同調圧力のトリセツ

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同調圧力のトリセツ
出版社
定価
990円(税込)
出版日
2022年11月29日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は、作家で演出家の鴻上尚史氏と脳科学者である中野信子氏による、コミュニケーションについての対談である。

テーマとなる「同調圧力」は、日本人の間で特に強いといわれ、職場や学校などで問題になることが多い。本書ではこの同調圧力を、コミュニケーションの問題として捉える。一昔前にくらべ、価値観や生活スタイルが多様化した現代は「空気を読んで、相手に合わせる」ことが難しくなっている。にもかかわらず、私たちはいまだにそのコミュニケーションスタイルを踏襲している。本書は、今も存在する「同調圧力」に対して、我々がどのようなスタンスで臨めばいいのかを教えてくれる一冊だ。

一見、エンタメである演劇と脳科学という分野は畑違いのようにも見える。しかし、演劇は舞台上で行われる模擬的なコミュニケーションを観客に見せるものであり、脳科学において、コミュニケーションはホモ・サピエンスの脳の発達を語る上で欠かせない。すなわち、両者とも人間のコミュニケーションを分析するプロといえる。

本書は著者たちの個人的な経験をもとに、ジェンダー、テレビやSNS、教育といった、幅広いジャンルにおける同調圧力についての原理と対策が対話される。全く異なる立場から同じ方向を見つめたとき、そこにどのような共通項が存在するのか。演劇ファンや脳科学ファンのみならず、見えない「空気」に息苦しさを感じている人や、同調圧力について考えを深めたい教育関係者にも一読を進めたい。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

鴻上尚史(こうかみ しょうじ)
1958年愛媛県生まれ。早稲田大学法学部卒業。作家・演出家・映画監督。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲・シナリオ賞受賞。現在は「KOKAMI@network」での作・演出を中心としている。人生相談の名手。著書に「世間ってなんだ」(講談社)「鴻上尚史のほがらか人生相談」(朝日新聞出版)など。
中野信子(なかの のぶこ)
1975年東京都生まれ。東京大学工学部応用化学学科卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。脳科学者・医学博士・認知科学者。現在、脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行っている。科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。近著に「フェイク!」(小学館)「不倫と正義」(新潮社、共著)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本人のコミュニケーションは、身近な人との「世間」を基本にしてきた。しかし「世間」が中途半端に壊れた現代は、不特定多数の「社会」と繋がらねばならず、コミュニケーションに混乱が生じている。
  • 要点
    2
    日本人は遺伝的に不安になりやすく、協調性が高い傾向にある。
  • 要点
    3
    コミュニケーション能力とは、もめた時に議論できる能力を指す。手本になる人のまねをすることで、コミュニケーション能力はアップする。
  • 要点
    4
    「弱い世間」と繋がることで、同調圧力の息苦しさから逃れられる。

要約

同調圧力とコミュニケーション

「社会」との繋がり方がわからない日本人

今、コミュニケーションに関する本が売れている。鴻上はその理由を「日本人が生きてきた『世間』が中途半端に壊れてきているから」と考える。鴻上の言う「世間」とは、クラスメイトや同僚、近所の人など、現在もしくは将来の自分に関係のある人たちを指す。この反対語は「社会」で、現在も未来も何の関係もない人たちで構成された世界を指す。日本人の多くは「世間」に生き、「社会」との接点は少ない。

鴻上は、この「世間」が壊れてきていることの例として、NHKの紅白歌合戦を挙げる。1963年の視聴率は81・3%もあったが、現在は大晦日にテレビを見る人自体が減ってきている。

「同質であること」の維持が難しくなってきているにも関わらず、コミュニケーションのやり方は今までの「世間」と同じものを応用しているため、あちこちで軋みが生じている。加えて、「社会」とどう繋がっていいかわからず混乱しているため、多くの人がコミュニケーションのやり方を探しているのでは、と鴻上は推測する。

好きなことをして生きるのは悪いこと?
andresr/gettyimages

コロナの影響で国から自粛を求められた際、「演劇界を含め、自粛要請でダメージを受けた業界に休業補償をお願いしたい」という鴻上のインタビューがネットに掲載されると、「好きなことをやっているんだから、貧乏でいいだろう」という反応があったという。中野によれば、私たちの脳は、自分の身の回りのことはよく見える一方、自分の集団にいない人は、記号のようにしか認知できない。つまり、「よそ者は記号だから攻撃してもいい」と考えてしまうのだという。

だから、あえて好きなことをやるために、好きなことをやり続ける苦しさをもっとアピールすべきだと、中野は提案する。好きなことをして生きている人は楽で得だと思われがちだが、どのように生きても人生の苦しみはそれほど変わらない。また、「楽しさ」を感じる神経伝達物質ドーパミンの量は、お金持ちでも貧乏でも変わらないと中野は言う。

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