ファシリテーションの教科書

組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップ
未読
ファシリテーションの教科書
ファシリテーションの教科書
組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップ
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ファシリテーションの教科書
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2014年10月31日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

ファシリテーションが、組織を変革するリーダーのコアスキルだと認識している人はどれくらいいるだろうか。リーダーシップの重要性は取り沙汰されることが多いが、ファシリテーションは単なる会議進行の技法として軽視されがちだ。そんな認識を鮮やかに覆してくれるのが本書である。

リーダーに求められるのは、各メンバーに「腹落ち感」をつくるコミュニケーション(=ファシリテーション)である。つまり、「具体的なあるべき姿」を自ら描き、メンバー一人一人が「ワクワク感や当事者意識」を持てる状態をつくること。そのためには、合意形成を進める2大技術である「仕込み」と「さばき」を身につけ、「問題解決の思考力」、そして人の意欲や能力を引き出す「ファシリテーターの基本姿勢」を磨かなくてはならない。

本書を読めば、具体的な議論の場をイメージしながら、卓越したファシリテーターに求められる技術とマインドを体系的に整理できる。小手先のテクニックの紹介にとどまる巷のファシリテーション本とは一線を画しているだろう。どの章も、重要ポイントの全体像を俯瞰する→各課題の真因に迫る→再現可能性の高い具体的なソリューションを提示する、という構成になっている。そのため、読者はゴールから逆算した現在地を常に把握し、効果的にファシリテーションのエッセンスを吸収することができる。論理と感情の両方に働きかけるファシリテーションの真髄を学び、成長する組織をつくりたいと考えるリーダー、マネジメント層には必携の書としてお薦めしたい。

ライター画像
松尾美里

著者

吉田 素文
グロービス経営大学院教授。1964年生まれ。立教大学大学院文学研究科教育学専攻修士課程修了。ロンドン・ビジネススクールSEP修了。大手私鉄会社勤務を経て、2000年よりグロービスに参画。グロービスでは研修・クラスの品質管理、社内外の講師の管理・育成を統括。ケースメソッドなどインタラクティブなティーチング方法論を専門とし、実践的なティーチングメソッドの研究・実践により、多数の質の高い講師・クラスを生み出している。また論理思考・問題解決・コミュニケーション・経営戦略・リーダーシップ・アカウンティングなどの領域を中心に、プログラム・コンテンツ開発を行うとともに、グロービス経営大学院での講義、および大手企業でのアクションラーニング・セッションのファシリテーターを多く務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間の思考の処理能力には限界があるため、あるべき議論の設計図を作り下準備をする「仕込み」と、議論を活性化させるための「さばき」の2つの技術が必要になる。
  • 要点
    2
    「仕込み」に重要なのは、①議論の出発点と到達点を明確にする、②参加者の状況を把握する、③議論すべき論点を広く洗い出し、絞り、深める の3点である。
  • 要点
    3
    「さばき」に重要なのは、①参加者の発言を引き出す、②発言を理解し、共有する、③議論を方向づける、④議論を結論づける の4点である。

要約

合意形成を進める技術

「仕込み」と「さばき」の重要性
XiXinXing/iStock/Thinkstock

多くのファシリテーターは、次のような壁にぶつかる。一つは、自分にとって新しい課題について、馴染みの薄いメンバーと議論することになり、うまくリードできないという壁。もう一つは、自分の意見を押しつけてしまうという壁である。こうした壁を乗り越え、合意を形成するには、「仕込み」と「さばき」という技術が必要になる。

この2つの技術が必要な理由は、人間の思考の処理能力には限界があるためだ。議論の場では、人の話を聴き理解すること、本来議論すべき内容を考えること、話していない人の状況を把握することなど、複数のことを同時処理しなくてはいけない。これではキャパシティーオーバーになってしまう。だからこそ、事前に入念な準備をして、あるべき議論の姿をイメージし、その場で出てくる発言を適切に位置づける「地図」を頭の中に持っておくこと、つまり「仕込み」が大事になる。さらに、実際の議論の場で直面するさまざまな課題に対処し、適切にメンバーの思考を導く「さばき」も同様に重要である。

【必読ポイント!】 「仕込み」~あるべき議論の姿を設計する~

議論の「仕込み」に必要な3大ポイント

そもそも、ビジネスにおける議論の最終目的は「行動を決定すること」である。決定プロセスに「議論」をかますのは、「決定内容の合理性を高める」、「決定プロセスへのメンバーの納得性を高める」という2つの効果を期待しているからだ。これを念頭に、議論を適切にリードするための「仕込み」として、ファシリテーターは次の3つを行わなくてはいけない。

①議論の出発点と到達点を明確にする

②参加者の状況を把握する

③議論すべき論点を広く洗い出し、絞り、深める

①議論の出発点と到達点を明確にする
Tashi-Delek/iStock/Thinkstock

到達点が不明確だと、議論の中心テーマや、各論点に費やす時間配分、議論の各段階での方向性がつかめないという弊害が起きてしまう。一方、無理な出発点を定めてしまうと、参加者が議論のテーマに問題意識すら感じておらず、話の理解が進まず、反発を生む恐れがある。

では、正確な出発点と到達点を考え出すために何をすればいいのか? まずは合意形成の4つのステップを意識することだ。4つのステップとは、「議論の場の目的共有」→「アクションの理由と共有・合意」→「アクションの選択と合意」→「実行プラン・コミットの確認・共有」である。出発点と到達点を決めるときには、「この議論が終わった時点で、参加者と自分がどんな状態になっていればいいのか」、「いきなりこの話を初めて参加者に違和感はないか」の2つの問いを何度も自問するとよい。

②参加者の状況を把握する

ファシリテーションが人を相手にするものである以上、参加者を深く知ることが成否を決める。個人の属性をつかもうとするのではなく、議論のテーマに対しての「認識レベル」、テーマへの「意見・態度」を観察してから、「参加者の思考・行動の特徴」に目を配ることを薦めたい。

まず「認識レベル」は、「議論の前提(議論の目的や背景、重要性)」、「議論の中身(知識や経験、情報)」、「議論の場自体」への認識に細分化することができる。これらを「暗黙の了解」とせずに、メンバーの認識をそろえることがファシリテーターの大事な役割である。

次に、参加者の「意見・態度」を予測するときには、賛否の対象、理由、背景をおさえるとよい。

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要約公開日 2015.01.23
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