新・観光立国論
イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」

未 読
新・観光立国論
ジャンル
著者
デービッド・アトキンソン
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,500円 (税抜)
出版日
2015年06月18日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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新・観光立国論
イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」
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デービッド・アトキンソン
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東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,500円 (税抜)
出版日
2015年06月18日
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4.0
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4.5
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レビュー

少子化対策も即効性が期待できず、移民政策もなかなか受け入れられない日本において、経済を成長させる思わぬ秘策があるという。それは、外国人観光客という名の「短期移民」を招き、彼らにお金を落としていってもらうこと。日本の観光産業が活かしきれていないポテンシャルを開花させ、世界有数の観光大国に肩を並べるための現実的な指針を提示したのが本書である。

著者は、日本に25年住み、日本経済を分析してきた気鋭のイギリス人アナリストである。著者によると、1300万人程度の訪日客数(2014年)は、気候、自然、文化、食事という「観光立国」に不可欠な4つの条件を満たす日本にしては、驚くほど少ない数だという。日本では「おもてなし」を世界へアピールする動きが盛り上がっているが、著者はそれが的外れであることを、緻密なデータ分析によって明らかにしていく。世界の観光客の心をつかむ「日本の観光コンテンツ」と、その効果的な発信方法とは何か? 本書の提言を地道に実行していけば、2030年までに8200万人の外国人観光客を招致することも、決して不可能ではないという。日本の伝統文化をこよなく愛し、文化財をめぐる行政改革の提言を続けている著者ならではの着眼点や解決策は、説得力と多様性に富んでいる。本書を読み進めるうちに、「その手があったか」と思わず膝を打つ提言がいくつもあるのではないだろうか。観光産業やサービス業に携わる方はもちろん、日本の魅力の発信に興味があるすべての方にとって、本書は有用なガイドブックになってくれるはずだ。

松尾美里

著者

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社代表取締役社長。元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。
1965年、イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。同社での活動中、1999年に裏千家に入門。日本の伝統文化に親しみ、2006年には茶名「宗真」を拝受する。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、取締役に就任。2010年に代表取締役会長、2011年に同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ、旧習の縮図である伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。著書にベストセラー『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』(講談社+α新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    観光立国になるために不可欠な4つの条件は、気候、自然、文化、食事である。日本はこの4条件を満たしているにもかかわらず、宝の持ち腐れ状態になっている。
  • 要点
    2
    日本が世界にアピールしている「国の知名度」「交通アクセス」「治安のよさ」「おもてなし」は、日本を訪れる決定的な動機にはならない。
  • 要点
    3
    観光立国を目指すならば、長期滞在して多くのお金を払う観光客を呼び込まなくてはいけない。上客になりやすいヨーロッパやオセアニアからの観光客を増やすには、文化財の整備を最優先にすべきである。

要約

日本が目指すべき「観光立国」

日本を救うのは「短期移民」

経済成長がしづらくなった日本において、GDPを成長させるには、人口を増やせばいい。とはいえ、移民政策はなかなか受け入れられない上に、女性の活用を経済成長に結びつける「ウーマノミクス」では即効的な効果は得られない。そこで、著者が提案するのは、外国人観光客という名の「短期移民」を増やすことである。観光客がお金を落とす機会をもっと用意し、お金をたくさん使ってくれる外国人を多く呼び込むことで、GDPを上げることが期待できる。そのためには、日本は「観光立国」の道を歩んでいかなくてはいけない。

観光立国とは何か

観光立国とは、その国の特色的な自然環境や文化財などを整備することで国内外の観光客を誘い込み、観光ビジネスなどで人々が落とすお金を、国の経済を支える基盤の一つとして確立することである。観光立国の最低条件は、一国の観光産業がGDPの9%(世界平均)以上を占めていることだ。日本は、GDPに対して、外国人観光客から得た収入の比率が際立って低い状況にある。

世界から観光立国として認識されている国は、国際観光客到着数と国際観光収入の2つの指標で測ることができ、フランス、アメリカ、スペイン、中国、イギリス、イタリア、タイ、香港などが上位に並ぶ。2014年の訪日外国人観光客数は、タイや香港の半分程度の規模にすぎない。

観光立国に不可欠な4つの条件
Ilda masa/iStock/Thinkstock

観光立国になるために不可欠な4つの条件を見ていこう。

1つ目は「気候」である。極端に寒い国や暑い国は訪れるハードルが高くなるため、ほどほどの気候が観光立国に向いている。また、一国に気候の幅の広さがあれば、スキーを楽しみたい人やリゾート目当ての人など、色々なタイプの観光客を受け入れることができて有利である。

2つ目の条件は「自然」である。都市化が進む先進国の人にとっては、自国では見ることのできない雄大な自然が魅力的に映る。その土地に生息する植物や動物も「自然」に含まれる。

3つ目の条件は「文化」だ。歴史的遺物・建造物のような過去の文化も、現代の文化も大事な訴求ポイントとなる。例えば、フランスはルーブル美術館やヴェルサイユ宮殿を有し、最先端のファッションブランドやアーティストを抱えているため、過去と現代両方の「文化」を誇っている。

4つ目の条件は「食事」である。フランス料理、イタリア料理、中華料理など、その国固有の料理として世界的に普及している食事は、外国人観光客を呼び込む重要な要素になっている。

実は、日本はこの4つの条件を満たす希有な国である。気候の面では、北海道でスキーができ、沖縄でビーチリゾートを楽しめるという利点があり、自然の面では、国土の多くを占める森林や山、多様な動植物が観光資源となっている。また、和食が世界文化遺産になったように、「食事」もハイレベルだ。さらには、能や歌舞伎のような伝統文化からアニメ、マンガのような現代文化、城や寺、神社などの文化財、茶道や華道など、多様かつ独自の「文化」を誇っている。

4つの条件を満たしているにもかかわらず、外国人観光客が日本に年間たった1300万人しか訪れていないのはなぜなのか? 日本が宝の持ち腐れ状態になっている原因を分析していきたい。

観光資源として何を発信するか

日本の観光立国を妨げる勘違い
byryo/iStock/Thinkstock

日本はこれまで観光を軽視してきた。現に、観光の目玉である文化財に振り向けられる予算が世界の観光大国に比べて非常に少なく、京都の伝統的な街並みが崩壊の危機にあっても、特に対策が取られていないという事実が、それを証明している。

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