宇宙ベンチャーの時代の表紙

宇宙ベンチャーの時代

経営の視点で読む宇宙開発


本書の要点

  • いま、世界の宇宙開発をリードしているのは「ニュー・スペース」と呼ばれる民間ベンチャーだ。ニュー・スペースの参入は、ロケットの価格破壊や技術革新などをもたらした。

  • イーロン・マスク氏率いるスペースX社は、ベンチャーの強みを活かした開発とコストダウンの工夫などにより「宇宙ベンチャーの雄」となった。

  • 米国では宇宙ベンチャーの上場が相次いでいる。彼らは巨額の赤字を抱えているにもかかわらず、将来の成長期待から高値で取引されている。

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「宇宙ベンチャーの時代」が始まった

民間企業による宇宙ビジネス

宇宙開発はこれまで政府主導で行われていたが、民間企業がイニシアティブをとる「ビジネス」に生まれ変わりつつある。この流れは「宇宙ベンチャー」と呼ばれる民間ベンチャー企業により加速している。2021年は「民間宇宙ベンチャー元年」と呼ぶのにふさわしい1年だった。同年7月、英国ヴァージン・グループの創業者リチャード・ブランソン氏や、アマゾン・ドット・コム社の創業者ジェフ・ベゾス氏が宇宙旅行を果たした。さらに9月には、民間人4人がスペースX社の宇宙船に乗り、3日間にわたって地球周回軌道を回った。日本人にとって印象的だったのは、12月に前澤友作氏が国際宇宙ステーションに滞在し、様々な情報を発信してくれたことだろう。一方で海外では宇宙ベンチャーの株式公開が相次ぎ、二桁の企業がナスダックやニューヨーク証券取引所などに上場した。なぜ急に民間宇宙旅行が実現したのか?宇宙ビジネスは儲かるのか?誰がお金を払うのか?なぜ米国で民間宇宙産業が立ち現れたのか?本書では「宇宙ベンチャー」に焦点を当て、それにまつわる疑問に答えていく。

宇宙ベンチャーが突如現れた理由

peepo/gettyimages

宇宙ベンチャーはなんの前触れもなく現れたわけではない。そこにはいくつかの導線があった。まず、宇宙が舞台の賞金レースだ。1996年に設立された米国Xプライズ財団は、「Xプライズ」という宇宙飛行レースを開始した。このレースは「乗員3名で宇宙空間に到達して帰還し、2週間以内に同一機体で再び宇宙空間に到達したチームが、賞金1000万ドル(14億円)を受賞する」というもので、世界から26チームが参加した。そして見事優勝したのは、スケールド・コンポジッツ社の「スペースシップ・ワン」だった。スペースシップ・ワンは、後に宇宙飛行を実現したヴァージン・ギャラクティック社「スペースシップ・ツー」の原点となった。さらに2007年に始まった月一番乗りレース「グーグル・ルナ・Xプライズ」には、日本からチーム・ハクト(後のアイスペース社)など多くのチームが参加し、民間宇宙ビジネスに影響を与えた。宇宙ベンチャーの台頭には、ビリオネア(お金持ち)の存在も欠かせない。最も有名なのは、イーロン・マスク氏、リチャード・ブランソン氏、そしてジェフ・ベゾス氏の3名だ。こうしたビリオネアが経営者兼投資家として参入したことが、宇宙ベンチャーの躍進に拍車をかけた。

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要約公開日 2024.07.19
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