経営戦略の基本

この1冊ですべてわかる
未読
経営戦略の基本
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経営戦略の基本
ジャンル
出版社
日本実業出版社
出版日
2008年11月13日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

「経営戦略」という言葉は、まるで雲をつかむような抽象的な概念のように聞こえるが、本書「この1冊ですべてわかる 経営戦略の基本」は、その概念を極めて丁寧に解説している、まぎれもない良書である。経営コンサルタントを志す大学生や転職希望者にはうってつけの入門書である。あるいは、既に経営コンサルタントとして活躍されている方、経営企画部等コーポレート部門でご活躍されている方においては、昔の記憶を再整理する上で、最も効率的な教科書であるに違いない。

本書の優れている点は、大きく3点ある。1つ目は、経営戦略・事業戦略を立案するステップが適切な粒度感で分解されており、ステップごとに検討に必要なフレームワークや事例が十分量紹介されている点だ。さらには、フレームワークの限界についても述べられており、その対応方法まで書かれている。2つ目は、経営戦略の実行手順についても言及されている点だ。この手の書籍の多くは、絵を描くにとどまり、描いた絵を実現する仕組みまでは語られていないケースが多い。本書はその点において、実行のための組織の在り方、KPIの設定手法までを丁寧に語っているのが素晴らしい。実際に企業の多くが課題意識を持っているのは、戦略の実行段階であろう。3つ目は、計画的な戦略立案にアンチテーゼを掲げている点だ。これに関しては、場合によっては本書の存在意義を真っ向から否定しかねない主張を敢えて紹介している。「ヤバい経営学(東洋経済新報社)」においても語られていることではあるが、経営戦略はあらかじめ計画されるものか、それとも創発的に生まれるものかという論点に関してポジションを取り見解を示している。この点に関しては、ホンダのオートバイの米国進出に関する事例を用いて考察しているが、紹介されている事例も極めて興味深い。是非本書を手にとってご確認いただきたい。

著者

◆監修者
手塚 貞治(てづか さだはる)
株式会社日本総合研究所 総合研究部門 成長戦略クラスター長・主席研究員。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。NTTを経て現職。

◆著者
浅川 秀之(あさかわ ひでゆき)
株式会社日本総合研究所 総合研究部門 通信メディア・ハイテク戦略クラスター主任研究員。大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程修了。日本電気株式会社にて製品開発(おもに光通信分野)に従事したのち現職。

安東 守央(あんどう もりお)
株式会社日本総合研究所 総合研究部門 暮らしと健康イノベーションズ副主任研究員。早稲田大学商学部卒。プロクター・アンド・ギャンブル・ファーイースト・インク マーケティング本部を経て現職。

今井 孝之(いまい たかゆき)
株式会社日本総合研究所 総合研究部門 通信メディア・ハイテク(TMT)戦略クラスターおよび成長戦略クラスター所属、副主任研究員。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、中小企業診断士。

岡田 匡史(おかだ まさし)
株式会社日本総合研究所 総合研究部門成長戦略クラスター研究員。2004年、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程修了。

吉田 賢哉(よしだ けんや)
株式会社日本総合研究所 総合研究部門組織・人財開発クラスターおよび通信メディア・ハイテク戦略クラスター所属。東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。

本書の要点

  • 要点
    1
    経営戦略の策定は、「①環境分析」、「②ドメイン(事業領域)設定」、「③戦略策定」という3つのステップで行われ、それぞれのプロセスには定石(フレームワーク)が存在している。フレームワークは実態に合わせカスタマイズする必要がある。
  • 要点
    2
    経営戦略を絵に描いた餅にしないため、「経営管理」と「組織」を整えることが必要不可欠である。「経営管理」とは、仕事を明確にすること(計画)、そしてその取り組みをチェックする(評価)仕組みである。「組織」とは、実行するヒト、カネなどの経営資源を整える仕組みである。
  • 要点
    3
    変化の著しい近年の市場において、ダイナミックな戦略の見直しは必要不可欠である。そのためには、「戦略とは計画的に策定されると同時に創発的に形成されねばならない」というミンツバーグの発想を取り入れ、相互の考え方のバランスを図る必要がある。

