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【必読ポイント!】 コミュニケーションの200ミリ秒の謎に迫る
毎日行われる、0.1秒単位の競争
会話の際、私たちは1秒以下のきわめて短い時間でやりとりを繰り広げている。イギリスの言語学者であるスティーヴン・C・レヴィンソンらの研究によると、一人が話し終わった後に別の人が話し始める、話者の交代(「ターンテイク」と呼ぶ)にかかる時間は平均で200ミリ秒、つまりたった0.2秒だという。なぜ人間は、これほど短い時間で会話の順番交替ができるのだろうか。これを実現するために、言語にまつわるどのような知識が必要で、頭の中でどのような処理がなされているのか。この「200ミリ秒の謎」に迫るのが、本書の大きな目的だ。
文の解釈を考える語用論

その第一歩として、「文脈」について考えてみよう。
ここでは、発話のうち、文脈によって変わってしまう部分を「解釈」、変わらない部分を「意味」と呼ぶこととする。例えば、「あなたよりお姉さんのほうが礼儀正しかったよ」という文は、「あなたよりも姉のほうが礼儀正しさの度合いが優っている」という意味であり、これ自体はニュートラルな事実を言っているだけだ。しかし、これを自分に対するイヤミだと取る人もいれば、姉が褒められて嬉しいと感じる人もいるだろう。これが解釈だ。




















