カゴメの人事改革

戦略人事とサステナブル人事による人的資本経営
未読
カゴメの人事改革
カゴメの人事改革
戦略人事とサステナブル人事による人的資本経営
未読
カゴメの人事改革
出版社
中央経済社

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出版日
2022年10月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

2022年に人材版伊藤レポート2.0が公表され、2023年3月期決算企業から、上場会社における人的資本の開示が義務化されて以来、人的資本経営の実現に向けて人事改革を進める企業が増えている。だが、実際には、人事改革が全社的に浸透し、うまく機能しているケースはまだまだ少ないのではないだろうか。その根底には、「戦略人事」と「サステナブル人事」の両立の難しさが存在している。

「戦略人事」と「サステナブル人事」を両立するためには、人的資本経営を実現するCHO・CHRO(最高人事責任者)の存在が重要だという。そのうえで、カゴメがどういった人事施策を一気通貫で実行し、人的資本経営の実現にこぎ着けていったのかを、わかりやすく解説したのが本書だ。

著者は、カゴメのCHOであり、人事改革を推進してきた有沢正人氏と、35年間の人事実務経験とアカデミックの知見を持ち合わせている石山恒貴氏である。

日本の人事部「HRアワード2023」書籍部門の受賞作品であり、カゴメが実践してきた「生き方改革」の真髄がわかる決定版だ。本気の人事改革を実行しているカゴメの事例から学べることは多く、他の企業でも再現可能にするための道筋が提示されている。人事部門で働くビジネスパーソン、経営者、組織の未来を考える方にとって気づきに満ちた一冊である。

ライター画像
衛藤実穂

著者

有沢正人(ありさわ まさと)
カゴメ株式会社 常務執行役員(元CHO(最高人事責任者))
カゴメアクシス株式会社 代表取締役社長
慶應義塾大学商学部卒業後、1984年に協和銀行(現りそな銀行)に入行。銀行派遣にて米国でMBAを取得後、主に人事、経営企画に携わる。2004年に日系精密機器メーカーであるHOYA株式会社に入社。人事担当ディレクターとして全世界のグループ人事を統括、全世界共通の職務等級制度や評価制度の導入を行う。2008年に外資系保険会社であるAIU保険会社に人事担当執行役員として入社。ニューヨーク本社とともに、日本独自のジョブグレーディング制度や評価制度を構築する。2012年1月、カゴメ株式会社に特別顧問として入社。カゴメの人事面におけるグローバル化の統括責任者となり、全世界共通の人事制度の構築を行っている。2012年10月執行役員人事部長、2017年10月執行役員CHO就任。2018年4月常務執行役員CHO(最高人事責任者)に就任。
趣味:音楽鑑賞(特にプログレッシブ・ロック)、ドラマ・アニメ鑑賞、熱烈な阪神ファン(ドラマは深夜を含めて全部、アニメも深夜を含めてほぼ全部見ています)。

石山恒貴(いしやま のぶたか)
[はじめに、1、7、8章、2章~8章冒頭の本書の概要とねらい、おわりに]
法政大学大学院政策創造研究科教授。
一橋大学社会学部卒業。産業能率大学大学院経営情報学研究科修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了。博士(政策学)。NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。主な受賞として、経営行動科学学会優秀研究賞(JAASアワード)、人材育成学会論文賞、HRアワード(書籍部門)入賞など。
著書に、『日本企業のタレントマネジメント』(中央経済社)、『時間と場所を選ばないパラレルキャリアを始めよう!』(ダイヤモンド社)、『越境学習入門』(共著、日本能率協会マネジメントセンター)など。
趣味・特技:飲み会の幹事をすること、アニメと聖地巡礼、テニス。

本書の要点

  • 要点
    1
    「戦略人事」と「サステナブル人事」の原理原則を理解し、その両立を目指すことが人事改革の成功をもたらす。
  • 要点
    2
    カゴメの戦略人事では、グローバル人事制度導入を、「グローバル化を推進するための基盤づくり」と「グローバルな人材を経営に生かすための戦略人事施策の展開」の2つから進めていった。
  • 要点
    3
    カゴメのサステナブル人事実現に向けた「生き方改革」のポイントは、ハードとソフトの両輪を機能させたことにある。
  • 要点
    4
    人的資本経営を実現するためには、CHROがその役割を発揮することが欠かせない。

要約

「戦略人事」と「サステナブル人事」

サステナブル人事と日本企業
Vladimir Kononok/gettyimages

著者の石山氏は、「戦略人事」とは、「人事施策を通じて、その企業で働く人々の独自性に富む付加価値を創造し、競争優位を構築すること」だと定義する。その実現は難しいものである。なぜなら、企業ごとに独自性のある人材を短期間で育成するのが難しいうえに、企業の競争優位の源泉は人であると信じる企業が少ないからである。

これにより、様々な弊害が生じている。例えば、成果主義やジョブ型雇用などの流行にのっていく「流行人事」や、賃金カーブの上昇を抑えるために他社の人事施策を真似るなどの「賃金人事」だ。こうして横並びの施策をした結果、自社の独自性が失われている。そこに経営陣と人事部門の協働は見られず、経営陣は人事部門を「人件費を管理する施策の実行部隊」と位置づけてしまっている。

一方、2009年に提唱された「サステナブル人事」とは、企業目標を利益に限定せず、地球環境と多様なステークホルダーに貢献することを前提とした人事のあり方である。サステナブル人事は、「ROCモデル」から構成される。「R」は社員の人間性を尊重するRespectを、「O」は外的環境を重視したOpennessを、「C」は社員との長期的な関係性を築くContinuityを指す。このように、ROCモデルに基づいたサステナブル人事は、戦略人事の考え方を参考にしながらも、より持続的な人事施策への変換を目指して提唱されたものだ。サステナブル人事の実現には、個の尊重に基づいた、現場と人事部門の協働が必要となる。だが、集団の調和を重視してきた日本企業にとっては、難易度の高い人事施策だといえる。

安易な両立と高度な両立

戦略人事とサステナブル人事の両立は難しいものである。サステナブル人事の提唱者たちは、戦略人事をサステナブル人事に置き換えることが望ましいと考えている。そんななか、著者の石山氏は、戦略人事とサステナブル人事の目的は異なり、方向性が違うからこそ区別して考え、両立を目指すべきだと説いている。

注意すべき点は安易な両立になりやすい点だ。

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要約公開日 2023.09.07
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