というもの」と考えれば、大学生全般が勉強しないということになるし、「大学生のうち、勉強をしない人たち」であれば、勉強しないのは大学生の一部ということになる。

言語学の立場から眺めれば、言葉のほとんどは曖昧で、複数の解釈を持ちうる。しかし、多くの人は自分の頭に最初に浮かんだものを「たった一つの正しい解釈」と思い込んでしまいがちだ。言葉のすれ違いを察知し、対処できるようになるためには、言葉を多面的に見る必要がある。

【必読ポイント!】 「OKです」「結構です」——辞書に載っている曖昧さ

「微妙な味」とは?——肯定的な語義と否定的な語義

著者が知人に自分の料理を食べてもらったとき、「味はどう?」と尋ねると、「微妙」という答えが返ってきた。著者は「いまいち良くない」という意味だと受け取ってがっかりしたのだが、話を聞いてみると、その人は「良い味だ」という意味で「微妙」と言ったのだそうだ。

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要約公開日 2024.04.29
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