鈴木敏文 孤高

未 読
鈴木敏文 孤高
ジャンル
著者
日経ビジネス(編)
出版社
定価
1,600円 (税抜)
出版日
2016年12月27日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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鈴木敏文 孤高
鈴木敏文 孤高
著者
日経ビジネス(編)
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出版社
定価
1,600円 (税抜)
出版日
2016年12月27日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.0
革新性
4.5
応用性
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レビュー

一人の「サラリーマン」からすべてが始まった。コンビニエンスストアという新たなインフラを戦後日本に根付かせ、メーカーが支配していた流通業界の力関係を逆転させた男。そして、イトーヨーカ堂の一分野に過ぎなかったコンビニ事業を、連結売上高10兆円を超す巨大コングロマリットにまで成長させた男。それが元セブン&アイ・ホールディングス(HD)会長兼CEOの鈴木敏文である。

鈴木は過去の成功を否定し、「変化対応」を唯一の信念として掲げ、セブンイレブンこそが流通業界のメインストリームだと証明してみせた。経営者としては異色の「テクノクラート(技術官僚)」として、「主君」であるイトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊に仕えた姿は、あたかも『三国志』の諸葛亮孔明のようである。この孤高の男はどこから来て、何を考え、どこへ行こうとしたのか。

鈴木の経営人生の最終ページは、2016年5月だった。周囲の喧噪とは裏腹に、彼は静かに表舞台から去った。リアルのみならず、ネットの流通も掌握しようとした「オムニチャネル」構想途上での終幕だった。

鈴木の見果てぬ夢、思い描いた将来を辿るということは、日本の流通業の今後を展望することにもつながる。経営者として唯一無二の実績を上げてきた鈴木氏の生き方・思想は、すべてのビジネスパーソンに対して、「働く」とは何かという問いを投げかけるだろう。

本書はおよそ半世紀にもおよぶ、『日経ビジネス』の取材の集大成だ。今となっては歴史的価値のある情報も多数盛り込まれている。あらゆる意味で、必読の一冊である。

著者

日経ビジネス{{編


1969年の創刊以来、常に「時代の一歩先」を見通し、注目すべき企業・人物への直接取材をもとに、独自の視点で「実践に役立つ情報」を発信。

本書の要点

  • 要点
    1
    常に消費者目線で「変化対応」し続けることが、鈴木の揺るぎない経営哲学だ。「対応」を徹底するために、従業員とのダイレクト・コミュニケーションには経費を惜しまなかった。
  • 要点
    2
    「販売力」、「商品開発力」が成長の源泉である。そこでしか買えない上質な商品を作ることが、圧倒的な販売力をつくるというのが鈴木の考えだった。
  • 要点
    3
    緊張関係が組織としての緩みを律する。鈴木と伊藤、セブンイレブンとイトーヨーカ堂、本社とオーナー。セブンイレブンの強みは、絶妙なバランスにもとづいた企業体のあり方にあった。

要約

鈴木敏文、半生を振り返る

「辞めさせられたわけではない」
microgen/iStock/Thinkstock

2016年、鈴木敏文氏がセブン&アイ・ホールディングス(HD)のトップを辞した。創業家との確執がそのその理由にあるとされる。当時、セブンイレブン社長だった井阪隆一(現セブン&アイHD社長)を退任させようとする鈴木の人事案を、イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊は承認しなかった。この人事の混乱に乗じて、創業家は実権の取り戻しに動いた。

鈴木は「不仲なんてことは全然ない」と否定した。だが、創業家との関係が変化しはじめたことを、鈴木も人事案を巡る混乱で感じたようだ。退任を表明した記者会見では、創業家について「世代が変わった」と述べるにとどめ、詳細は語らなかった。ただ、側近らによれば、高齢の伊藤に変わり、子どもの世代が資産管理などで実権を握るようになったと鈴木氏はこぼしていたという。もし創業家の介入がなければ、鈴木氏の退任はなかったかもしれない。

しかし、「いいきっかけでした。悔いが残るということはないんだよね。自分で辞めると言ったのであって、辞めさせられたわけじゃないのだから」と語る鈴木氏は退任後、それまで明かすことのなかった胸の内を語り出すようになった。

「中内さんの下だったら、1年で辞めた」

鈴木がセブン&アイの前身であるイトーヨーカ堂に入社したのは1963年。奇しくもダイエーの中内㓛、セゾンの堤清二といった流通業界の偉人たちが、頭角を現しはじめたのと同時期だ。当時は「小売業へ入ろうという気持ちはさらさらなかった」という。

望んでいた仕事ではなかったが、事業家を志していた鈴木にとって、イトーヨーカ堂は格好の自己実現の場となった。仮に中内や堤の下で働いていたら、彼らの強烈なリーダーシップに肌が合わず、1年ももたずに辞めていたかもしれないと鈴木は語る。

「保守」の伊藤と「革新」の鈴木。2人の絶妙な関係性が、バブル崩壊などの変化を生き抜く強さをもたらした。これは1人の絶対権力者が君臨したダイエーやセゾンにはなかった力だ。

一方で、両者には共通する価値観もあった。「金銭感覚」と「真面目さ」である。この商道徳が、セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)を誕生させ、強靱な事業構造を生み出す基礎となっていく。

ハリケーン・スズキがやってきた
JackF/iStock/Thinkstock

「アメリカで倒産した大きな会社を再建した日本企業の事例は、セブンイレブンだけ」。1987年、米サウスランドの運営する「セブン-イレブン・インク(SEI)」が、経営難に陥り非上場化した。これを見た鈴木は、一部営業権の取得、株式買収、そして完全子会社化を敢行。SEI幹部は、アメリカに来るたびに厳しく指摘する鈴木を、「ハリケーン・スズキ」と呼んでいたという。

鈴木が徹底したのは、日本で培った「持たざる経営」だ。ベンダーのルートセールス任せでなく、日本と同じように各店舗が自ら発注する体制へ変え、自社で持っていた巨大な物流センターもすべて売却させた。その結果、SEIは企業価値1兆円を超す大復活を遂げた。

米国におけるこの「本家」の再建によって、鈴木の経営哲学は世界でも通用することが証明された。これは彼の実績の中でも白眉といえる。

鈴木と伊藤、最強の2人

伊藤雅俊の実像「夢追う大商売人」

自分と関わりのある人間には、とことんまで思いやる――伊藤は生真面目や篤実という言葉では表しきれない、強烈な「潔癖さ」を持つ根っからの商人だ。「気持ち悪い」という独特の口癖に象徴される姿勢は、社内外で接するすべての人に適用される。

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経営戦略 マーケティング 産業・業界
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2016年12月27日
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