「本質」とは何か
「本質を見抜く力」が重要な理由

上司の指示通りに報告書を作成したはずなのに、「いや、そうじゃなくて」と突き返されてしまった。エクセル関数や生成AIを駆使して業務のスピードを上げたものの、仕事の生産性は低いまま。担当業務のKPIを達成したのに、期待通りの評価を得られない――。これらに共通するのは、物事の表面にとらわれて本質を見失っているという点である。上司から「いや、そうじゃなくて」と言われるのは、報告書に情報を詰め込みすぎているからかもしれない。報告書作成の本質は、情報を漏らさず並べ立てることではなく、相手が本当に知りたい内容を明確に伝え、次につながる示唆や教訓を組織知へと昇華させることである。業務スピードを上げても生産性が高まらないのは、仕事の生産性向上において重要なのが「速さ」ではなく、「不要な作業をしないこと」だからだ。不要な作業をいくら速くこなしても、本質的な成果にはつながらない。KPIを達成しても評価されないのは、そもそもKPIが全体のごく一部を切り取った指標に過ぎないからだ。このように、「本質を見抜く力」が欠けていると、ビジネスの現場で的外れな判断や行動を繰り返すことになる。一方で、この力があれば、今後ますます本質が見えにくい社会になる中でも、表面的な事象に惑わされることなく決断できるようになるだろう。
「本質を見抜く力」を構成する7つのスキル
本質を見抜く力は、大きく分けて次の7つのスキルから成り立っている。・本質的な「意味」を見抜く力・本質的な「原因」を見抜く力・本質的な「目的」を見抜く力・本質的な「特性」を見抜く力・本質的な「価値」を見抜く力・「関係」の本質を見抜く力・「大局」を見抜く力要約ではこの中から、「本質的な『意味』を見抜く力」と「本質的な『目的』を見抜く力」を取り上げる。