MMT現代貨幣理論入門

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MMT現代貨幣理論入門
ジャンル
著者
L・ランダル・レイ 中野剛志(解説) 松尾匡(解説) 島倉原(監訳) 鈴木正徳(訳)
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
3,400円 (税抜)
出版日
2019年08月30日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
5.0
応用性
4.0
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3,400円 (税抜)
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2019年08月30日
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レビュー

いまMMT(Modern Money Theory、現代貨幣理論)が注目を集めている。MMTは基本的に「自国通貨を発行できる政府は、財政赤字や債務比率を気にすることなく、躊躇なく財政出動するべきだ」という考えに立脚しており、異端の経済学として扱われている。本書を一読すれば、すぐにその「異端」の考え方に驚かされるはずだ。「人々が貨幣を需要する理由は租税にある」という考え方からして、主流派経済学になじみのある人にとっては、にわかに受け入れがたいかもしれない。

しかし巨額の金融緩和やマイナス金利といったマクロ的な金融政策が、効果を上げているとは言いがたいのも確かだ。また家計と同様、政府に健全財政を強いる緊縮財政は、世界中にポピュリズムを広げる危うさをはらんでいるようにも感じる。世界は新しい経済学をベースとした、従来とは異なる経済政策を求めているのではないか。日本でもMMTを経済政策に掲げる政党が現れている。MMTは間違いなく今後の経済政策の在り方に一石を投じることになるだろう。

本書はMMTの基本的な考え方を、第一人者であるL・ランダム・レイ教授がわかりやすく解説したものだ。MMTを理解することで、経済そのものへの見方が変わるかもしれない。本書にはそれだけの破壊力がある。

香川大輔

著者

L・ランダル・レイ (L. Randall Wray)
経済学者、ニューヨークのバード大学教授兼レヴィ経済研究所上級研究員。
セントルイス のワシントン大学在籍中はハイマン・P・ミンスキーに師事。専門は、貨幣理論と金融政策、マクロ経済学、金融不安定性、雇用政策。ポスト・ケインジアンの代表的研究者・論客の一人。
パシフィック大学で学士号、セントルイスのワシントン大学で修士号および博士号を取得。ローマ大学、パリ大学、ベルガモ大学、ボローニャ大学、メキシコ国立自治大学(UNAM、メキシコ市)の客員教授や、ミズーリ大学カンザスシティ校の教授等を歴任し、現在に至る。
著書に、Understanding Modern Money:The Key to Full Employment and Price Stability(現代貨幣を理解する――完全雇用と物価安定の鍵、1998年)、Money and Credit in Capitalist Economies(資本主義経済における貨幣と信用、1990年)、Why Minsky Matters(ミンスキーはなぜ重要なのか、2015年)がある。
また、Credit and State Theories of Money(2004年)の編者であり、 Contemporary Post Keynesian Analysis(2005年)、 Money, Financial Instability and Stabilization Policy(2006年)、 Keynes for the Twenty-First Century: The Continuing Relevance of The General Theory(2008年)の共同編集者である。

本書の要点

  • 要点
    1
    人びとが貨幣に価値を見出したのは、それで税金が払えるからだ。物々交換に代わる交換手段として用いられ始めたわけではない。
  • 要点
    2
    自国通貨を発行できる政府の場合、キーボードを叩くだけで支出が可能だ。財源という意味での租税収入は実のところ必要ないし、それで支払い不能になることもない。
  • 要点
    3
    政府が課税する理由として、まず貨幣に対する需要の創造がある。また租税によって公共目的の達成を促したり、「悪行」に制限をかけたりすることもできる。
  • 要点
    4
    MMTが目指すのは、過度なインフレを引き起こすことなく、完全雇用を実現することだ。

要約

【必読ポイント!】MMTの概要

MMTとは
Nuthawut Somsuk/gettyimages

一般的に「貨幣は物々交換に代わる便利な交換手段として使われるようになった」と理解されている。政府発行の紙幣は、人々が受け取り続ける限り価値があり、貨幣としての役割を果たすというわけだ。

このような主流派経済学の「商品貨幣論」に対し、MMT(Modern Money Theory、現代貨幣理論)では、人々がお札という単なる紙切れに通貨としての価値を見出すのは、その紙切れで税金が払えるからだとしている。また政府は通貨を創造できるので、租税収入は必要なく、自らの通貨について支払い不能となることはあり得ない。

このようなMMTの主張を理解するためには、基本的なマクロ会計の知識が必要である。まずすべての金融資産には、その裏返しとして同額の金融負債が存在する。たとえば政府部門と民間部門で構成される閉鎖経済では、民間部門が黒字であれば、政府部門は赤字にならなければならない。この2部門に海外部門を加えた開放経済においても同様で、1つの部門が金融資産を蓄積するためには、他の2部門を合算した純金融負債が同じだけ増える必要がある。つまり赤字が金融資産を生み出すのだ。

「主権通貨」の概念

次に「主権通貨」の概念を検討する。従来、政府が発行する主権通貨を民間部門が受け取るためには、「金などの貴金属と交換可能である」という裏付けが必要とされてきた。

しかし米ドルや日本円のような主要通貨において、このような裏付けは必要ない。歴史を遡れば、政府が国内の支払いにおいて政府の通貨を受け取るように要求する支払手段制定法を定めた国もあるが、このような法律がなくとも通貨が流通している例は多い。

それでは、なぜ誰もが政府の発行する通貨を受け取るのか。それは政府の通貨が、政府に対して負っている租税などの金銭債務の履行において利用されるものだからである。政府は民間部門における通貨の利用を強制できない。しかし自らが課す納税義務を果たすため、通貨の利用を強制できるのだ。

政府が租税を必要とするのは、歳入を生み出すためではない。通貨の利用者たる国民が、通貨を手に入れようと労働力、資源、生産物を政府に売却するように仕向けるためである。つまり通貨に対する需要を創造することが、租税の目的なのだ。

金融システムの仕組み
ilyaliren/gettyimages

民間部門、政府部門、海外部門におけるすべての資産・負債に関するフロー、ストックは、その国の計算貨幣で説明できる。計算貨幣の動きを記録する巨大なスコアボードとも言うべきものが金融システムだ。貨幣のストックとフローは、概念上は計算貨幣を単位とした会計上の記録に過ぎない。

政府は「キーストローク(キーボードを叩いてコンピューターに入力すること)」さえ実行すれば、バランスシートへ電子的に記帳できる(=支出できる)。たとえば銀行から借り入れをするケースだと、銀行は返済をうける約束と引き換えに、当座貯金口座に融資額を振り込む。銀行は前もって貯金をする必要はまったくないし、金庫の中の現金も必要ない。コンピューターに融資額を入力したに過ぎないのだ。

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