「世界一賢い生活者」の誕生
購買行動モデルの本格的な変化

本書のいう「世界一賢い生活者」とは、「AIと一心同体になることで世界中の情報から『自分だけの最適解』を導き出せるようになった生活者」を指す。現代の無限に近い情報量のなかで、瞬時に最適解を教えてくれるのがAIだ。商品に他社より優れた点があれば、「勝手に生活者に推薦してくれる」。
生活者はAIの選択に頼り、AIのフィルターを通してのみ情報を受け取るようになっていく。そうなると、企業からダイレクトに情報を得ることはなくなり、「興味関心ない生活者」にアプローチするのはますます困難になる。「購買決定ギリギリまでAIが関与する」ため、認知の獲得が不要となるどころか、むしろ生活者にとってはノイズにすらなり得るのである。
AIによる3〜5個のオススメに入らないと、いかに知名度があっても、商品が素晴らしくても、「生活者個人にとって、あなたのブランドは『ないもの』になる」。AIなりの優先順位がブラックボックスになっているなかで、AIに選ばれつづける努力をする必要があるのだ。
そのあまりに険しい道で大きな希望となるのが、ファンの存在である。推しがある人は、AIが他を推奨してきても、指名顧客となってくれる。そこには、共感や愛着、信頼、応援といった感情的つながりがあり、生涯顧客となる可能性も秘められている。そうした「AIの論理を超えた『関係性』こそが、AI時代における企業の生命線」となるのだ。
過酷なAIルート
AIルートのTRUST
この状況でのマーケティングの切り口は、「AIルート」と「ファンルート」という言葉で本書では整理されている。
たくさんの商品、サービスからAIに選ばれるためのAIルートは修羅の道だが、攻略法はある。それが「TRUSTとSENSEという2つのフレームワーク」だ。これは、AIによって機能や評判をもとに3〜5個の候補に絞り込まれる第一次選考と、そこから生活者の感情や感覚によって選定される第二次選考、それぞれへの対策を指す。
第一次選考は、「最適な商品を世界中から探し出してこようとしちゃう」プロセスだが、AI相手にいろいろと壁打ちしてみることで、「AIが商品を選択するときの優先順位」が見えてきた。要望に沿った商品を機能などを参考に網羅的に調べて、信頼に値する評判を得ているかをみる。そして、機能に信頼性があるかのエビデンスを集め、差別化要素や価格妥当性を検討する。さらに、企業のサポート体制や活動の真実性をみて企業の信頼性を担保する。これらを同時並行的に分析しているというわけだ。競争が激しいジャンルでは、「企業の人格」によって消去法で決めているようである。
ここにきいてくるのがTRUSTのフレームワークであり、5つのステップに分かれている。まずは「Translation(AI語への翻訳)」だ。これはつまり、「AIが理解しやすい言葉」にすることを指す。「膝にやさしい」といった感覚的な表現を「AIが比較可能なデータに変換する」。数値的で機能的な表現があってはじめて、AIはニーズに沿った最適な商品を論理的に選定できる。



















