【必読ポイント!】 ラーメンにおける「1000円の壁」
ラーメン1杯1000円=高い?
ラーメンの平均価格は2000年以降、20年以上にわたり500円台でほぼ横ばいだ。物価も人件費も上がる中で、ラーメン店は価格をほとんど上げずに、利幅を削って「我慢」してきたのだ。
だがその結果、いまや店を続けられないレベルの危機に直面している。その象徴が、ラーメンの価格が1000円を超えると、どんなに高級食材を使っていても、どんなに美味しくても高いと感じてしまう「1000円の壁」である。
「1000円の壁」論争は、段階的に高価格帯の店が増えた流れの中で形成されてきた。もともと大衆的で安価な食べ物だったラーメンは、800円台までは自然な上昇として受け止められてきたが、2014年に『ミシュランガイド東京』にラーメン部門が新設されたことを契機に高級路線が広がり、「1000円の壁」が明確な論点として浮上したかたちだ。誰でも気軽に食べられる存在であってほしいという思いと、高価格化が進む現実との間に生じた不安が渦となり、「1000円の壁」問題が大きく扱われるようになった。
なぜ「ラーメン=安い」と思うのか

「ラーメン=安い」というイメージは、ラーメンがもともと「大衆食」として出発したことに由来すると考えられる。手軽で安い個人経営のラーメン店や町中華が全国に広がり、その後に低価格を売りにしたチェーン店が多数登場した段階で、「ラーメンは安い食べ物」という暗黙のルールがほぼできあがった。
その一方で、価格モデルとして参照すべき存在に「そば」と「寿司」がある。そばには高級そば、町のそば屋、立ち食いそばがあり、寿司には高級寿司、町の寿司屋、回転寿司がある。ラーメンも同様に、高級ラーメン店、町のラーメン店、低価格チェーン店というかたちで三極化が進んでいるのだが、価格の面ではいまだにこの3つが同じ土俵で語られているのが現状だ。「ラーメン1杯2000円なんて高すぎる! これだったら安いチェーン店に行くわ」という書き込みはネットでよく見るが、「高級店のそばは高すぎる! これだったら立ち食いそばに行くわ」はそう見ない。
本来はそばのように、店ごとに客層や来店動機は異なるはずである。このねじれの原因を歴史から辿ると、そばや寿司は時間をかけて「安い店」が後から登場したのに対し、ラーメンはもともと安価な存在として広まり、ずっと後になって高価格帯の店が出てきたという逆の流れが挙げられる。技術と味の進化により、大衆食の枠からはみ出すラーメンが生まれた結果、「大衆食=安い」という原点とのギャップが露わになり、「1000円の壁」問題として表面化したのである。
店は「1000円取るのが怖い」
「1000円の壁」という言葉はお客側の受け止め方を示すように聞こえるが、実は店側にも心理的な壁として存在している。



















