【必読ポイント!】この世は自分用にはできていない――『ゴリオ爺さん』
非情な都会で生きていくこと

『ゴリオ爺さん』は、19世紀フランスの作家・バルザックによる文学作品だ。主人公は、田舎からパリに出てきた青年・ラスティニャック。当時、若者が都会で成功するには、金持ちのマダムの愛人になるのが近道であった。しかし彼にそんなコネはなく、まして権謀術数にまみれた都会のセレブ社会に、田舎者の彼が入り込む隙はなかった。あるときラスティニャックは、「ゴリオ爺さん」という老人に出会った。ゴリオ爺さんは見た目こそ地味だが、実は製麺で富を蓄えた金持ちであった。ゴリオ爺さんにはかわいい2人の娘がいた。2人とも結婚していたが、どうやら下の娘は夫に不満があるらしい。ラスティニャックは下の娘に取り入ろうと、ゴリオ爺さんに近づいた。そして見事に爺さんの信頼を得て、結婚が許された。娘たちは、父であるゴリオ爺さんのことを金づるとしか見ていなかった。2人はお金をせびり続け、ゴリオ爺さんはついに一文無しになり病気になってしまった。ゴリオ爺さんに恩義を感じているラスティニャックは懸命に看病するが、爺さんは失意のうちに亡くなってしまう。葬式には娘はおろか、誰一人として参列しなかった。「これが都会の冷酷さというものか。私は田舎に帰るべきだろうか」。ラストシーン、パリを見下ろせる墓地でラスティニャックは、ある決意を胸に大声で叫んだ。「今度はおれが相手だ!」。
世界は自分のためにできていなかった!
著者の人生は、大学までは順風満帆そのものであった。「世界は僕のためにできている」とすら思うほどだったが、卒業して社会に出たとき、それがとんでもない誤解であることに気がついた。