いかなる時代環境でも利益を出す仕組みの表紙

いかなる時代環境でも利益を出す仕組み


本書の要点

  • アイリスオーヤマは「ピンチが必ずチャンスになる経営」をしている。その結果、コロナショックや東日本大震災など、時代環境が危機にあるときに必ず業績を飛躍的に伸ばしている。

  • 重視するのは、使う人の立場に立つ「ユーザーイン」の発想である。「買う人=使う人」とは限らず、使う人の立場に立てれば、新しい市場を創造できる。

  • 問屋機能を持つ製造業「メーカーベンダー」という業態を確立したことで、ユーザーインがさらに強固になった。

  • 稼働率7割以下にとどめるルールを徹底。その結果、急な需要の高まりにすぐさま対応できる「瞬発対応力」を維持している。

1 / 4

環境を自ら変革する

ビジネスチャンス優先

2020年、新型コロナウイルスをきっかけに世界は大転換した。経済環境は以前の状態には戻らず、テレワークの浸透、巣ごもり消費の定着、インターネットでの買い物へのシフトが進んだ。会社のマネジメントにも、ニューノーマルが求められる。そんななか、アイリスオーヤマ(以下、アイリス)の2020年12月期のグループ売上高は約7000億円となり、前期の5000億円から一気に2000億円ほども増えた。アイリスには、あらゆる設備の稼働率を7割以下にとどめるというユニークなルールがある。何かの需要が急に出現したときには、予備スペースを活用して瞬時に増産ができる。コロナ禍での大増産を機に、マスクの出荷数で国内トップシェアに躍り出た。アイリスは「ピンチをチャンスにする経営」ではなく、「ピンチが必ずチャンスになる経営」の結果、危機のときに業績を伸ばしているのだ。

アイリスの企業理念第1条

Sezeryadigar/gettyimages

アイリスの経営の原点は1964年にある。アイリス会長である著者の父は大山ブロー工業所(後にアイリスオーヤマに改名)の創業者であるが、この年に他界し、著者は19歳で社長を継いだ。プラスチック製品の下請け加工工場の年商は500万円。注文にすべてイエスで対応することで取引先の信用を得て、技術力を磨いた。やがて「自社ブランドを世に送り出したい」という思いが強まっていく。21歳のときに作った養殖用のブイが評判になった。次に開発したのは田植え用の育苗箱だ。木製からプラスチック製に変えることでヒット商品となる。需要に近いところで製品を供給できるよう、仙台に工場を新設した。そんなとき、著者の経営理論を決定づけるオイルショックが起きる。

もっと見る
この続きを見るには...
残り4443/5159文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2024.06.23
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

「日経平均10万円」時代が来る!
「日経平均10万円」時代が来る!
藤野英人
図解 人的資本経営
図解 人的資本経営
岡田幸士
生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方
生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方
梶谷健人
クリティカル・ビジネス・パラダイム
クリティカル・ビジネス・パラダイム
山口周
シン・スタンダード
シン・スタンダード
谷口たかひさ
持たざる者の逆襲
持たざる者の逆襲
溝口勇児
中流危機
中流危機
NHKスペシャル取材班
チームレジリエンス
チームレジリエンス
安斎勇樹池田めぐみ

同じカテゴリーの要約

Z世代の頭の中
Z世代の頭の中
牛窪恵
一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本
一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本
越川慎司
世界標準の1on1
世界標準の1on1
スティーヴン・G・ロゲルバーグ本多明生(訳)
増補改訂版 フィードバック入門
増補改訂版 フィードバック入門
中原淳
完訳 7つの習慣
完訳 7つの習慣
スティーブン・R・コヴィーフランクリンコヴィージャパン(訳)
トリニティ組織
トリニティ組織
矢野和男平岡さつき(協力)
1分で話せ
1分で話せ
伊藤羊一
世界のマネジャーは、成果を出すために何をしているのか?
世界のマネジャーは、成果を出すために何をしているのか?
井上大輔
「仕事ができるやつ」になる最短の道
「仕事ができるやつ」になる最短の道
安達裕哉
部下をもったらいちばん最初に読む本
部下をもったらいちばん最初に読む本
橋本拓也