締め切りより早く提出されたレポートはなぜつまらないのか
締め切りより早く提出されたレポートはなぜつまらないのか
「先延ばし」と「前倒し」の心理学
締め切りより早く提出されたレポートはなぜつまらないのか
出版社
出版日
2025年04月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

子どもの頃、夏休みの宿題はいつはじめていただろうか。「夏休みの終わりになって慌てて」という人もいれば、「もらったらすぐやる」という人もいるだろう。前者は「先延ばし(procrastination)」、後者は「前倒し(precrastination)」という心理学の概念を反映している。どちらが望ましいかと聞かれれば、「前倒し」と答える人が多いだろう。ビジネスの現場でも、「仕事が早い」人のほうが評価されやすいイメージがある。

ところが、本書は「先延ばし」と「前倒し」は、単に「望ましい——望ましくない」という直線上で捉えられる概念ではないと指摘する。その根拠の1つが、タイトルにもある「締め切りより早く提出されたレポートはつまらない」ことだ。堅実で計画的に思える「前倒し」は、度が過ぎればクオリティの低下につながる。目の前のタスクを何も考えずに処理していれば、二度手間を生んだり、他の仕事を増やしたりする結果になることもあるだろう。

本書が提案するのは、「先延ばし派」と「前倒し派」の人がいることを認めたうえで、それぞれが見ている世界の違いに思いを馳せ、協働する方法だ。双方ともに、過剰な「先延ばし」「前倒し」はしないように対策をしたうえで、互いの違いを活かしながら、チームとして成果を目指す。それが実現できれば、多くの人が自分なりの方法で、より円滑なタスクマネジメントを行うことができるようになるだろう。

ライター画像
池田友美

著者

安達未来(あだち みき)
1986年生まれ。2009年、広島大学総合科学部卒業。2014年、広島大学大学院総合科学研究科博士課程後期修了。博士(学術)。専門は社会心理学、教育心理学。大手前大学助教、講師等を経て、2021年より大阪電気通信大学准教授。セルフコントロールや学習支援を中心に、理論的・実践的な研究を行う。著書に『生徒指導・進路指導 (よくわかる!教職エクササイズ4)』(共編著、ミネルヴァ書房)がある。近年ではタスクマネジメントを視野に入れたセルフコントロールの研究も進めている。

本書の要点

  • 要点
    1
    「先延ばし」と「前倒し」には、どちらにも長所と短所があり、「望ましい——望ましくない」という直線的な評価では捉えられない。
  • 要点
    2
    「先延ばし派」と「前倒し派」では、見ている世界が異なるため、コミュニケーション不足だと互いに不満が募りやすい。協働する際には相手のタスクマネジメントのやり方について事前に確認しておくと効果的だ。

要約

タスクマネジメントとは何か

現代の日常はマルチタスク
Jacob Wackerhausen/gettyimages

私たちの日常は「マルチタスク」状態だ。仕事に関するタスクや家庭内のタスクなど、常に多岐にわたるタスクを抱えているのが現代人のデフォルトだ。

さまざまなタスク処理を効率化する方法の1つに「ToDoリストの作成」がある。ここで皆さんにも一度付箋やスマホのメモ帳などにToDoリストの作成してみてもらいたい。まずは「1ヶ月以内にやるべきこと」のリストを書いてみよう。仕事や勉強に限らず、娯楽やイベント参加、ルーティンワークなどの些細な予定もここに入れてみよう。

ToDoリストができたら、どのタスクから取り組もうかと考えてみる。すると、その判断や決定の基準が複数の要因によって左右されていることに気づくはずだ。締め切り、タスクの性質、そのタスクが好きかどうかや、そのタスクの遅れが周囲の人に与える影響など、さまざまな要因が関連し合い、優先されるべきタスクが決められ、タスクマネジメントの処理や遂行に影響を与える。

タスクマネジメントの失敗を生み出す原因の1つが先延ばしだ。先延ばしは忌み嫌われる一方で、タスクを早めにこなす前倒しは素晴らしいことのように思える。しかし、これはそう単純な話ではない。先延ばしにも前倒しにも、長所と短所がある。「先延ばし派」と「前倒し派」の特徴を探りながら、両者のバランスを意識した効率的なマネジメントの方法を考えてみよう。

先延ばしとセルフコントロール

私たちはなぜ先延ばしをしてしまうのか

1984年に、バーモント大学のソロモンらは、学生への調査をもとに先延ばしの実態とその理由を明らかにしている。この調査では、成績に影響を与える重要な課題でも、先延ばしをする学生は少なくないこと、学生自身が先延ばしを大きな問題だと捉えていないことが明らかになっている。

先延ばしの主要な理由は、「失敗への恐れ」と「課題の回避」の2つであった。課題に対する自信のなさや、完璧にこなさなければならないというプレッシャーから、課題を先延ばししてしまう。これは、先延ばしの原因は自分の内側にあるという考え方だ。

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要約公開日 2025.11.29
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