観想力

空気はなぜ透明か
未読
観想力
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空気はなぜ透明か
未読
観想力
出版社
東洋経済新報社
出版日
2006年11月02日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

業界や顧客が驚くサービスを展開する考え方はどのようなものか。世の中に情報が満ち溢れている中で、知らず知らずのうちに、業界やビジネスの常識として考えていることはないだろうか。「フラット化する世界」「MAKERS」等の書の例を見ずとも、ビジネスの変化のスピードがますます早まっていることを、実感している読者は多いのではないか。そのような中で、全ての常識が不要とまでは言えないが、自分自身確信・理由付けができていない常識にはもっと疑ってかかるべきであり、それが日々感じる閉塞感を打開する鍵になるのであろう。

本書は、知らず知らず刷り込まれている常識に関して、我々に明確な疑いを抱かせることを第一に主眼が置かれている。特に第一章「常識を破壊する」で挙げられている事例は秀逸であり、自分の考えが如何に偏ってしまっているか、そして事実は如何に深遠か、はっとさせられるものである。そして、そのような常識を打ち破った優れた戦略はどのようなものだったか、事実データを基にその肝となる考え方が紹介されている。

経営者や経営コンサルタントはもとより、経営企画・営業企画等の企画セクションに所属する方、または今後そのようなポジションを目指す方々全てに、自信を持って進められる書籍である。読者には、思考力、戦略眼、発想力の源泉となる「観想力」を磨くため、是非本書をご一読いただき、著者の問いかけに対して各々の答えを見つけていただきたい。

ライター画像
大賀康史

著者

三谷 宏治
一九六四年大阪生れ、福井で育つ。永平寺町立吉野小学校、松岡中学校、藤島高校、駿台予備校を経て東京大学理科Ⅰ類へ。同 理学部物理学科卒業後、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、アクセンチュアで一九年半、経営コンサルタントとして働く。九二年 INSEAD MBA修了。二〇〇三年から〇六年 アクセンチュア 戦略グループ統括 エグゼクティブ・パートナー。二〇〇六年からは特に子どもたちを対象にした教育活動に専念。現在は大学教授、著述家、講義・講演者として全国をとびまわる。妻、3人娘と東京・世田谷区在住。K.I.T.虎ノ門大学院 主任教授、早稲田大学ビジネススクール 客員教授、グロービス経営大学院 客員教授。放課後NPO アフタースクール 理事、NPO法人 3keys理事。永平寺ふるさと大使。
著書に、『CRM~顧客はそこにいる』(共著)『観想力~空気はなぜ透明か』(東洋経済新報社)、『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)、『ハカる考動学』『超図解 全思考法カタログ』『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ヒトは幸運な偶然を必然と感じ、好ましい一事例を典型例と思い込み、見やすい情報と第一印象にのみ基づいて意思決定を行う。常識的な答え、常識的な考え方、それらが如何に自らを冒しているか、理解すべきである。
  • 要点
    2
    キヤノンや羽生善治氏の例にもあるように、常識を打ち破った戦略は既成の常識を疑うことから生まれているため、大いなる成功のためには自らの頭で考えた常識を超える試みが求められる。
  • 要点
    3
    圧倒的強者を倒すため、土俵を自分の勝ちうるものに変え、相手をそこに引きずり込むことで、不可能と思われた大逆転が行えるのである。

要約

【必読ポイント!】 常識を破壊する

Fuse/Thinkstock
空気はなぜ透明か

まずは、この問いから始めよう。まずは、自分自身で考えてもらいたい。考えずにこの後を読んでも学びは少ない。さて、では解答編だ。普通は、こんな答えが多い。「空気の分子は小さくて光がぶつからないから」「光の性質として空気には吸収されないから」これらは、透明性というモノの物理学的な定義例に過ぎない。これでは「なぜ透明か」への答えとはなり得ない。

空気には、「透明」と「不透明」、各々に対応してヒトには、「極めて便利」と「極めて不便」。もうわかっただろう。自分が、ヒトが、地球上の生物のほとんどが「空気が透明になるように」変わってきたのだ。それを一般に進化と呼ぶ。

実際、空気はある波長のものは通すが、その他のものは吸収してしまって全く通さない。例えば波長の短い高エネルギーの光たち、γ線、X線、そして紫外線を空気はほとんど通さず吸収してしまう。言い換えれば、そういう光たちにとっては空気は不透明である。

例えば金星。地球儀ならぬ金星儀を見たことがある人もいるだろう。しかしながらあれは我々ヒトの「眼」では決して直接見ることの叶わない「地図」なのだ。金星の「大気」とは厚さ二〇~三〇kmに及ぶ濃硫酸の雲と、九二気圧、四五〇℃の二酸化炭素のことを指す。

「空気はなぜ透明か」と問われてもこういった知識が少しでもあれば気づけるだろう。知識ベースの拡大は、視点や発想の拡大にも繋がる重要な修行だ。本を読み、街を眺め、テレビを見よう。

ヒトに統計的直観はない ~クラスに誕生日の同じ人はいるか?~

よくある数学なぞなぞだが、「同じクラス四〇人の中に、誕生日が全く同じという人たちが一組でもいる確率はどれくらいか」というのがある。答えが、直観的に浮かぶだろうか。普通のヒトの直観は、こうだ。

自分と誕生日が同じヒトに出会うのには三六五人が必要で、クラスに四〇人しかいないとすると確率は約九分の一。誰からしても同じだから、答えは一〇%強かな。

しかしながら、統計的事実は「約八九%」だ。ある事象の確率=ある事象の場合の数÷全事象の数 である。全事象は三六五の四〇乗、全員の誕生日が違う「場合の数」は、三六五×三六四×・・・×三二六であり、それらの割り算が誕生日が全員違う確率。一からそれを引くと答えの約九割となる。

現代の人類には、まだ、統計的直観は備わっていない。経営や戦略を論じるときにはこれは大きな壁となり得るので、まず統計的直観がないことを明確に自覚するところから始めよう。

iStockphoto/Thinkstock
働きアリの法則とサボりアリの価値

林の土中などに生息するカドフシアリ三〇~四〇匹ずつの三つのコロニー(血縁集団)を、石こうでつくった人工の巣に移し、一匹ずつペイント・マーカーで印を付けて個体を識別出来るようにして観察を続けた。

すると労働行為をするアリは各コロニーの八割で、働かないアリが約二割いた。

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要約公開日 2013.10.31
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