社会は、静かにあなたを「呪う」
社会は、静かにあなたを「呪う」
思考と感情を侵食する“見えない力”の正体
著者
NEW
社会は、静かにあなたを「呪う」
出版社
小学館クリエイティブ

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出版日
2025年08月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「これは自分の考えだ」と思っていたことが、実は周囲や社会の影響を受けたものであったと、後になって気づくことはないだろうか。たとえば要約者は、「人に頼らず、自立して生きるべき」と考えていた時期があるが、その頃はちょうど、日本全体が自己責任論で覆われていた。今思えばだが、少なからずその影響を受けていたのかもしれない。

本書のタイトルにある“呪い”とは、その時代や社会に漂う空気であり、どこからともなく流れてくる他者の言葉である。SNSやメディアを通じて、誰かの強い言葉が常にこだましている現代は、“呪い全盛期”といっても過言ではない。「日本はすでに三流国」「人生はガチャ」「○○はオワコン」などは、その代表だ。真偽は不明でも、断定的な言葉で語られると気になってしまい、なんとなくそれが正しいような気がしてくる。“呪い”は、好むと好まざるとにかかわらず、私たちの脳内にするりと入り込んでくる。

本書は、そうした現代日本にはびこる“呪い”を取り上げ、「本当にそうなのか」を検証していくという、実にチャレンジングな一冊だ。著者は、人気サイエンスライターの鈴木祐氏。これまで時間、運、適職、才能、長寿といった多種多様なテーマを取り上げ、科学的な知見に基づいて解き明かしてきた。

現代は、事実や真偽よりも、耳あたりのよいフレーズや感情を煽る過激な論調がもてはやされる傾向がある。「自分は間違った情報に踊らされたりはしない」と思っている人ほど、実は要注意だ。その思い込み自体が、すでに“呪い”にかかっているのかもしれない。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

鈴木祐(すずき ゆう)
サイエンスジャーナリスト。1976年生まれ、慶應義塾大学SFC卒。16歳のころから年に5000本の科学論文を読み続けている、人呼んで「日本一の文献オタク」。大学卒業後、出版社勤務を経て独立。雑誌などに執筆するかたわら、海外の学者や専門医などを中心に約600人にインタビューを重ね、月に1冊のペースでブックライティングを手がける。現在まで手がけた書籍は100冊超。自身のブログ「パレオな男(https://yuchrszk.blogspot.com/)」で健康、心理、科学に関する最新の知見を紹介し続け、現在は月間250万PV。近年はヘルスケア企業を中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。近著に『最強のコミュ力のつくりかた』(扶桑社)、『才能の地図』(きずな出版)、『運の方程式』(アスコム)などがある。『最高の体調』(クロスメディア・パブリッシング)は20万部を突破。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書では「他者のメッセージが持つ強い影響力」を“呪い”と呼ぶ。“呪い”はもっともらしく聞こえるが、実は根拠があいまいで、誤解に基づく思い込みによるものが多い。
  • 要点
    2
    「1人あたりGDP」の低下をもとに国の豊かさを計ると、日本には不利な結果が出やすくなる。
  • 要点
    3
    「人は幸せになるために生きている」という言説があるが、実際は、自己の「幸せ」や「楽しさ」を追求する人ほど幸福を感じにくい。
  • 要点
    4
    遺伝は人の能力や資質に影響を与えるが、環境の影響もかなり大きい。

要約

あなたも私も呪われている

「呪い」の正体

私たちはみな、無意識のうちに他者の意見や価値観を取り込んでいる。もし今、あなたが何らかの「生きづらさ」を感じているなら、それは“呪い”のせいかもしれない。本書では、「他者のメッセージが持つ強い影響力」のことを“呪い”と呼ぶ。

私たちの周りには、さまざまな“呪い”が蔓延している。「日本の未来に希望はない」「幸せになるために生きよう」「競争や成長から逃げよ」「情熱を持って仕事をせよ」「人生は遺伝で決まる」――。これらは代表的な“呪い”である。

“呪い”は一見もっともらしく聞こえるが、実は根拠があいまいで、誤解に基づく思い込みによるものがほとんどだ。にもかかわらず、私たちの思考と行動にじわじわと影響を与えていくのでタチが悪い。

本書では、私たちが囚われやすい“呪い”の実態を検証し、無益な呪い合いから距離をとるための方法を考えていく。

【必読ポイント!】本当に「日本に未来はない」のか?

「この国は、終わっている」
HUNYIP WONG/gettyimages

「この国には未来がない」「日本は終わっている」。そんな言葉をあちこちで聞くようになった。長きにわたって経済が停滞する日本では、未来を悲観する声が後を絶たない。識者たちは「日本が先進国であった時代は終わり、これまでのやり方を踏襲していたら日本は絶滅してしまう」と声高に叫ぶ。

だが、それは確かなのだろうか。この国の未来には、本当に絶望しかないのだろうか。

「日本は貧しくなった」

日本にまつわる“絶望系の呪い”のひとつに、「日本は貧しい国になった」というものがある。その裏付けとしてよく持ちだされるのが、「1人あたりGDP」だ。

日本の1人あたりGDPは、2000年に世界2位だったのが、2023年には34位まで下がっている。今後も下がり続けることが予測されており、ゆえに「日本は貧しい国」だと言われるようだ。

しかし、この指標のみで国の豊かさを判断するのは早計である。なぜなら、日本にとって不利な結果が出やすいからだ。

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要約公開日 2025.08.29
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