私たちの性格には、内向型・外向型がある。統計によれば、アメリカ人の場合、3分の1から2分の1が内向型だ。
内向型と外向型とは、どんなものか。その定義には侃々諤々(かんかんがくがく)の議論があり、万能のものはない。今のところ研究者たちの間で合意に達しているのは、内向型と外向型では、うまく機能するために必要な外部からの刺激のレベルが異なるということだ。
内向型は、低刺激がちょうどいい。一方、外向型は、高刺激を楽しむ。行動パターンでは、内向型はゆっくりと慎重で、外向型はすばやく、一度にいくつものことをこなす。こうした違いは、人づきあいのスタイルにも影響している。
内向型・外向型のどちらが優れているということはない。しかし今日、社会が求める性格タイプは、外向型に偏っている。私たちは、成功するには大胆でなければならない、幸福になるには社交的でなければならないと教えられ、外向型人間を理想とする価値観のなかで暮らしている。
この価値観が根付いたのは、20世紀以降、アメリカが「人格の文化」から「性格の文化」へと変容したことに端を発すると言われている。「性格の文化」が重要視される社会では、慎み深さや礼儀正しさより、自信ある態度や大胆な行動がよしとされるのだ。学校教育でも、知識より外向性が重んじられるようになっている。
「世界を変えるリーダーを教育する場」であるハーバード・ビジネススクールは、外向型人間の集まりのように見える。ここでは、リーダーは自信を持って行動し、不十分な情報しかなくても決断しなければならないと教えられる。そこで学生たちは、成績も社会的ステータスも外向性しだいだと思い込む。実際、私たちはよくしゃべる人をリーダーとみなしがちだ。
しかし研究によれば、雄弁さは洞察力の深さと相関しないことがわかっているし、内向型でも有能なリーダーはたくさんいる。アメリカを代表する実業家のチャールズ・シュワブ、ビル・ゲイツ、世界最大のアパレルメーカー〈サラ・リー〉のCEOだったブレンダ・バーンズなどがその例だ。私たちは、リーダーたるもの社交性に富んでいるべきだと思い込んでいるだけなのだ。
内向型リーダーは外向型リーダーとどう違うのだろう。その答えのひとつは、内向型リーダーは手柄を自分ひとりのものにしたり賞賛されたりすることに関心を持たず、部下を適材適所に配置して最大限に力を発揮させるということだ。内向型リーダーは、他のリーダーなら自分のためにとっておくような、もっとも興味深く有意義で重要な仕事を他人に任せる傾向にある。
研究によれば、すばらしい創造性に富んだ人々の多くは、落ち着いた内向型である。その理由は、内向型は単独作業を好むからだ。孤独は革新の触媒になりうる。
心理学者によれば、内向型は「当面の課題に意識を集中させ、仕事と関係のない人間関係や性的な問題にエネルギーを消費することを避ける」。ならば、企業は従業員にプライバシーと自主性を与えるべきではないだろうか。
それなのに、現代の社会では、逆の方向に向かっている。
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