45歳の教科書

戦略的「モードチェンジ」のすすめ
未読
45歳の教科書
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戦略的「モードチェンジ」のすすめ
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45歳の教科書
出版社
出版日
2018年04月24日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「誰もが70歳まで働いて、90代まで生きるこれからの時代、折り返し点の『40代半ばの決断』が人生全体の充実度を決める鍵となる」――本書が最も伝えたいことは、カバー袖に書かれたこの一文にあらわれている。そこでどういった決断をすべきか、著者の経験談をまじえ、具体的に記されているのが本書の特徴だ。

自分のキャリアを掛け合わせて、「100万人に1人」に存在になるために、著者は40代で「キャリアの大三角形」を描こうと説く。大きな三角形がつくれれば、その分だけ他者から大きな信用(クレジット)を得られる。そうすれば、仕事の選択の幅がいっそう広がり、人生の自由度がグンと高まることになるという。

本書の最も実践的なパートである「キャリアの大三角形」の描き方とクレジットの高め方については、著者が「完全保存版」だと自負する巻頭カラーの口絵も参照されたい。まずは、口絵のチェックリストを活用し、自分の「信用度」を数値化してみるのもいいだろう。

なお、著者はかつて『35歳の教科書 今から始める戦略的人生計画』『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』という、35歳と55歳前後に向けた人生の教科書も出版している。本書はいわばその姉妹編として、両者のちょうど真ん中に位置する45歳前後の読者に向けて書かれたものだ。とかく迷える世代と言われる40代に向け、もう一度、自信や自己肯定感(セルフエスティーム)を取り戻すお手伝いをしたい――それが著者からのメッセージだ。

ライター画像
小島和子

著者

藤原 和博(ふじはら かずひろ)
教育改革実践家。元リクルート社フェロー。1955年、東京生まれ。1978年、東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。メディアファクトリーの創業も手がける。1993年よりヨーロッパ駐在、1996年に同社フェローとなる。2003年、47歳のときに、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長に就任。以来5年間、校長を務める。2008年〜2011年、橋下大阪府知事の特別顧問。2014年から佐賀県武雄市特別顧問。2016年より2年間、奈良市立一条高等学校校長を務める。
著書に、『人生の教科書〔よのなかのルール〕』『人生の教科書〔人間関係〕』(いずれも、筑摩書房)など人生の教科書シリーズ、『35歳の教科書』(幻冬舎)、『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)、『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(東洋経済新報社)、『10年後、君に仕事はあるのか?』(ダイヤモンド社)、『「毎日の悩みが消える」働き方の教科書』(電波社)ほか多数。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。

本書の要点

  • 要点
    1
    人生の後半を充実させるためには、3つのキャリアを掛け合わせ、自分の希少性を高めるとよい。日頃から小さな変化を経験しておけば、40代からでも大胆な1歩を踏み出せる。
  • 要点
    2
    他者からの「信頼」と「共感」が、あなたの「信用(クレジット)」となる。これを高めることが、40代以降の人生を豊かにする。
  • 要点
    3
    誰もが90代まで生きる社会では、一つの山を登って下るだけでは時間が余ってしまう。いくつもの山が連なる連峰をイメージし、常に新しい山並みの「裾野」を準備しておく必要がある。

要約

【必読ポイント!】40代で「キャリアの大三角形」を描く

3つのキャリアで「レアキャラ」になる
ijeab/iStock/Thinkstock

40代からの人生を確かなものにするには、自分の価値を上げていくことが大事だ。つまり、自分の「希少性」を高め、ゲームでいう「レアキャラ」になることである。そのためには、身につけたキャリアを掛け合わせ、進化させていく必要がある。それぞれのキャリアが特殊なものでなくても、掛け合わせ方によっては、100万人に1人の存在になることができる。

これを実現するための考え方として、「キャリアの大三角形」を紹介しよう。40代いっぱいで3つのステップを踏み、それらを結んでできるだけ大きな三角形をめざす。

まず1歩目として、最初の5〜10年で、ある分野の仕事をマスターする。1つのことをマスターするのに必要な時間は約1万時間だと言われる。1日7時間労働とすれば、約4年でその仕事を習得できる計算だ。どんな職種でも1万時間取り組めば、100人に1人くらいの希少性が得られるだろう。これが三角形の基点となる。

