

「ハラスメント」という言葉が広く認知されるようになった。それに伴い相談件数は増え、さまざまな研究も行われるようになった。しかし、著者は「今後もハラスメントはなくならないだろう」と述べる。なぜなら、ハラスメントは「人間関係の軋轢から生じる問題」だからである。
人はそれぞれ異なる価値観を持っている。そのため2人以上の人間関係では、多かれ少なかれ「価値観のズレ」が生じるものだ。その差を許容できるものもあれば、そうでないものもある。また互いが譲歩できる場合もあれば、どちらかが自分の価値観を押し通す場合もあるだろう。この顕在化した価値観のズレこそが「ハラスメント」であると著者は考える。
ハラスメントは許されざるものだが、それが関係性によって生じるものであるならば、適切に対処することで改善できるはずだ。実際、早めに介入して早期解決に至った事例もある。
「ハラスメントが絶対に起きない関係性」は存在しないが、その定義を学んで自戒すれば、芽を摘んでおくことはできる。むしろ、それがハラスメント防止の最適解であると著者は考える。

厚生労働省が対策を促している職場におけるハラスメントは、著者によると次の6つである。(2025年6月現在)
(1)セクシュアルハラスメント(セクハラ)
(2)パワーハラスメント(パワハラ)
(3)マタニティハラスメント、パタニティハラスメント(マタハラ、パタハラ)
(4)ケアハラスメント(ケアハラ)
(5)カスタマーハラスメント(カスハラ)
(6)就活ハラスメント(就ハラ)
ハラスメントの相談を受けたら、その内容の事実確認から始める。「いつ、どこで、誰から、どのような状況で、どのようなハラスメント行為があったか」「回数、頻度はどの程度か」「証拠はあるか」「目撃者はいるか」などを、被害を受けた当事者にヒアリングする。そのうえで当事者が相談以上の対応を求めるならば、相手(加害者とされる当事者)に事実確認を行う。
その際は、両者の話す内容における齟齬や認識の違いを確認したい。必要であれば、第三者への聞き取りも行う。
「ハラスメント」と判断するかどうかは、「その言動」が実際にあったか、もしあったなら、それがハラスメントに該当するかという観点が基準となる。また、一般常識を基準に考えて、ほぼ問題ない。
ハラスメントが起きやすい職場には特徴がある。その一例を紹介しよう。

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