今日の芸術

時代を創造するものは誰か 新装版
未読
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今日の芸術
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今日の芸術
出版社
定価
748円(税込)
出版日
2022年07月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
5.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

現代美術の中には我々の理解が遠く及ばないものが存在する。キャンパスにぼんやりと色が浮かんでいるだけの名画など、「あんな、私にも描けるものにどうして億単位の値がつくんだ」というのが多くの人の正直な感想だろう。ならば、芸術の価値とは技術にあるのだろうか。技術が高ければ高いほど価値があるのかと問われると、それにも頷きがたい。

では、そもそも芸術とは何か。本書は、著者・岡本太郎がその根本的な問いに向き合うところから始まる。著者の経験と感性、そして美術史から芸術のなんたるかを見定めようとする。絵画の技術は芸術の絶対条件ではないと著者はいう。たとえうまくなくとも、見るものを圧倒し、そのひとの世界観や生活をも変えてしまう力をもったものがほんとうの芸術だ。だとしたら、そもそもうまさで絵を評価しようとしたり、他人のつけた値段を見てその絵の価値を見定めようとしたりすること自体が間違いなのかもしれない。むしろ、「私にも描けそう」な絵にこそ価値がある。なぜなら、すべての人が「描く」べきだからだ。

著者はすべての人に「描かねばならぬ」と強烈に訴えかける。うまくなくてもいい。それが、社会の発展とともに失われた、わたしたちの全体性を取り戻させてくれるのだ、と。誰でも一度はその名を聞いたことがある巨匠、岡本太郎。紙面からあふれるその力強いメッセージが我々に芸術の門扉を開いてくれる。

著者

岡本太郎(おかもと たろう)
1911年神奈川県生まれ。
'30年パリへ渡る。パリ大学文学部哲学科に在籍、民族学などを学ぶ。
抽象芸術運動に参加、のちにシュールレアリスムの運動に加わるなど、前衛的な活動を続け、'40年に帰国。
'53年以降、サンパウロ、ヴェネチアの各ビエンナーレほか国際的に活動する。'70年大阪万博に「太陽の塔」を制作。
評論活動も旺盛で、'61年『忘れられた日本〈沖縄文化論〉』で毎日出版文化賞受賞。
他に『自分の中に毒を持て』『岡本太郎著作集』など著書多数。'96年没。

本書の要点

  • 要点
    1
    芸術とは我々の生活にはなくてはならないものである。それは美しいものではあるが、ここちよくもきれいでもない。
  • 要点
    2
    描くだけではなく、鑑賞も創造する行為である。時代が移り変わると、芸術への価値観も変わってきた。うまいことが芸術の絶対条件ではない。むしろ我々は下手に創造すべきだ。
  • 要点
    3
    新たなものを生み出すのが芸術の至上命題である。古い型を保持しようとする芸とは根本的に異なる。古い型を否定し、新しいものを創造するのが芸術だ。

要約

なぜ、芸術があるのか

生きるよろこび

芸術と聞くと、非常にとらえどころのない印象を受ける。なぜこんなものがこの世に存在し、ときに高く評価され、取引されるのだろう。芸術に全生命をつぎこんで悔いのない人もいるが、べつだん芸術がなくても楽しく生活していける。だから、芸術はきどった教養で、ぜいたくだと思われている面もある。

芸術とは何か。それは素朴な疑問ではあるが、本質をついた問題でもある。

芸術とは毎日の食べものと同じように、人間の生命にとってはなくてはならない、絶対的な必要物だ。そうでないように扱われていることは、現代的な錯誤のせいであり、そこから今日の生活の虚しさ、芸術の空虚さが来ている。

すべての人は、瞬間瞬間の生きがいを持たなければならない。そのよろこびが芸術であり、それを表現したものが芸術作品なのだ。

自己回復の情熱
Hulinska_Yevheniia/gettyimages

芸術はけっきょく生活そのものの問題だ。生活というと、普通の人は食いぶちを稼ぎ、余暇には適当な娯楽に興じ、また翌日には食うために働くことだと思っている。

ほとんどの人は仕事で何かを作っているが、そこに創るよろこびはあるだろうか。社会の発達とともに、人間は部品化され、歯車のように目的を失いながらグルグルまわりつづけるようになった。そうして人間本来の生活から自分が遠ざけられ、自覚さえ失っている。これが自己疎外である。

遊ぶための手段や施設はふえたが、遊ぶ人の気分は空しくなっている。どんなに遊んで楽しんでいるようでも、自分の生命からあふれ出てくるような本然のよろこびがなければ、満足できないものだ。

好きな娯楽を堪能し、いい家に住み、生活を楽にする。そうした外からの条件ばかりが自分を豊かにするのではない。だれでも本性では芸術家であり天才なのだ。だが、こびりついた垢に本来のおのれ自身の姿を見失っている。芸術は、日々の生活のなかで失われた自分を奪回しようとする情熱の噴出だ。そこに今日の芸術の役割がある。

芸術とは、うまくも、きれいでも、ここちよくもない

著者は宣言する。「今日の芸術は、うまくあってはいけない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない。」

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