伝説の幕開け
突然の辞令
「『カカオ事業部』課長に任命する」
新規事業部への辞令が出たのは、花形部署に異動してわずか半年後、1999年のことだった。周囲からは「なんかやらかしたの?」という声が上がったが、明治製菓の人事は概して「予想外人事」なのだ。
チョコレート業界には「商品」と「原料」という2つの柱がある。新卒1年目から8年目まで他部署で原料事業に携わっていた著者は、この分野で取引されるカカオが業界の勢力図を左右することを知っていた。会社もその重要性を理解していたのだろう。ここを制することで、日本一のチョコレートメーカーへと近づける――そう踏んだのだ。
さらに、新規事業の成功にはもう一つの利点があった。チョコレート製品は夏場に売れ行きが落ちるため、工場は冬に繁忙を極め、夏は人も設備も持て余す。季節問わず需要のある原料事業が軌道に乗れば、この非効率を解消できるのである。
しかし当時、明治製菓は新規事業の立ち上げを不得手としており、成功例は皆無に等しかった。社内のだれもカカオ事業部に期待していない。それでも、毎日浴びせられる「どうせ」を必ず跳ね返してやると心に誓った。
衝撃の一言

ところが、営業メンバーとして集められた4人は全員すでに役職定年を迎えた人たちだった。もっと馬力のある人材はいくらでもいるはずで、この人選にも上層部の期待の低さが透けて見えた。
本人たちも突然の異動に戸惑っている様子だった。キャリアの終盤を穏やかに過ごそうとしていた矢先の配属だ。無理もない。しかも、上司にあたる著者は一回り以上年下である。
そんな中、あるメンバーから思わず耳を疑う一言が飛び出した。




















