サイゼリヤ革命

世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話
未読
サイゼリヤ革命
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世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話
未読
サイゼリヤ革命
出版社
出版日
2011年08月27日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

安価で気軽にイタリアンが頂けるチェーン店「サイゼリヤ」には、多くの人が一度は足を運んだことがあるのではないだろうか。本書は、様々な角度からその安さとおいしさの秘密に迫る、興味深い一冊である。

サイゼリヤと聞いてまず思い浮かぶのは「安さ」だ。しかし単純に値下げして客引きをしているわけではない。そこには創業者である正垣泰彦氏の理念と、社会貢献への強い思いがある。「一人でも多くの人に気軽においしいイタリアンを食べてもらいたい」という思いを実現するため、サイゼリヤでは様々な工夫と努力が行われている。例えば、生産効率化を企業理念として浸透させ、店舗オペレーションには改善に改善を重ねる。食材は、苗栽培から配送までの一括管理や、現地メーカーからの開発輸入といった方法をとることで、こだわりの材料を安く仕入れている。広範囲に及ぶ徹底した生産性効率化と食材の追求により、安価で飽きのこないメニューを実現しているのだ。

本書では、正垣氏が考案した独創性ある取組みや経営への想いについて、長年サイゼリヤを追ってきた著者が軽快な語り口で解説する。正垣氏本人や社内主要メンバーへのインタビューコメントを交えながら社内実態に迫り、さらには正垣氏の生い立ちやサイゼリヤ誕生の秘話も紹介され、たいへん充実した内容だ。この本を読めばきっとまた行ってみたくなる、そんなサイゼリヤの秘密と魅力が満載の一冊である。(森重)

著者

山口 芳生
1958年、神奈川県生まれ。立教大学卒業後、82年に(株)柴田書店入社。『居酒屋』『月刊食堂』『フード・ビジネス』『月刊ホテル旅館』編集部、企画開発室編集長を経て93年に退社。フリーライターとして外食業、宿泊業の経営誌を中心に活動するほか、フリーの編集者として書籍も制作している。『月刊食堂』誌上で連載された「サイゼリヤ革命」を担当して以来、サイゼリヤを継続して取材。その回数は外食記者の中では断トツで、自他ともに認める「サイゼリヤファン」。当然ながら、サイゼリヤのヘビーユーザーである。

本書の要点

  • 要点
    1
    前菜からデザートまでのフルコースで、多くの人に気軽においしくイタリア料理を味わってほしい、という創業者の想いから、サイゼリヤは安価での提供にこだわり生産性を常に意識し改善してきた。
  • 要点
    2
    安価でもおいしいイタリア料理を提供するための素材対策として農業事業や開発輸入に注力し、鮮度の高い状態で客に提供するためのシステムを構築した。
  • 要点
    3
    反省と改善の継続こそが経営であると理解し一貫した理念を持ち続けたことこそが、今のサイゼリヤを創り上げた礎である。

要約

サイゼリヤは安い!!―原理原則―

努力の結果としての安さ
tuk69tuk/iStock/Thinkstock

サイゼリヤに対するみなさんのイメージはまず、「とにかく安い」ということではないだろうか。メニュー表を見てみると、ほとんどの商品が299円、399円、499円といった価格なのだから驚きである。イタリアンレストランとしては破格の値段だ。

ここまでの低価格を実現できているのは、徹底した努力があるからだ。さらにサイゼリヤの凄さは、1967年の1号店出店時から40年以上その努力を継続している点にある。

サイゼリヤは幾度となく大幅値下げを実施してきた。千葉県市川市に1号店を開いた創業時は軽食中心だったが、1969年にイタリア料理に方向転換する。当初客足はまばらだったが7割値下げを実施したところ客が殺到。値下げの効果の大きさを痛感した創業者正垣氏は、その後低価格へのこだわりを徹底するようになった。

安さに取組む理由は多くの人に喜びを与えるためであり、「安くておいしいものを出すことが一番の社会貢献」という考え方にある。多くの外食企業はバブルやリーマン・ショックといった社会経済の状態に合わせ、場当たり的に商品価格を変動させているが、サイゼリヤはそうではない。普通の人が日常的に食事をできる価格帯、前菜からデザートまでフルコースを楽しめる価格帯を目標とし、創業時から取り組んできた。だからこそ、「この価格なのにこの品質」を長年維持出来ているのだ。

【必読ポイント!】 味と品質の秘密

おいしさとは何か

サイゼリヤの特徴は、低価格なのにおいしいということだ。価格帯から想像するレベルを上回るおいしさがあるのは、毎日食べたい味を追求し、常に素材の質を高める努力をしているからだ。

外食業のおいしさの基準は「脳をびっくりさせる」ところにあるという。そこに求められるのは毎日の食事ではなく誕生日のお祝いなど特別な食事の提供だ。しかしサイゼリヤの正垣氏は、そのおいしさの基準に異を唱えた。「毎日食べても飽きない食事」にこだわり、イタリア本国でなされているように、用途に応じてコーディネートした食べ方でおいしさが倍増するよう工夫している。そんなトラットリア(大衆食堂)を目指すサイゼリヤが目指す味には、高級イタリアンとは違う価値があり、年間のべ1億人以上の客が来店するのも、その価値を多くの人が理解している証拠だ。

そうしたおいしさを実現するにはどうしたらよいか。イタリア料理は素材本来の味を生かす料理だ。提供時の味のムラを無くし高品質の食品提供につなげるには、素材の品質を高めることが最も重要なのだ。そのための仕組みとして「コールド・チェーンシステム」を採用している。これは生産から消費まで冷凍・冷蔵・低温の状態で流通させる方法で、野菜の鮮度が損なわれるのを防ぐ効果がある。米も玄米の状態で管理保持し、炊き方まで徹底調査し品質をコントロールしている。

人時生産性
IPGGutenbergUKLtd/iStock/Thinkstock

低価格帯でのおいしさを陰で支えるのは、「人時生産性の高さ」と「バーチカル・マーチャンダイジング」にある。順序からいくと、まず優先されてきたのは

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要約公開日 2014.12.16
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