要約

1章 経営戦略の役割と特徴

経営戦略とはなにか

この章では、以下4点について語られている。

一つ目は、そもそも経営戦略とはなにかという点だ。経営戦略とは、企業が「目的(継続的な事業を営む、成長する、収益を獲得・拡大する等)」を達成するために必要となる打ち手(手段よりも上位の概念)を指している。

二つ目は、経営戦略の目標と打ち手は4層に分かれる、という点だ。企業経営は「基本理念」「ビジョン」「経営戦略」「施策(戦術)」の4階層に分かれており、それぞれが「目標」と「打ち手」の関係性となっている。つまり、ビジョンを達成するために経営戦略が存在し、経営戦略を達成するために施策があるのだ。上位ほど中長期的/抽象的な概念となる。企業理念やビジョンが一体どのような粒度で設定されているものなのかについては、実際の企業の例をホームページ等で確認することが有用であろう。

三つめは、対象範囲によってとるべき戦略は変わる、という点である。企業内の複数の事業について、どのように資源配分をし、打ち手を実施するか(全社戦略)、特定事業において、どのように資源配分をし、打ち手を実施するか(事業戦略)、事業遂行上の個別機能において、どのように打ち手を実施するか(機能別戦略)、という3つの範囲が存在する。本書は特に全社戦略と事業戦略について解説しているものである。

四つ目は、特徴と限界を知り、最適なアプローチを選択する、という点だ。経営学において、経営戦略は計画的に前もって策定されるものか、それとも創発的(結果的に形成されるものか)という論点が存在する。本書では計画的アプローチを2~5章、創発的を6章で紹介している。臨機応変にアプローチを使い分けることが肝要である。

Luca Francesco Giovanni Bertolli/iStock/Thinkstock

2章 経営戦略の理論を俯瞰する

経営戦略策定時の3つのポイント

経営戦略を策定するポイントは大きく3つ存在している。

一つ目のポイントは、「いかにして持続的に競合優位性を構築するか」、である。企業には必ず競合が存在する。自社が収益を獲得するためには、何らかのポイントで競合に勝っている必要がある。

二つ目のポイントは、「いかにして打ち手に対し優先順位(メリハリ)をつけるか」、である。打ち手に投下できる経営資源・時間は有限であるため、なんでもかんでも実施することはできない。これは「選択と集中」の概念にも通じるところがある。

三つ目のポイントは、「全体の整合性をとること」、である。打ち手はそれぞれがバラバラであっては効力を発揮できない。1章でも述べたように、4つの階層で経営戦略・事業戦略を俯瞰的にとらえ、それらの整合性を保つ必要がある。

経営戦略策定には定石が存在する

経営戦略を策定する際には、「①環境分析」、「②ドメイン(事業領域)設定」、「③戦略策定」という3つのステップを踏む。それぞれのプロセスには過去の知見、研究から得られた戦略論の定石(セオリー)が存在している。こうした定石は戦略策定において非常に有効な情報だろう。また戦略策定においては、ベースとなる思考方法としての「ロジカルシンキング」を身につけておくことも肝要である。

本書においては、定石が多数解説されているが、そういった定石(フレームワークと呼ばれるもの)は広く認知されている情報なので本ハイライトでは割愛する。これまでフレームワークにあまり触れてこなかった方は、本書を是非参考にしていただきたい。ただし、著者が語っていることでもあるが、「フレームワークに当てはめれば経営戦略が完成する」ということではない。フレームワークありきの思考ではなく、補助線としてうまく使う程度の感覚を持っておくのが肝要だろう。

amanaimagesRF/amana images/Thinkstock

3章 戦略を動かすための仕組みづくり

Michael Blann/Digital Vision/Thinkstock
戦略実行のための「経営管理」と「組織」

「戦略は描いたが、いざ実行に移すとうまくいかない」、というのが現場におけるリアルな悩みではないだろうか。本書では、そういった問題の具体的な解決策も示されている。それが本章の位置付けである。

そもそも戦略が絵に描いた餅となってしまう理由は、

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要約公開日 2013.11.16
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