チーム・ブライアン 新たな旅

未 読
チーム・ブライアン 新たな旅
ジャンル
著者
ブライアン・オーサー 樋口豊(監修) 野口美惠(構成・翻訳)
出版社
定価
1,540円(税込)
出版日
2018年10月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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チーム・ブライアン 新たな旅
チーム・ブライアン 新たな旅
著者
ブライアン・オーサー 樋口豊(監修) 野口美惠(構成・翻訳)
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定価
1,540円(税込)
出版日
2018年10月30日
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総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
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おすすめポイント

フィギュアスケート選手が氷上を滑る姿は、とても優雅で美しく、思わず見とれてしまう。だが私たちは、いつも国際大会やオリンピックなどで披露される美しい演技だけを見て、ジャンプの成否や得点に一喜一憂するだけだ。選手たちがどれほどの努力をしているのか、どれほどのプレッシャーを乗り越えてきたのかに思いを馳せたとしても、華やかな舞台の裏側を知る機会はほとんどない。

本書の著者ブライアン・オーサーは、日本が誇る男子フィギュアスケート界のヒーロー、羽生結弦選手のコーチを務めている。本書では、最も近い位置から彼を指導し見守り、共に喜びを分かち合ってきた数々の体験がスリリングに語られており、その舞台裏が垣間見える一冊となっている。

オリンピックともなると、その優雅さの裏には私たちには想像もできないほどのプレッシャーがある。選手たちはその重圧をコントロールすべく、挫折を乗り越えて努力を重ね、自らを高めている。それがいかに大変なことであるかは察して余りあるが、一見するとビジネスパーソンとはまるで異なると思われるフィギュアスケートの選手たちから学べることは大きい。なぜなら4回転ジャンプがうまく跳べない、思わぬ怪我により十分な練習ができない、試合で望ましい結果を出せないなど、壁に突き当たるのは私たちビジネスパーソンと同様だからである。

フィギュアスケートの選手たちはどのように問題に対処し、どのようにして自らを進化させているのか。読み物としておもしろいのは当然ながら、課題の捉え方や課題への向き合い方も大いに参考になるはずだ。

ライター画像
金井美穂

著者

ブライアン・オーサー (Brian Orser)
フィギュアスケートコーチ。1961年カナダ生まれ。フィギュアスケート男子シングルの選手として、1984年サラエボオリンピック、1988年カルガリーオリンピックの2大会連続で銀メダルを獲得したスーパースター。引退後はプロスケーターとして人気を博し、2006年、キム・ヨナの指導をきっかけにコーチに専任した。現在はカナダのトロント・クリケット・スケーティング&カーリングクラブを拠点に、男子シングルの羽生結弦、ハビエル・フェルナンデス、ジェイソン・ブラウン、チャ・ジュンファン、女子シングルのエフゲニア・メドベージェワらの指導にあたる。キムが2010年バンクーバーオリンピックで金メダル、羽生が2014年ソチオリンピックと2018年平昌オリンピックの2大会連続で金メダルを獲得した。

本書の要点

  • 要点
    1
    平昌オリンピックに向けての羽生選手の最重要課題は精神的成長、つまり「自分自身でオリンピックへの準備をする責任を持てる選手になる」ことだった。
  • 要点
    2
    羽生選手はライバルに闘志を燃やし、自分を鼓舞して難曲にも積極的に挑んでいくタイプである。課題に突き当たり挫折しても最後まであきらめず、挑戦を重ねて進化していく。
  • 要点
    3
    問題が起きたときには「乗り越えるべき課題、自分の能力を発揮するべき挑戦が与えられた」と考えれば気持ちが前を向く。

要約

2014─2015シーズン

試練の始まり
metamorworks/gettyimages

2014年のソチオリンピックにて、羽生結弦選手(以下、ユヅル)は金メダルを獲得。このシーズンは最高の結果で幕を閉じた。日本中がニューヒーロー誕生に湧くなか、ひと息つく間もなく次の幕が上がる。平昌オリンピックに向けて準備開始だ。

コーチとして、著者ブライアン・オーサ―が次の4年間の最重要課題に据えたのは、プログラムでもジャンプでもなかった。それは「自分自身でオリンピックへの準備をする責任を持てる選手に育てる」こと、つまりメンタルトレーニングや精神的成長に関することだった。

ソチオリンピックから平昌オリンピックまでの期間、ユヅルはオリンピックチャンピオンとして過ごす。そのプレッシャーは相当なものだ。その重圧をコントロールし、モチベーションを維持する術を身に付けなければならない。

あれこれ心配していたものの、幸い彼にはそうした心配は不要のようだった。「もっと進化したい」という意欲にあふれ、2014-2015年シーズンのフリースケーティングでは、王者ならではの高度なプログラムに果敢に挑戦することを決めたほどだ。さらにユヅルは、4回転をショートプログラムの後半に入れることを決心。精神的負担の大きい挑戦であったが、自分と真摯に向き合い心が強くなっていく彼を見るのは、コーチとして喜ばしいものだった。

最初の試練

グランプリシリーズの中国杯がユヅルのシーズン初戦となった。10月のフィンランディア杯を腰痛でキャンセルしていたからだ。がっかりさせてしまった多くのメディアやファンのためにも良い演技をしなければ──そうした責任感が焦りを生んだ。

ショート本番では残念ながら、課題にしていた「後半での4回転ジャンプ」を決めることができなかった。シーズン初戦から成功させる必要はないのだが、フリー後半で4回転を跳ぼうとますます熱が入った。

悲劇が訪れたのは、フリー直前の6分間の練習においてだった。中国のエース閻涵(ハン・ヤン)と正面衝突してしまったのだ。2人ともすごいスピードを出していたから、ちょっと転んだだけという程度ではなく、ユヅルはぐったりと氷の上に横たわってしまっていた。

幸いにして頭は打っていなかったものの、左太ももを打ちつけており、激しい痛みがあるようだ。ここで欠場すればグランプリファイナル出場を逃す。それでも著者は、棄権をすすめた。しかしユヅルの意志は揺るがない。何度もリンク上で転びながらも最後まで滑りきり、グランプリファイナル出場の可能性を残すことができた。そしてコンディションを上げて臨んだグランプリファイナルでは、ショート、フリーともに4回転ジャンプが決まり、2連覇を果たしたのだった。

チームメイト
nautiluz56/gettyimages

グランプリファイナルには、著者のもう一人の教え子でありユヅルの良きライバルでもあるハビエル・フェルナンデス(スペイン)も出場していた。バルセロナで開催されたグランプリファイナルは、スペインにとって初めての自国開催だった。同じ大会でも、自国開催におけるプレッシャーは別物だ。ハビエルは地元ファンの大声援に圧倒されてしまい、ショートの演技は惨憺たるものだった。

しかし2日後のフリーの演技は違った。

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