本書の要点

  • 紀元前500年前後は、ソクラテス、釈迦、孔子が同時期に活躍した。「知の爆発」は、温暖化と鉄器の波及によってもたらされた。

  • ムハンマドが始めたイスラム教は、合理性と寛容性によって急拡大していった。

  • 13世紀、モンゴルはユーラシアを横断するグローバル国家を建国した。しかしこのグローバリゼーションによって、ペストの大流行も招くことになる。

  • 現代まで続く近代国家のベースは、産業革命とフランス革命にある。ネーションステート(国民国家)の概念は、フランス革命ではじめて誕生した。

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紀元前:文明の発祥

言葉と文字の発明

20万年前にアフリカで誕生した人間は、10万年ほど前から「もっとおいしいもの」を求めてユーラシアの方向に旅を始める。いわゆるグレートジャーニーである。しかし1万2000年くらい前に放浪をやめ、定住して農耕や牧畜を始める。ドメスティケーションと呼ぶこの行動は、ホモ・サピエンスの歴史にとって大きな画期となる。もう一つの画期は、言語の発明である。現在は、言語は「思考のツール」として生み出されたと考えられている。人間は言葉を使って考えるようになったのだ。文字は、紀元前3500年ごろのメソポタミアで生まれた。文字の誕生は「取引」がきっかけだ。例えば、人に何かを貸し出すときに、忘れないように「ウマ1頭貸した」「麦を貸した」と粘土のボールを別々の壺に入れていく。しかし、取引が増えると壺も同時に増えてしまう。そこで、馬は「〇」、麦は「△」とボールに印を付けると、壺は1つで済む。取引の増加につれて記号は複雑になり、やがて文字に発展した。

四大文明の起源はメソポタミア

swisshippo/gettyimages

メソポタミアの次に起こったのはエジプト文明だ。エジプトにピラミッドができたころ、インダス川流域で文明が誕生し、中国では紀元前2000年ごろに最古の王朝「夏」が生まれたとされる。メソポタミア、エジプト、インダス、黄河の四大文明は、これまでばらばらに起こったといわれてきた。しかし今は、メソポタミアが他の文明に影響を及ぼしたという説が有力だ。例えば、メソポタミアのシュメールとインダスは、海路を通じて交易していたことがわかっている。また、黄河文明にはメソポタミアの戦闘用馬車「チャリオット」が見つかっており、その影響を証拠づけている。

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要約公開日 2023.05.12
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