職場問題ハラスメントのトリセツ
職場問題ハラスメントのトリセツ
職場問題ハラスメントのトリセツ
出版社
出版日
2025年09月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「自分が若い頃は、もっとがむしゃらに働いていたよ」「女性だから気がきくね」「いちいちそんなこと聞かないで」「お前らが甘すぎるんだよ」

職場で無意識にそんな言葉をかけていないだろうか。また、「急に不機嫌になる」「自分のやり方をチーム全体に押し付ける」「育児中の社員に『良かれと思って』責任のある仕事を回さない」といった言動。これらはすべて、ハラスメントと見なされる可能性がある。

もちろん、即座に「ハラスメントだ」と断定されることはないが、その危険性を知っておくことは重要である。

本書は社会保険労務士である著者が、豊富な知見と経験をもとに「職場ハラスメント」の種類や定義、判断基準を明らかにしたうえで、実例をもとにその対処法を考えていく。従来は泣き寝入りするケースが多かったが、制度の整備が進んだり「声をあげていい」という認識が広まったことから、ハラスメントの相談件数は増えているという。

ハラスメントは発生しない・させないのが一番だが、著者は「なくなることはない」と断言する。なぜなら、ハラスメントは人間関係の軋轢や価値観の違いから生じるため、そこに複数の人間がいれば、ハラスメントが起きる可能性は必ずあるからだ。

とはいえ、どこからがハラスメントかを見極めるのは非常に難しい。実際ケースバイケースであり、一概に「こうだ」とは言えないが、本書にはその判断基準も明記されている。不用意に自己判断しないためにも、本書を活用してほしい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

村井真子(むらい まさこ)
社会保険労務士、キャリアコンサルタント。経営学修士(MBA)。家業である総合士業事務所で経験を積み、2014年、愛知県豊橋市にて独立開業。中小企業庁、労働局、年金事務所等での行政協力業務を経験。地方中小企業の企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築、ハラスメント対応に従事。移住・結婚とキャリアを掛け合わせた労働者のウェルビーイングを追求するとともに、労務に関する原稿執筆、企業研修講師、労務顧問として活動している。著作に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)、漫画原作に『御社のモメゴトそれ社員に訴えられますよ?』(KADOKAWA)、監訳に『経営心理学第2版』(プロセス・コンサルテーション)ほか。

本書の要点

  • 要点
    1
    ハラスメントは「人間関係の軋轢」から生じる。ハラスメントがなくなることはないが、その定義を学び、自戒することで防止できる。
  • 要点
    2
    ハラスメントの相談を受けたら、当事者にヒアリングをして事実確認をする。「その言動」が実際にあったかどうか、それはハラスメントに該当するか、が判断基準となる。
  • 要点
    3
    ハラスメントが起きやすい職場には、「不公平」「プライベートを犠牲にさせる」「属性のバランスが悪い」「本音を話せない」などの特徴がある。

要約

職場のハラスメントとは何か

ハラスメントが起きる理由

「ハラスメント」という言葉が広く認知されるようになった。それに伴い相談件数は増え、さまざまな研究も行われるようになった。しかし、著者は「今後もハラスメントはなくならないだろう」と述べる。なぜなら、ハラスメントは「人間関係の軋轢から生じる問題」だからである。

人はそれぞれ異なる価値観を持っている。そのため2人以上の人間関係では、多かれ少なかれ「価値観のズレ」が生じるものだ。その差を許容できるものもあれば、そうでないものもある。また互いが譲歩できる場合もあれば、どちらかが自分の価値観を押し通す場合もあるだろう。この顕在化した価値観のズレこそが「ハラスメント」であると著者は考える。

ハラスメントは許されざるものだが、それが関係性によって生じるものであるならば、適切に対処することで改善できるはずだ。実際、早めに介入して早期解決に至った事例もある。

「ハラスメントが絶対に起きない関係性」は存在しないが、その定義を学んで自戒すれば、芽を摘んでおくことはできる。むしろ、それがハラスメント防止の最適解であると著者は考える。

職場のハラスメントの定義と判断基準
mapo/gettyimages

厚生労働省が対策を促している職場におけるハラスメントは、著者によると次の6つである。(2025年6月現在)

(1)セクシュアルハラスメント(セクハラ)

(2)パワーハラスメント(パワハラ)

(3)マタニティハラスメント、パタニティハラスメント(マタハラ、パタハラ)

(4)ケアハラスメント(ケアハラ)

(5)カスタマーハラスメント(カスハラ)

(6)就活ハラスメント(就ハラ)

ハラスメントの相談を受けたら、その内容の事実確認から始める。「いつ、どこで、誰から、どのような状況で、どのようなハラスメント行為があったか」「回数、頻度はどの程度か」「証拠はあるか」「目撃者はいるか」などを、被害を受けた当事者にヒアリングする。そのうえで当事者が相談以上の対応を求めるならば、相手(加害者とされる当事者)に事実確認を行う。

その際は、両者の話す内容における齟齬や認識の違いを確認したい。必要であれば、第三者への聞き取りも行う。

「ハラスメント」と判断するかどうかは、「その言動」が実際にあったか、もしあったなら、それがハラスメントに該当するかという観点が基準となる。また、一般常識を基準に考えて、ほぼ問題ない。

ハラスメントが起きやすい職場

ハラスメントが起きやすい職場には特徴がある。その一例を紹介しよう。

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要約公開日 2025.12.03
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