次の5〜10年では、さらに1万時間を費やし、違う分野の仕事をマスターする。あるいは、1歩目と隣接する仕事を深める手もある。1歩目が経理の仕事であれば、2歩目では財務を覚え、税理士や会計士を目指す、といった具合だ。ここまでで2点が定まり、生きていくための下地、いわば三角形の底辺が形づくられる。

さらに、40〜50代にかけて3つ目のキャリアを築こう。3つのキャリアそれぞれで100人に1人の希少性があるとすれば、掛け合わせて100万分の1の存在になれるはずだ。

モードチェンジを意識する

ある調査によれば、40代半ばになると、キャリアの終わりを意識する人が半数を超えるそうだ。体力の衰えを自覚したり、成長を実感できなかったりして、仕事の意義を見失ってしまうことが原因のひとつだろう。成長の実感がないままその後の数十年を過ごす人生は、豊かだとは言えない。だからこそ、3歩目のキャリアを追求する必要がある。

3歩目のキャリアを選ぶにあたっては、十分な試行錯誤があっていい。著者の場合は、「教育」「住宅」「介護を中心とした医療」の3つを候補に挙げ、起業したり他社に資本参加したりとチャレンジをした結果、教育分野に踏み出すことにした。

3歩目を踏み出す前に数回体験しておきたいのが、小さな「モードチェンジ」だ。女性であれば、結婚・出産のようなライフイベントを通してモードチェンジする機会は多いものだ。一方、男性の場合、意識しないと難しい。仕事でモードチェンジができるに越したことはないが、まずはいつもの駅の1つ手前で降りて歩いてみるといった、ちょっとしたことでも構わない。40代までの間に、変化に耐えられる準備をしておこう。

情報編集力を磨く
Gearstd/iStock/Thinkstock

どんな3歩目を踏み出せるかは「情報編集力」にかかっている。これは、正解が1つでない問題に対して思考力・判断力・表現力を駆使して仮説を立て、自分や周囲の人が納得できるような「納得解」を導き出す力だ。今まで蓄積してきた経験からくる、ものの見方や価値観、センスとも言えよう。

かつての日本で求められたのは「情報処理力」だった。学校教育で培われた基礎学力に基づき、早く正確に正解を導く力だ。だが、目指すべき唯一の正解がない21世紀型の成熟社会には、納得解を求められる場面が多い。こうした社会を生き抜き、キャリアを高めるには、自分の経験やセンスを生かす情報編集力を磨いたほうが賢明だ。

著者は以前、村上龍氏と「13歳のハローワークマップ」をつくったことがある。5つの領域を基準にして、世の中の仕事を星座のようにマッピングした地図だ。これを見ると、3歩目の「掛け合わせ」候補には無限の可能性があることに気づくはずだ。

例えば、ツアーコンダクターの仕事をした後、子どもの頃から好きだった犬に触れ合う仕事をしたくなり、動物看護師の資格を取得して犬のプロとして働いたとする。それを掛け合わせれば、3歩目には「犬も一緒に旅行ができる専門のツアコン」になれるかもしれない。キャリアの掛け合わせに「正解」はない。だからこそ、情報編集力が生きるのだ。

信用(クレジット)とは何か?

信頼と共感が「クレジット」を生む

世の中には、信用される人と信用されない人がいる。信用される人は、金融機関からお金を借りることができ、多くの仕事を任せてもらい、友人があなたの夢ややりたいことを実現するために動いてくれる。本書では、人物に対する信用(クレジット)を、「他者から与えられた信任の総量」と定義している。クレジットが大きければ大きいほど、人生の自由度が高くなり、自分の夢やビジョンが実現しやすくなる。

クレジットは、「信頼」と「共感」の関数でもある。他者があなたに信任を与えるときには、理性で信頼することもあるが、感情で共感することも欠かせない。感情での共感が理性に先行する場面もあるほどだ。

では、どうすれば多くのクレジットを蓄積できるのだろうか。基礎編として、次の10カ条を満たすことが最低条件といえる。

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要約公開日 2018.06.29
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