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観想力

空気はなぜ透明か


本書の要点

  • ヒトは幸運な偶然を必然と感じ、好ましい一事例を典型例と思い込み、見やすい情報と第一印象にのみ基づいて意思決定を行う。常識的な答え、常識的な考え方、それらが如何に自らを冒しているか、理解すべきである。

  • キヤノンや羽生善治氏の例にもあるように、常識を打ち破った戦略は既成の常識を疑うことから生まれているため、大いなる成功のためには自らの頭で考えた常識を超える試みが求められる。

  • 圧倒的強者を倒すため、土俵を自分の勝ちうるものに変え、相手をそこに引きずり込むことで、不可能と思われた大逆転が行えるのである。

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【必読ポイント!】 常識を破壊する

空気はなぜ透明か

まずは、この問いから始めよう。まずは、自分自身で考えてもらいたい。考えずにこの後を読んでも学びは少ない。さて、では解答編だ。普通は、こんな答えが多い。「空気の分子は小さくて光がぶつからないから」「光の性質として空気には吸収されないから」これらは、透明性というモノの物理学的な定義例に過ぎない。これでは「なぜ透明か」への答えとはなり得ない。空気には、「透明」と「不透明」、各々に対応してヒトには、「極めて便利」と「極めて不便」。もうわかっただろう。自分が、ヒトが、地球上の生物のほとんどが「空気が透明になるように」変わってきたのだ。それを一般に進化と呼ぶ。実際、空気はある波長のものは通すが、その他のものは吸収してしまって全く通さない。例えば波長の短い高エネルギーの光たち、γ線、X線、そして紫外線を空気はほとんど通さず吸収してしまう。言い換えれば、そういう光たちにとっては空気は不透明である。例えば金星。地球儀ならぬ金星儀を見たことがある人もいるだろう。しかしながらあれは我々ヒトの「眼」では決して直接見ることの叶わない「地図」なのだ。金星の「大気」とは厚さ二〇~三〇kmに及ぶ濃硫酸の雲と、九二気圧、四五〇℃の二酸化炭素のことを指す。「空気はなぜ透明か」と問われてもこういった知識が少しでもあれば気づけるだろう。知識ベースの拡大は、視点や発想の拡大にも繋がる重要な修行だ。本を読み、街を眺め、テレビを見よう。

ヒトに統計的直観はない ~クラスに誕生日の同じ人はいるか?~

iStockphoto/Thinkstock

よくある数学なぞなぞだが、「同じクラス四〇人の中に、誕生日が全く同じという人たちが一組でもいる確率はどれくらいか」というのがある。答えが、直観的に浮かぶだろうか。普通のヒトの直観は、こうだ。自分と誕生日が同じヒトに出会うのには三六五人が必要で、クラスに四〇人しかいないとすると確率は約九分の一。誰からしても同じだから、答えは一〇%強かな。しかしながら、統計的事実は「約八九%」だ。ある事象の確率=ある事象の場合の数÷全事象の数 である。全事象は三六五の四〇乗、全員の誕生日が違う「場合の数」は、三六五×三六四×・・・×三二六であり、それらの割り算が誕生日が全員違う確率。一からそれを引くと答えの約九割となる。現代の人類には、まだ、統計的直観は備わっていない。経営や戦略を論じるときにはこれは大きな壁となり得るので、まず統計的直観がないことを明確に自覚するところから始めよう。

働きアリの法則とサボりアリの価値

林の土中などに生息するカドフシアリ三〇~四〇匹ずつの三つのコロニー(血縁集団)を、石こうでつくった人工の巣に移し、一匹ずつペイント・マーカーで印を付けて個体を識別出来るようにして観察を続けた。すると労働行為をするアリは各コロニーの八割で、働かないアリが約二割いた。

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要約公開日 2013.10.31
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