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本書の要点

  • 平昌オリンピックに向けての羽生選手の最重要課題は精神的成長、つまり「自分自身でオリンピックへの準備をする責任を持てる選手になる」ことだった。

  • 羽生選手はライバルに闘志を燃やし、自分を鼓舞して難曲にも積極的に挑んでいくタイプである。課題に突き当たり挫折しても最後まであきらめず、挑戦を重ねて進化していく。

  • 問題が起きたときには「乗り越えるべき課題、自分の能力を発揮するべき挑戦が与えられた」と考えれば気持ちが前を向く。

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2014─2015シーズン

試練の始まり

metamorworks/gettyimages

2014年のソチオリンピックにて、羽生結弦選手(以下、ユヅル)は金メダルを獲得。このシーズンは最高の結果で幕を閉じた。日本中がニューヒーロー誕生に湧くなか、ひと息つく間もなく次の幕が上がる。平昌オリンピックに向けて準備開始だ。

コーチとして、著者ブライアン・オーサ―が次の4年間の最重要課題に据えたのは、プログラムでもジャンプでもなかった。それは「自分自身でオリンピックへの準備をする責任を持てる選手に育てる」こと、つまりメンタルトレーニングや精神的成長に関することだった。

ソチオリンピックから平昌オリンピックまでの期間、ユヅルはオリンピックチャンピオンとして過ごす。そのプレッシャーは相当なものだ。その重圧をコントロールし、モチベーションを維持する術を身に付けなければならない。

あれこれ心配していたものの、幸い彼にはそうした心配は不要のようだった。「もっと進化したい」という意欲にあふれ、2014-2015年シーズンのフリースケーティングでは、王者ならではの高度なプログラムに果敢に挑戦することを決めたほどだ。さらにユヅルは、4回転をショートプログラムの後半に入れることを決心。精神的負担の大きい挑戦であったが、自分と真摯に向き合い心が強くなっていく彼を見るのは、コーチとして喜ばしいものだった。

最初の試練

グランプリシリーズの中国杯がユヅルのシーズン初戦となった。10月のフィンランディア杯を腰痛でキャンセルしていたからだ。がっかりさせてしまった多くのメディアやファンのためにも良い演技をしなければ──そうした責任感が焦りを生んだ。

ショート本番では残念ながら、課題にしていた「後半での4回転ジャンプ」を決めることができなかった。シーズン初戦から成功させる必要はないのだが、フリー後半で4回転を跳ぼうとますます熱が入った。

悲劇が訪れたのは、フリー直前の6分間の練習においてだった。中国のエース閻涵(ハン・ヤン)と正面衝突してしまったのだ。2人ともすごいスピードを出していたから、ちょっと転んだだけという程度ではなく、ユヅルはぐったりと氷の上に横たわってしまっていた。

幸いにして頭は打っていなかったものの、左太ももを打ちつけており、激しい痛みがあるようだ。ここで欠場すればグランプリファイナル出場を逃す。それでも著者は、棄権をすすめた。しかしユヅルの意志は揺るがない。何度もリンク上で転びながらも最後まで滑りきり、グランプリファイナル出場の可能性を残すことができた。そしてコンディションを上げて臨んだグランプリファイナルでは、ショート、フリーともに4回転ジャンプが決まり、2連覇を果たしたのだった。

チームメイト

nautiluz56/gettyimages

グランプリファイナルには、著者のもう一人の教え子でありユヅルの良きライバルでもあるハビエル・フェルナンデス(スペイン)も出場していた。バルセロナで開催されたグランプリファイナルは、スペインにとって初めての自国開催だった。同じ大会でも、自国開催におけるプレッシャーは別物だ。ハビエルは地元ファンの大声援に圧倒されてしまい、ショートの演技は惨憺たるものだった。

しかし2日後のフリーの演技は違った。

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要約公開日 2019.01.01
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