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悪いことはなぜ楽しいのか


本書の要点

  • 自己中心的な人が楽しそうなのは、それが人間の本能に基づく行動だからだ。

  • ホッブズによると、絶対的な強者がいない世界では、生き残りをかけた殺し合いが起こる。そのような争いを防ぐために、私たちは権力に服従し、ルールを守って生活する。

  • 私たちは、ゲームで強敵を倒すとき、そのキャラクターが悶絶しながら死ぬことを望む。自分の利益にならないのに他者を苦しめたいと思うのは、悪意の衝動に駆られているからだ。

  • ルールを変えるため、時に「反逆」が起こるが、そこには予測不可能性がつきまとう。これを制御するのが仲間との「約束」だ。

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【必読ポイント!】 自己チューなのはなぜ楽しいのか

自己中は生物の本能

自己中心的な人(以下、自己中)はいつも楽しそうだ。それはなぜだろうか。大なり小なり、人は誰しも自己中だ。人生の主人公は自分であり、自分が楽しいと思うこと、自分にとって価値があることを追い求める。そしてどんな生物も、自分の生存を何より優先する。生き残るために食べ、縄張りを作り、外敵と戦う。これらの行動はすべて自分中心、自己中である。つまり自己中な振る舞いは生物の本能のようなものなのだ。そう考えれば、自己中が楽しい理由は「それが生物の本能だから」という単純明快な答えとなる。

「平等」の本当の意味

Xavier Lorenzo/gettyimages

倫理学の世界では、自己中をエゴイズムという概念で説明する。エゴイズムの基本的な考え方は「常に自分を中心に考え、他者よりも自分を優先させること」だ。近世イギリスの哲学者、トマス・ホッブズは人間の本質をエゴイズムのうちに見いだした。ホッブズは人間を「生まれながらに平等な存在である」とする。ここでいう平等とは、「平等な権利を持っている」ということではない。「同じくらいの力を持っている」、つまり「我々の体力や知性には個体差があるが、大した違いではない」という意味だ。すべての人間が平等な世界では、絶対的な強者や弱者はいない。つまり、争いが起こったとしても、その戦いは拮抗する。どれだけ体力や知性に優れた人でも勝ち続けることはできず、誰かに殺されてしまう可能性もある。

平等な私たちが殺し合わずに済む方法

絶対的な強者のいない戦いは、明確な勝ち負けがつかず、終わりのないものとなる。こうした状態をホッブズは「万人の万人に対する闘争」と呼んだ。万人の万人に対する闘争は、猜疑心により、自分が殺されないために先手を打って他の人を殺すことになる。すべての人が自己中だと、人々は争い合い、殺し合うことになってしまう。この問題はどのように解決されるべきか。

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要約公開日 2024.09.08
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